村上裕一の(仮)

めるまがbonet[ 第18号 ]

2013/05/22 20:00 投稿

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◆╋◆      めるまがbonet -2nd season-
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◆           第18号             13.05.22
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おまたせしました、『波間の国のファウスト』対談・第2回です。
今回も大サービスで無料公開しちゃいますよ★ おみのがしなく!
ほかにも、ノッツお兄さんのアルバム『FUTURES.EP』の
レビューなどもりだくさん。ぼんちゃんがんばりました。えへん♪
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├○ 今【1】佐藤心+村上裕一対談       [第2回]
│  回             
├○ の【2】梵天レビューシリーズ       [第6回]
│  目
├○ 次【3】編集後記(ぼんちゃんのお部屋)
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 【1】『波間の国のファウスト:EINSATZ 
     天空のスリーピングビューティ』 刊行記念
    佐藤心+村上裕一対談           [第2回]
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ゼロ年代初頭に「オートマティズムが機能する」で美少女ゲーム批
評を牽引した佐藤心は、10年代初頭に今度は実作者として美少女
ゲームを刷新しはじめる。2010年の『風ヶ原学園スパイ部っ!』
(Sputnik)につづいてシナリオを担当した2012年の
『波間の国のファウスト』(bitterdrop)は、経済をテー
マとした異色の社会派作品としてその名を歴史に刻んだ。そんな
『ファウスト』の佐藤自身の手によるノベライズ『波間の国のファ
ウスト:EINSATZ 天空のスリーピング』が、この5月に講
談社BOXから上梓された。新ヒロインとともに描かれるのは、ゲ
ーム版の前日譚。律也と白亜が再開する以前の物語。そこで『める
まがbonet』では、ノベル版の編集にも携わった批評家・村上
裕一と、佐藤心との対談を敢行した。ノベル版のコンセプトから制
作の裏側まで、その立ちあげから共闘してきた2人だからこそ語れ
るディープな対話をご堪能いただきたい。

■ゲーム『波間の国のファウスト』あらすじ

経済の楽園とも言われる直島経済特区。そこは世界中の資本が集ま
る島であり、またそれを運用するプロフェッショナルを育成する学
園都市でもあった。特区出身の結城律也は、ロンドンの名門ファン
ドたるストラスバーグ・エリクソン・ロバーツでキャリアを積んだ
後、特区のファンド・マネージャーの頂点争い「ハゲタカ試験」に
挑戦するために、三年ぶりに戻ってきた。だが、そこで争う猛者た
ちというのはかつての仲間たちであり、そして特区に君臨する現ハ
ゲタカは、幼なじみの渚坂白亜であった――。

■小説『波間の国のファウスト:EINSATZ 天空のスリーピ
ングビューティ』あらすじ

特区最強のファンド会社クロノス・インベストメントが社長直属の
戦略投資室を設置するという話を聞いて、世界中から腕に覚えのあ
るエリートたちが集結した。しかしその裏には、現ハゲタカである
白亜を失脚させようというクロノス副会長ヘンリー・ストラウスの
陰謀が蠢いていた。一方、破綻の危機に直面したユーライアス社は、
懐刀である乾朱光をクロノスに送り込み一発逆転を狙おうとしてい
る。白亜、ヘンリー、そしてユーライアスの三つどもえの戦いは、
いつしか世界最高のトレーダーの1人であるピーター・エリクソン
を迎え、全世界を巻き込んだディールへと発展する――。

■キャラクター紹介

○渚坂白亜(なぎさか・はくあ)
クロノス・インベストメント会長。通称「ハゲタカ」。ゲームの主
人公である結城律也とは幼なじみの間柄。律也の姉であるリコに憧
れて、彼女を目指す形で特区のファンド・マネージャーの頂点たる
「ハゲタカ」の地位に上り詰める。

○乾朱光(いぬい・すぴか)
ヴァルゴ社に所属する天才ファンドマネージャー。LTCMという
理論に基づいた運用を行う。ユーライアス社の社長令嬢。病弱なの
で車椅子に乗っている。姉妹のような関係性の黒木司とは、ファン
ド運用におけるパートナー関係にある。

○林康臣(はやし・やすおみ)
ユーライアス社社長。創業事業だったソフトウェア産業の不振によっ
て、債権者のクロノスから事業整理を求められ、窮地に陥っている。

○ケビン・ポールソン 
ポールソン&トレードのファンド・マネージャー。今回の事件によっ
て白亜とタッグを組むこととなり、ゲーム本編では片腕として働く。

○滝沢和彦(たきざわ・かずひこ)
前直島銀行頭取。好々爺らしい態度を崩さないが、裏には冷徹な計
算が張り巡らされた、特区の実力者。

○綴カナタ(つづり・かなた)
本土を統治する中央組織「経済安定化理事会」から派遣された特区
顧問。圧倒的な権力を有し、事件の背後から様々な計略をめぐらせ
ていたが、ゲームでは後半までその正体を隠し、学院の生徒という
体で律也のアシスタントとして働いていた。性別不明。

○ピーター・エリクソン 
ストラスバーグ・エリクソン・ロバーツの共同会長。金融資本主義
の黎明期にトレーダーとして名を馳せたが、近年はエクササイズツ
ール「トレーダーズ・ブート・キャンプ」の成功で世界的な評価を
得ている。

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 「経済特区と本土の狭間で」(2)
                     佐藤心+村上裕一
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■律也vsストラスバーグ

村上 主人公の律也は、ストラスバーグ・エリクソン・ロバーツと
いう投資会社の出身なんですが、その社名は、作品世界を代表する
3人のマネーゲーム王からきているんですよね。

佐藤 本編ではつまびらかになっていない点ですが、律也の当初の
研修先はロンドンの投資銀行、その後ヘッドハンティングでストラ
スバーグに移籍し、大きな実績を作って、直島経済特区に戻ってき
たという設定になっています。

村上 『ハゲタカ』にもケネス・クラリス・リバプールという会社
があって、主人公の鷲津の師匠が、その会社の代表であるクラリス
ですよね。そこで思ったんですが、佐藤さんが言う構想は『ハゲタ
カ』でいえば、最後の鷲津とクラリスの対決シーンのようなもので
すよね。

佐藤 まさに仰るとおりです。でもゲームにはそういったシーンが
なく、「『ファウスト』の4章は何でここで終わるのか」と思われ
たユーザーさんも結構いたみたいなんです。当初のプロット設計か
らすればOKでも、それは制作側の事情にひもづけされた設計なわ
けですし、ユーザーさんが不満を抱くのはもっともだと思うんです。

村上 ゲーム版の展開としては、ストラスバーグとの対決ではなく、
直島経済特区という経済ゲームの楽園のような場所が舞台で、そこ
の崩壊からいかに主人公たちが脱出するか、といった構図になって
いきましたね。

佐藤 プロットでは、最後にカタストロフで終わることだけが決まっ
ていました。でも、たとえば円が大暴落して国家が破綻した結末を
描いたとして、その結果、関係する人がどのように苦しむのかとい
ったリアリティが見えてこないと、面白い物語とは言えません。と
はいえ、血なまぐさい部分を描き込んだとしても、今度はゲーム全
体とのズレが生じてしまう。そこで「ソロモン債」という架空の債
券を設定して、その価値が深刻に揺らぐことをカタストロフとした
んです。ここもリアリティと物語のバランスですね。たとえるなら、
中国共産党のトップを倒すなどして一党独裁の支配を壊したとして
も、単に社会秩序が崩壊し、世界は暗黒時代に突入するだけでしょ
うし。勧善懲悪的なわかりやすい悪を描くことができなかった。

村上 現実の革命でも、なかなか理想的な展開にはならないですよ
ね。近年エジプトの革命がありました。悪徳な軍事政権を倒して民
主化を進めようとしたのに、圧倒的に治安の悪い世界ができてしまっ
た、というようなある種の皮肉があります。マネーゲームというも
のは状況に応じて敵になったり味方になったりといったことを繰り
返す構図があると思うので、その点でも勧善懲悪というわけではな
い。逆にそういういかにもネオリベ的な世界とどう切り結ぶか、あ
るいは脱出するかという物語上の傾向が『ファウスト』にはあった
わけですが、その発想からすれば、ある種の資本主義の権化として
ストラスバーグが登場して、律也と対決して欲しい、と思うのは自
然でしょう。

佐藤 そういうニーズと向き合って、収拾をつけるための物語が、
言うなれば「完結編」です。ただし、この方向性はノベライズに与
えられたリソースを大幅に超えるものだったので、今回出した小説
は結局、前日譚に落ち着いたわけです。『ファウスト』本編ではハ
ゲタカ試験というキーワードがありました。そこで「実は数年前に
も、もう1つのハゲタカ試験があった……」いう話をすれば、新旧
読者が入れる世界を提示できるのではないかと。

■「ファウスト/ゼロ」の英雄たち

村上 よく企画会議の場で、ノベライズは『Fate/Zero』
ならぬ「ファウスト/ゼロ」だ、と僕が言っていたのを記憶してい
ます(笑)。実際、ハゲタカ試験も聖杯戦争のようなものですしね。
そういうこともあってかノベライズのハゲタカ試験には、主人公だっ
た律也こそ登場しないものの、白亜のパートナーであるケビンや、
例のマネーゲーム王の一角であるピーター・エリクソンなども出て
きます。

佐藤 世界のトップファンドとして、ストラスバーグ・エリクソン
・ロバーツを出したのだから、これを有効活用したいとは僕も思っ
ていました。ついで構想したのは、トレーダーを出したいというこ
とです。なので小説版で活躍する乾朱光、ケビン、ピーター・エリ
クソンといった面々は、皆トレーダー、ないしトレーダー出身の人々
です。『ファウスト』の経済バトルの根幹にあるハゲタカビジネス
は、専門性で言うと企業買収を主業とするバイアウトファンドなの
で、トレーダー出身のピーター・エリクソンがばりばり企業買収に
乗り出すあたりは荒唐無稽のきらいはありますけど、そこは面白さ
重視で(笑)。

村上 ゲームでは、少年少女が学園的な特区で企業経営していると
いうことで、どこか「ごっこ遊び」のような印象もあったかと思う
んですが、今回は特区外の経営者たちがたくさん登場していてさら
にリアルなマネーゲームになっていますね。

佐藤 裏事情を話すと、ゲームには制約条件が多いんです。会社を
いっぱい出すとそのたびにオフィスの絵、社屋のCGが必要となり
ますし。でも小説ではそうした負担は考慮しなくてよいので、非常
に自由にやれたというのはあります。また、ラブコメを書かなけれ
ばという縛りも弱かったですし、『ファウスト』にあったシリアス
な部分をぐっと引っ張りあげられたという意味でもよいチャレンジ
でした。

■小娘と大人たち

村上 ゲームの視点は律也という主人公がガチっと設定されていた
ので、そこに固定されていましたが、ノベライズは三人称の他、登
場人物の一人称視点を3パターンに分けて描かれていますね。めま
ぐるしく、といったら落ち着きがないように聞こえますが、状況が
ガンガン動いていく構造になっています。

佐藤 ユーライアス社チーム、クロノス・インベストメントの白亜
チーム、そしてエリクソン率いるマッチョチーム。この三つ巴の戦
いをそれぞれの視点から描きました。映画のようにスピード感をもっ
て次々とスポットが切り替わって、そのたびにドラマがつながって
いくという、バトンタッチのようなやり方で。ジグソーパズルにた
とえれば、全てのピースをきっちり埋めて完全な絵を見せるのでは
なく、どれだけ少ないピースで絵を描くことができるかを意識した
ところはあります。どこまで成功しているか、読者の反応が楽しみ
な点です。

村上 ノベライズ版は『ファウスト』本編とは違って戦線が広がっ
ている印象があります。そういう意味ではサービス感も盛り込まれ
ていますね。

佐藤 教科書的な学べる要素を盛り込もうとまでは思いませんでし
たが、経営のエッセンスを物語の柱にはしています。いわゆる「選
択と集中」というものですが、有名なのはジャック・ウェルチがやっ
たジェネラルエレクトリック社の改革ですね。当然ある種の淘汰が
行われるわけですが、そうした大ナタに死にものぐるいで抵抗する
経営者を描くのは面白いな、と思ったんです。

村上 その点だけをとると、『ハゲタカ』が小説版ではたいへん泥
臭くなったことと同様に、『ファウスト』ノベライズ版も泥臭い話
になっていましたね。冷酷な経営判断をズバズバして行くエリート
描写よりも、そういう判断と自分の思い入れの間で苦しむ現実の経
営者の苦労といいますか。たとえば、白亜のやさしいアドバイスを
切って、俺はこの事業を続けるんだと粘る男社長が登場しますが、
そこには一種の哀愁を感じますね。

佐藤 林康臣ですね。彼の諦めの悪さがノベライズ版のエンジンの
1つなので、書けば書くほど泥臭くなりました。経営者というのは
会社の規模が違ってもメンタリティは似通っている。自分たちの周
囲にある、身近な企業経営と置き換え可能な部分があるために、筆
が乗ったというのはあるかもしれません。

村上 「なんでこんな小娘に……」という愛憎も、本編より強いで
すよね。本編はまだ同級生たちがしのぎを削っているようなもので
すが、こちらはいい年をしたおっさんが白亜から「不採算部門をカッ
トなさい」などと言われているわけです。いささか戯画的かもしれ
ませんが、リアルかつハードですね。

佐藤 ゲーム本編のほ方ではそういった部分を緩和するためにちょっ
としたマジックがあるんです。たとえば滝沢庸介はもともと直島銀
行の頭取で社会的地位は高く、さらに年齢も白亜よりずいぶん高い
男なんですが、まあ、スケベオヤジみたいな(笑)、ちょっとコミ
カルなキャラクターに見せて、白亜との相対的な関係が下になるよ
う調節しているんです。そういうポジションにいることによって白
亜が高い地位にいる実感が担保されるように。

村上 滝沢はノベライズ版にも登場していますが、こっちの滝沢は
いやらしいやつなんですよねえ(笑)。

佐藤 本編でも最終的に本性を表すので、それを知っている人が読
むと「いやらしい」度は倍増すること請け合いです。

■新キャラクターの必要性

村上 こういった形で本編のキャラクターが登場するということも
ある種のサービスだと思うのですが、語るべきは新キャラクターだ
ろうということでそちらに話を移行しますと、まずユーライアス社
には車椅子に乗った美少女トレーダー・朱光がいますね。

佐藤 彼女はノベライズ版の実質的な主人公です。従来ヒロインの
ファンは多いでしょうし、悩ましい点ではありますが、新キャラク
ターを入れた方が物語は活性化するだろうとの判断で導入しました。
書き手の欲望なのかもしれませんが、どう思われます?

村上 原作をほぼなぞったようなノベライズではなく、別物として
構想しているということであれば、その変化に応じて新ヒロインが
欲しくなるのは当然だと思いますよ。サービスというお話が先ほど
ありましたが、新しいストーリー・新しい展開を描くということで
あれば、既存のキャラクターで顔を見せるのが1人や2人であって
もむべなるかな、と。他には本編に比べて白亜の位置づけが弱くなっ
ているという問題も絡んでいるので、難しいところですね。

佐藤 誰を一番輝かせるべきかというのは、これまた悩ましい点で
した。白亜の相対的な位置が上だと、物語が弱くなってしまうので、
泣く泣く比重を下げたのですけれども。

村上 本編での白亜の活躍ぶりは、彼女がやり手だからということ
の他に、律也の姉であり本編の重要人物でもあった結城リコとの関
係を含めた悩みの部分にも迫っていたからですよね。逆に言えば、
リコのようなファクターがなければ、白亜が心理的に重要な役割を
果たすことはないと思います。にもかかわらず白亜が存在すること
自体が、本編のファンへの1つのサービスになっているんでしょう。

佐藤 そうですね。だから白亜に関して言えば、ノベライズ版では
彼女の片鱗しか見せられなかった。ドラマの内面ではなく、外面を
支えるキャラクターとして登場してもらったぶんだけ、新規の読者
に物足りなく映ったとしたら悔いが残る点です。

■白亜の両義性

村上 これはノベライズの完全なネタバレになってしまいますが、
クライマックスの朱光と康臣との会話シーンで、白亜がビシっとカッ
コよく締めるシーンがあって、このためにいたのかという感じすら
しましたね。本編でも舞台裏で大きな影響力をおよぼしているキャ
ラクターでしたが、こちらの方がよりそれらしいと感じました。ノ
ベライズのドラマの中で実際にごちゃごちゃとした動きがあるのは、
朱光やケビン、康臣のレイヤーでした。
 僕個人の要望としては、サラも好きだったし凪も好きだったしで、
だったら企画最中に登場するようにねじ込めよという気もしますが
(笑)、まあ彼女たちを出すのは難しかったですよね。

佐藤 時系列で言うと、ノベライズ時点の凪はまさに高利貸しで稼
ぎまくっている状況なので、明らかに出しにくかったです。そういっ
たこともあって新ヒロインが必要だと考えました。
 でも、『ファウスト』というドラマの基点は、やはり白亜なんで
す。そんな白亜は代々続いてきたクロノス社の社長ですが、偉大さ、
有能さでいえばもちろん創業者が絶対的なトップ。そういった力関
係においては、実は僕の中では徳川幕府がイメージの下敷きになっ
ていて、クロノス創業者と白亜の関係は、始祖である家康と15代
将軍慶喜のそれなんです。慶喜は「家康の再来」と評されたほど優
秀な人物である一方、家康そのものではなく、脆弱さと無縁ではい
られなかった将軍。白亜を完璧なキャラに描かない、強さと弱さの
重ね合わせも、こうしたイメージからの着想でした。

村上 その比喩だと、白亜がクロノス社や直島経済特区の歴史を終
わらせる可能性があるという風にも思われますね。

佐藤 白亜がいなくなった後にクロノス社がどうなるのかといった
ことは、ゲームの制作中にはあまり考えていませんでした。ソロモ
ン債の暴落で特区経済が一度崩壊の際までいく、ということだけが
決まっていたので。
 さらにいえば、白亜が磐石でないからこそ、彼女の転覆を狙う輩
も周囲には多いという類推になるわけです。ノベライズ版の骨格の
一部はここから生まれていて、ゆえに白亜は足を引っ張るやつをク
ロノスから追い出すべく戦略投資室を作り、自分の地位を確かにし
ようという導入部になっているわけです。もっともストーリー上は、
それこそが大きな落とし穴となるわけですが。
                     (第3回につづく)

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 【2】梵天レビューシリーズ           [第6回]
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佐藤心+村上裕一対談でも言及されている通り、本格経済ゲーム/
ノベルである『波間の国のファウスト』はその企画立ち上げ時に、
いくつもの先行する経済ものを参照し、その乗り越えの意志によっ
て練り上げられている。そこで『めるまがbonet』第17号と
第18号では、そのなかでも殊更重要かつ著名な『ハゲタカ』の小
説版および映像版のレビューを掲載してゆく。同時に、第16号ま
でインタビューを掲載していたマルチアーティスト・ノッツのマン
ガ/音楽作品のレビューも併載するので、それぞれのサブテキスト
として楽しんでほしい。
 

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