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第三章 第十話 「ナナ」⑤

2014/01/24 19:00 投稿

コメント:14

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「ナナ」⑤

もう、なにもかもイヤになってしまいそうになった時、
ちびミクちゃんに声をかけられた。

「ぐーちゃん、大丈夫?」

「あ。ちびミクちゃん、せいたか先生、来てたの?」



「ちょっと前にね。
 ぐーちゃんに任せっきりにしてしまったな。すまん。」

せいたか先生は、周りの様子をまだ伺っていた。
流石に警戒してるみたい。

「うううん、いいよ。
 せいたか先生がいたら、
 もっと収集つかなくなっていたと思うよ。」

「だねぇ。」

ちびミクちゃんも頷く。


「本当にそうかもね。
 あの口ぶりだと、彼も彼なりに色々あったんだろうけど、
 いい大人相手に、僕らがどうこうすることじゃないしなあ。
 顔を出すなって、
 ぐーちゃんが言ってたことに尽きると思う。」 

 
「そうよね! それしかないわよね?!」

「ああ。それにしても……。

 でかミクさん、やっぱり昨日のことがショックなんだね。
 氷先生にそんな気はなかったとは言え、
 でかミクさんにしてみれば、いきなり戸を開けられ……。
 やっぱりぐーちゃんの言ってたように、
 暴行を受けたに近い感覚になってるはずだよな……。」

つぶやくように言いながら、ちびミクちゃんに促されて
せいたか先生は私にちびミクちゃんを差し出した。




「そのへんから聞いてたんだ……って、かなり前じゃん!」

「ごめん。」 「あは♪」

せいたか先生ったら、ちゃっかりしてるんだから!

「もう!
 ……そうなの。
 でかミク、昨日の帰りも
ちょっと大変だったの。
 今日はメールにも、電話にも出てくれないし……。
 おばあちゃんは心配しないでって、
 ずっと見てくれてるけど。

 せいたか先生、どうしよう?」

「うーん。
 ぐーちゃん……頼っても、いいかな?」

ちびミクちゃんが肩に乗ろうとしてるのに気を取られてて、
一瞬、私は自分の耳を疑ってしまった。

「え?! 頼る? 私に? せいたか先生が?」



「こういう時、僕は、
 自分が、でかミクさんになんて言葉をかけたらいいか、
 わからないん
だ。」

「ぐーちゃん、あのね。
 せいたかさん、昨日からずっとこうなの。
 でも、相談しながら考えたいって。」

そうなの?
そう言えば、
せいたか先生は、いつになく難しい顔をしている。
それにいつもと違って、教室に入る足取りも重そうだ。
せいたか先生も男性なんだし、
『暴行』うんぬんって話になれば無理もないか……。

「なんて言ったらいいかって……。
 わからなくて自信ないのは、私だって同じだよ?」




「そんなことないよ。
 さっきだって、氷先生へのぐーちゃんの言葉ってさ。 
 でかミクさんの気持ちを考えての言葉だから、
 氷先生にも響いてると思うよ。
 『でかミクさんの気持ちを考える』
 そこが大事なんだよね。
 大事なんだけど……。

 だったら、そっとしておくって方法もあるだろうし……。
 と言って何もしなくて、もっと悪くなってもな……。
 おばあちゃんがいてくれるから、大丈夫だとは思うけど、
 『死にたい』なんて、口にしてたもんなぁ……。」

せいたか先生がホントに悩んでる。
でも、
確かにどっちがいいって、簡単には言えないわよね……。
そっとしておくのがいいのか。
何かしたほうがいいのか。
うう~ん。
私は何かしたい。
でも、何をすればいいのかがわからないな。

少しの間、三人して黙り込んでたけど、
また、せいたか先生が口を開いた。


「僕は……自信ないけど、何かするほうを選ぶことにするよ。」

「私も!」

「私も!」

三人とも、顔を上げた。
せいたか先生が続ける。


「かけるべき言葉が見つからなくても、

 かけられる言葉を……。
 なにか、でかミクさんが、気が紛れそうなことを考えて、
 それを一緒にやらないかって、メールしてみてくれないかな?」

「気が紛れること?
 私、嫌なことがあった時って、
 最近は家でネイルやってると気が紛れるけど……。
 だけど、でかミク、そういうの興味なさそうだしなぁ。」



「いや、そういうことでいいと思うんだ。
 そういう『手』を使うようなこと。
 言っちゃえば『作業療法』だよ。」

「ああ、それ、わかる気がする!」

私もだけど、せいたか先生の顔も明るくなった。

授業中の手悪戯で気を紛らわしてるから良くわかる、
なんてことは言わないでおいた。
それこそ、でかミクは絶対してないだろうし。

せいたか先生は、
なにか考えを整理するような感じで、ゆっくり話し続けた。

「それもできれば一見、今回の件と全然関係ないけど、

 でも僕らと接点はあるようなことがいいんだ。
 そうやって、
 でかミクさんがショックを受けてる核心には触れずに、
 でかミクさんの気持ちをほぐしながら、

 書道部に、学校にまた出て来られるような、
 そんなきっかけを作ることができれば……。」

今回のこととは関係なくて……
私達と書道部とつながりがあること……。

まるで、なぞなぞみたい。

「あ!
 じゃあ、篆刻(*)は?

 でかミク、まだ作品に押すハンコ作ってないし、 
 ハンコ彫ろうよって、メールしてみるの。」

(*「篆刻」てんこく:
  書道作品に押すハンコのこと。主に石で出来た印材を彫って作ります。)




「ああ!
 それ、とてもイイと思う!!
 最初の段階が面倒かも知れないけど、
 彫る作業では、結構、無心になれるからな。」
  
「せいたかさん、私、でかミクさんとハンコ、彫りたい!」

ちびミクちゃんも乗ってくれた!

「ちびミク、一回作ったことあるもんね。静画ではお蔵入りさせたけど。
 でかミクさんに教えて上げられるよね?」

「うん♪ だいじょぶ!」

「え? せいたか先生が教えてあげるんじゃないの?」

ちびミクちゃんが篆刻をしたことがあるっていうのも、もちろんだけど、

私はてっきり、
せいたか先生が教えるものだって思い込んでたから、
ちょっと驚いてしまった。

「あ? ああ……。
 テレビで見た話だけど、似たようなのがあってさ……。

 こういうことの直後って、
 男全般に対して怖くなっちゃうみたいだから……。

 でかミクさん、現に昨日そうだったんだろ?
 だから僕が行ってはダメだと思うから。
 ワンクッション、置きたいんだ。」

そうか、そうだよね。なるほど!

「そっか。じゃ、ちびミクちゃんが教えるのがいいよね!」

「任せて♪」



「じゃ、それでやってみようか。
 これでいいのかどうか、まだ全然自信ないんだけどね。
 ちびミクの言葉で、メール作って、
 ぐーちゃんが送ってくれるかな?」

「私の言葉で?」

「『遊びましょ』って、感じでいいと思うョ。
 ちびミクの素直な気持ちのままで。」

「うん♪」

「うん……。
 自信なくてもやろうって決めたんだから、
 やってみるしかないわよ!
 あ……でも私、
 今日もう何回もでかミクにメールしちゃったから、

 私からのメールだと、もう見ないかも知れないし、
 見てくれても、返事しにくくなってると思うよ?」



「うーん、そうか。
 
それもあるよなぁ……。
 でも、僕のアドレスで送っちゃったらなぁ……。
 ワンクッション、おく意味が……。」

「うううん、大丈夫!
 せいたか先生のケータイから送ったほうが、いいと思うよ!」

私はでかミクのせいたか先生への気持ちを知ってるから、
それは一縷の希望なんじゃないかって思った。


「そうかな? どうして?」

ああ、もう!
せいたか先生は鈍感なんだから~!
言えるわけないよ、私の口からそんなこと!!

「わかんないけど。女の勘よ!!」

「そうかな……じゃ、おばあちゃんに送って伝言頼も……。」

「なんでそうなるかな!!」

おばあちゃんだって、
 もう、ちびミク知ってるんだし、いいだろ?」

「そういう問題じゃ。」

「本当に自信ないんだよ。」


「ええい! この、根性なしがッ!
 おばあちゃんに送ったら一生許さないからね!!」




もう、我慢できずに大きな声を出しちゃったじゃない!

「なんでそうなるかな?」

「いいからいいから!!」

「あ……。
 だいたい僕、でかミクさんのアドレス知らないわ。

 ごめん、ぐーちゃん、やっぱり打って。
 お願いします。」

「も~ッ!!
 ぐだぐだじゃない!
 返事きたら、その時はせいたか先生、ちゃんと返してよね!」

「う、うん。」

「あははは……はあ。」

ああ、ほんとにもう!
でかミクに見せられないよぉ、こんなせいたか先生の姿……。



「……じゃ、ちびミク、作文、お願い。」

「はい! 
 ぐーちゃん、いい? いくよ~!

 『でかミクさんへ。
  一緒にハンコ、作ろうよ。
  私が教えてあげるね♪
       ちびミクより。』
 
 これでいい?」

「うん、いいよ。」

「え? 聞き終わるより速くなかった?
 打つの一瞬だったじゃん! 
 だいたい指、見えなかったよ?!」

「騒ぐな。
 この程度の短文、女子高生舐めるな。
 件名は『ちびミクより。』にしたわ。
 じゃ、送るよ!
 いい?」

私は、冷静だった!




「うん!」 「はい。」

「送信!!」

*************************

せいたか先生のアドレスからのメールなら、
きっとでかミクも、反応してくれるはず……。
そう思ってたのに、なかなか返事は来ない。

昼からみらいもやって来た。
アルバイト先から直行してきたらしい。
私はみらいに、午前中のことを話した。

「私も、何回か、でかミクさんにメールしちゃったから……。 
 やっぱり、返事はなかったけど。

 かえって、でかミクさんを、追い詰めちゃったかな?」

みらいも、やっぱり私と同じことをしてた。


「いや、皆、良かれと思ってしたことだし。」

「そうだよ。」


「とは言え、う~ん。」



四人とも、お昼は食べる気になれなかった。
でかミクのことを心配する気持ちは同じだけど、
特に会話もないまま、午後は作品の裏打ち(*)作業をした。
作品に皺を入れるわけにはいかない、結構シビアな作業だけど、
何かしていたほうが、気持ちが少しは落ち着いた。

(*「裏打ち」うらうち:
   書いたままの書道作品は、紙が薄くて皺もあるため、
   裏側から専用の紙……せいたかはテヌキで障子紙を使います……を、 
   貼って皺取りと補強することを言います。)


そう……。
でかミクだって、何かしてるほうがいいはずだ。
せいたか先生の言うように、
それで少しでも、気持ちがほぐれてくれればいいんだけど。
そのために、返事が来て欲しいんだけど……。



私達は黙々と作業を続けた。
そして夕方になって、一段落ついた時だ。

鳴った!
せいたか先生の携帯が!!

みんな一斉に小さい携帯の、液晶画面を覗き込んだ。
三人の頭がゴツンゴツンと、音を立ててぶつかり合った。
こういう時、ちびミクちゃんは安全だな。
すかさずせいたか先生の手元に移って
ベストポジションをキープしていた。



「あれ? これ、着信だ!」

「出て出て!
 早く早く!」

「待ってくれ。」


せいたか先生の携帯に電話してきたってことは、
せいたか先生と、話はできそうな状態ってことかな?!
ちょっと興奮しながら私は、
せいたか先生の背中をバンバン叩いて急かした。
その勢いで、せいたか先生は前につんのめりながら、
携帯電話を通話に切り替えた。
ちびミクちゃんは、よろけるせいたか先生の腕伝いに
肩へと走っていた。いつも見てるけど、よく落ちないものだ。

……はい、もしもし。
 ……でかミクさん?」



すっごい間が続いた。
せいたか先生は瞬きもせず、じっと携帯を耳にかざしている。
やがて、でかミクが話し始めたみたいだ。
でかミクが何を言ってるのかは、わからなかった。

「……うん。じゃ、今から行くよ。」

せいたか先生が、
割と穏やかな顔をしてるのが唯一の救いだ。
そして、ピッと、せいたか先生は電話を切って顔を上げた。

「ちびミクにメールするって。」

すると、少しして、また携帯が鳴った。
今度はメールだった。

『ちびミクさんへ。
 ちびミクが教えてくれるの?
 ありがと。
 教えて。
 みんなに、ごめんねって、
 伝えて。
 でかミクより。』

「わぁい♪ でかミクさん、お返事くれたね♪」

ちびミクちゃんは、せいたか先生の手に跨って、
画面を見ながら、パチパチ手を叩いた。




ああ、良かった。
そして、せいたか先生は、私達に静かに教えてくれた。

「さっきの電話はね、
 皆に心配かけてすみませんって。

 ちびミク、連れてきてもらえますかって。
 ……じゃ、これから道具持って、行って来るよ。」

「せいたか先生、ちびミクちゃん、お願いね!!」

「でかミクさんを……お願いします。」

みらいも声を詰まらせながら言う。
今日一日、もどかしく、止まっているように感じられた時間が、
やっと動き出した気がした。
でかミクが、『死にたい』なんて言っていたことを……
選ばずにいてくれたことに、ホッとしていた。

すると、
せいたか先生が、自分に言い聞かせるみたいに話し出した。

ちびミクには何日か、
 でかミクさんと一緒にいてもらうことになるだろう。
 その間は、みんな、ちびミクに一任だ。
 連絡も、ちびミクからだ。
 それはおばあちゃんに、間に入ってもらおう。 
 ここからは、僕らはもっと、
 我慢して待たないといけないな。」

「うん。……わかった!」

「心配だけど、でかミクさんだって苦しいんだものね。」

私とみらいは、お互いを見て、深く頷いた。

ちびミク、頼む!」

「ウム!」

自信に満ちたちびミクちゃんとは対照的に、
せいたか先生は、
まだ不安を押し殺そうとしてるように見えた。

でもきっと、大丈夫よね?
でかミクをまた連れて来てよね!!



私とみらいは、焦らず待つって覚悟を決めながら、
せいたか先生とちびミクちゃんに、願いを託した。


                        つづく

*****************************


【 出 演 】 

 [オリジナルキャラクター:『初音ミク』『KAITO』
          (c)Crypton Future Media Inc,]

 ぐーちゃん(ごうりき七葉)
  (七葉1052式(仮)G型 ver.1.10改変モデル→オリジナルモデル:gouriki様)

 多田さん(多田みらい)
   (Tda式改変初音ミク・セーターモデル→改変:ログ太様
                       →オリジナルモデル:Tda氏)


 ちっちゃいミク
   (DIVA風ミクver1.05改ちび:ままま様  DIVAオリジナル: (c)SEGA )

 せいたか
   (KAITO_ruto_jacket:ruto(ると)様)


【アクセサリー】

 携帯電話(P-04B Ver.2):GB-01A様

【使用ソフト】

 MMD:樋口M様

 MME:舞力介入P様

 PMXエディタ:極北P様

 Adobe Photoshop CS6


***************************







コメント

せいたか (著者)
No.12 (2014/01/25 09:11)
>>10
kazu2さん、コメありがとうございます。

せいたかの登場の仕方は、
ぐーちゃんが思ったような「ちゃっかり」と言うよりは、せいたかの、「ずるい所」かも知れませんね。
階段上がってきた角でぐーちゃんが氷先生とやりあってるのに気付いたって感じです。
こうなった時のぐーちゃんを、塾の時に知っていた(相談ごとの時、友達のことになると熱弁をふるってた)ので、ここは任せてます。
氷先生、帰りに途中でせいたかにすれ違うんですが、気付かなかったようです。
(回りくどくなっちゃうんでカットしました。)

>「僕は……自信ないけど、何かするほうを選ぶことにするよ。」
kazu2さんの感じられたとおりです!
せいたかの過去に関係しています。『何もやらずに』と言うか、『後悔』と言うか。
いま... 全文表示
しろぶー
No.13 (2014/01/25 21:56)
Upお疲れ様です。静画にもコメしましたが、花粉症だし寒いの嫌いだし冬眠したいですw冬眠ではないけど、でかみくさんがひきこもり状態から抜け出せそうでひと安心といったところでしょうか。次はチビみくさんの活躍するお話かな?。ななちゃんの[根性なし]にはまるでせいたかさんのお母さんの一声のようで笑ってしまいました。氷先生(自分はアイスマンと呼びたい)にとっては今度の事は単なるアクシデントとしか感じていないのかもしれませんが、デリカシーの無い氷先生に比べてせいたかさんの気遣いにほっとしました。
せいたか (著者)
No.14 (2014/01/26 08:12)
>>13
しろぶーさん、コメありがとうございます。
冬場の花粉症、辛いですね。花粉だと年中なんでもありそうでたまんないですね。
自分も鼻炎持ちなので年中ティッシュ必須の時期が多いです。
寒いのも辛いですよね~。

でかミクさん、初めて引きこもってしましましたが、メールの返事があって良かったというところです。
次回は初のちびミク視点で描きます。
でかミクさんへの思いやりもあり、やっぱりビックリするようなことも言ってのける、そんなちびミクさんをご覧ください。

ぐーちゃん、ほんとだ、ここではまるで母親のような一喝みたいですね。
いろいろセリフのパターン、考えたんですが『この○○!』って出だしからは離れられませんでした。

氷先生、アイスマンもイイですね。
人との関わりが少なく、相手を思いやる、なんて感覚は皆無であったので、ぐーちゃんの言葉は衝撃だったようです。
ここで「何いってるんだ、理解できない」という反応も十分ありなんですが
お話の中では氷先生のターニングポイントにしてるので、ここからある意味、彼の学び直しが始まります。

せいたか、気遣ってもいるのですが、過去に何かあって慎重というか、戸惑いながら動いています。
詳しくは後日のお話になります。

次回もよろしくお願いします。
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