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第三章 第七話 「でかミク」④

2013/12/01 18:00 投稿

コメント:16

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「でかミク」④

「え? そうだったんですか?」



意外だった。
凄い人だなって思っていたせいたかさんが、
寂しかった……だなんて、弱みを語るなんて、
思ってもみなかったから。
せいたかさんは、ハンドルを握りながら続ける。

「まぁ、僕もそれなりに色々、あったけど……。
 時間の流れに救われたんだよ、やっぱり。

 それでもね、ちびミクに会うまで、
 正直結構やさぐれてたんだ。
 自暴自棄で全力投球の結果、
 息切れしてただけだけなんだけどね。

 でも、ちびミクに出会って、
 この子の言う風の香りとか、生き物の声とか……。
 それまで自分が見落としていた、
 色々なものに改めて気付かされて。
 毎日、見るもの聞くものが、楽しく感じられるようになった。
 
 そうしたらいつの間にか、ふがいない自分に
 自己嫌悪することも少なくなってた。
 ちびミクのお陰かな。
 ……誰かといるから寂しくないというのは、
 でかミクさんと同じだね。」

私と同じだ。
誰かといるから、それまで気付かなかった色々なことが
新鮮に感じられて、それで私も自分の素直な気持ちに気がつけた。
寂しかった私。

誰かといるから、寂しくない……。
せいたかさん、今、その『誰か』の中に、私はいますか?
……いて欲しいな。



また少し、二人とも黙った時間が過ぎた。
でも間がもたない、なんて焦ったりすることは、もうなかった。
角を曲がる時の、ウィンカーの音だけが響く。
今は、隣にこうしていられるだけで十分だった。

また、せいたかさんが思い出したように話し始めた。

「さっき、時間の流れに任せるって言ったでしょ。
 
 辛かったことや、悲しかったことを
 段々忘れていけるから、人は生きていけるのかも知れないよ。
 これって、僕ら人間には、ありがたいことなんだよね。」

「人間には……というと?」

せいたかさんは一瞬、胸ポケットのちびミクを覗き込んだ。
ちびミクは、まだぐっすり眠っていた。



「うん。
 ちびミクはどうなんだろうって、時々思うんだ。
 空の上から落ちてきて、僕が見つけるまで
 そんな長い時間ではなかったと思うけど、
 一人ぼっちで、怖くて寂しい思いをしていたはずなんだよね。

 ちびミクと出会ってから、3ヶ月の時にね。
 『もう3ヶ月かぁ』って僕が言ったら、
 ちびみくは『まだ3ヶ月だよ♪』って笑ったんだ。
 たわいもない会話に聞こえるでしょ?
 時間の感覚が、単に違うだけなのかな?って一瞬思ったんだ。

 だけどその後、ちびミク、ポソッとつぶやいたんだ。
 『私には、一瞬も永遠も、同じなんだよ♪』ってね。




 だから、ちびミクがあの雨の夜、一人でいた時間は、
 僕ら人間にしたら、永遠に匹敵する時間だったはずなんだ。
 ……どれだけ怖くて寂しい思いをしていたんだろうね。」

「あ!
 似たようなこと、私にも話してくれました。
 『私達には0と1しかないから、決して忘れることはない』
 って。



 じゃあ、私達と違って、その怖くて寂しい思いをしたことも?」

「そんなことも、でかミクさんには話してたんだね。
 うん。
 恐らく、あの雨の夜のことは、
 ちびミクの記憶から消えることはないんだろう。
 それも鮮やかなままで。
 それでもこの子は、いつも笑顔で僕を元気にしてくれる。
 忘れさせてあげることが出来ないのなら、せめて
 この子が泣くような思いは
 二度としなくてすむようにしてあげたいんだ。」

ちびミクとせいたかさん、
どれだけお互いを思いやってるんだろうと思った。
羨ましさ、とか、嫉妬ではなく、そう思った。
そして私は、今、自分の気持ちがよくわかった気がした。

私は、この人のこういうところが好きなんだ。
人の傷みに、思いを巡らせられるところ。
それも、同情だけじゃなく、手を貸してくれたり、
見守ってくれたりするところ。
ホントは頼りになる凄い人なのに、
普段はちびミクやナナに叱られたりする、かわいいところ。

そして初めて出会った時から
この人には、既に大切にしているちびミクがいた。
そんなせいたかさんを、私は好きになった。
だから私は、ちびミクもひっくるめて、この人を好きでいたい。

そう思った。
そうしたら、なんだか少し、すっきりした気分になった。



せいたかさん自身も
きっと色々大変なことや、つらいことがあったに違いない。
全部を話してくれたわけじゃないけど、
今日はその欠片の部分を、覗かせてもらえた気がした。

ちびミクが、私に言ってくれた言葉を思い出す。
『いつか、話せる時が来たら、
 今度は、でかミクさんのお話しも聞かせてね。』
私はせいたかさんに、心の中で同じことをつぶやいた。
今度は、もっと……もっと、せいたかさんのお話しも聞かせて。
その時までに私は、
せいたかさんから、話したいなって思ってもらえるように、
せいたかさんのお話しを、優しく受け止められるように、
そんな人間になっていたい。

また信号待ちで車が止まった。
せいたかさんが、私の顔を見て言う。

「ちびミクは、でかミクさんのこと、
 とても身近に感じているんだと思うよ。
 僕にだって、ポツポツとしか、自分のこと話さないちびミクが、
 でかミクさんには色々と話したみたいだものね。
 でかミクさん、ちびミクのこと、よろしくね。」

「はい! こちらこそ、よろしく。」

「うん!」



自分の大切なものを、よろしくと言ってもらえた。
それだけで、今の私には十分だった。

信号が変わって、せいたかさんがまた軽トラを発進させた。

そうだ!
ちびミクをよろしくと言われ、
私は『氷の貴公子』のことを思い出した。
ナナがせいたかさんに言っておくと言っていたけど、
どうなったのかな?
せいたかさんに尋ねると、
せいたかさんはちょっと目を細め、また前屈みになった。

「大家さんちに行く時に、ぐーちゃんから聞いたよ。
 彼、『氷の貴公子』って仇名なんだって? 
 印象からすると言い得て妙だね。呼びにくいけど。」

「せいたか先生、ちびミクを守らないと!」



「うん。僕も気をつけるよ。
 ちびミクに色々我慢させるのは、かわいそうだけど……。
 瓶詰めにされるわけにいかないからな。
  自分でペットボトルに入っちゃったことはあるけど。
 

 でもね、でかミクさん。」

瓶詰めのことは冗談めかせていたけど、
せいたかさんは、急に真剣な顔つきになった。

「なんですか?」

「僕の思い過ごしならいいんだけど……。
 彼のことを聞いて、
 僕はむしろ、でかミクさんのほうが心配になったよ。」

「え?」

「最初は書道部なんかに入ったら、成績下がるからってことを
 単に心配してるだけなんだろうと思ってたけど……。
 さっき、あの日から少しは落ち着いたぐーちゃんに聞いたら、
 彼が君に対して言ってたって言葉が、どうも気になるんだよね。
 『希少』とか、『孤高』とかさ……。
 そんな言葉、特に思い入れでもなきゃ、滅多に使わないよ。
 
 とりあえず、昼休みとか、なるべく皆と過ごした方がいい。」

「そうですか?
 確かに、一人の時と、皆といる時とでは話し方が違うような……。」

「ふうん、そうなんだ……。
 うん。
 放課後は、僕も早めに行くようにするよ。」

「心配かけてすみません。」

「でかミクさんが謝ることじゃないから。」

「あ、は、はい。」



せいたかさんは、笑ってみせてくれた。
でも、私はかえって心配させてしまってる、と感じた。

すると突然、せいたかさんが大きな声を上げた。

「あーッ!
 話し込んでたから、今、きっと通り過ぎちゃったよね?
 でかミクさんち。」

「え? あ、ホントだ!
 すみませんでした。
 もっと前に案内しなくて。」

うっかりしちゃった!
せいたかさんが予め、道筋を確認していたからだろうけれど、
ホントに自然に家に近付いていたから、案内を忘れてしまっていた。
あぁん、確実にせいたかさんに迷惑かけちゃった。

「いや、いいよいいよ。
 後方良し、と。
 ちょっとバックするね。」

「はい。」

振り向いたせいたかさんの顔が、近い!
今私が右を向いたら、くっついちゃう?!
……心臓が一気に破裂するかと思った。



家の駐車スペースに軽トラを入れてもらった。
せいたかさんにおんぶされて、玄関に向かった。
ちょっと、近所の人に見られてやしないかとハラハラしちゃった。

私が手を伸ばして呼び鈴を鳴らす前に、ドアが開いた。

「まあ!!」

おばあちゃんが初めて聞く大きな声を出して、
せいたかさんと、おんぶされた私を見て真ん丸い目をした。






                          つづく

*****************************

【 出 演 】 

 [オリジナルキャラクター:『初音ミク』『KAITO』
              (c)Crypton Future Media Inc,]

 ミク・ロンドライン
  RLmiku改変Swim&ブルマ改変モデル→りこりす(ゆかいあP)様 
                 →オリジナルモデル:ろんどらいん様

   *農作業時の靴は、Lat式ミクVer2.3 :Lat様からお借りしました。)


 

 ちっちゃいミク
  (DIVA風ミクver1.05改ちび:ままま様  DIVAオリジナル: (c)SEGA )

 せいたか
  (KAITO_ruto_shirt:ruto(ると)様)

 おばあちゃん
  (律子_割烹着 改変モデル フォトショップによる衣装の色変更
    →『メイド服リッチャン』改造モデル:ガンプラP様
    →秋月律子_衣装・オレシュミセーラー:S2K3様)


【アクセサリー】

 ミク家セットVer1_03a:お遊戯様

【使用ソフト】

 MMD:樋口M様

 MME:舞力介入P様

 PMXエディタ:極北P様

 Adobe Photoshop CS6


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コメント

せいたか (著者)
No.14 (2013/12/02 08:40)
>>7
とらとらさん、コメありがとうございます。
ニヤニヤとぽかぽか、嬉しいですね~、そう言って頂けると!
全部読んで、って一気読みですか?大変じゃなかったですか?
でもありがとうございます。
微妙に矛盾点もアルカモシレマセンが、ご容赦いただくとして……。

ミクさんの可愛さが、今の私の原動力です。

次回もまたよろしくお願いします。

kazu2
No.15 (2013/12/02 21:49)
こんばんわ~書き忘れた感想があるので書いておきます。
最近2回書くことが多いですが、それだけ読み応えある作品だということで。
前半部分のせいたかさんの告白って、
せいたかさんが静画投稿するきっかけを語ってるような。
(ちびミクさんと動植物みたいな作品が多いですし)

これだけでは何なので、最近聞いたミクさんの曲で多田さんとロンドラインさんの過去を歌ってるな~
と感じた曲をお勧めしたいと思います

http://www.nicovideo.jp/watch/sm11448603?ref=search_tag_video(ハロ/ハワユ)

http://www.nicovideo.jp/watch/sm8619805?ref=search_tag_video(鎖の少女)

上が多田さんで下がロンドラインさんのことを歌ってるように感じました。
『鎖の少女』はカラオケでロンドラインさんに歌ってもらいたいと思いましたね(曲カッコいいですし)

それでは失礼します~
せいたか (著者)
No.16 (2013/12/03 07:59)
>>15
kazu2さん、おはようございます。
コメ沢山頂けるのは、とてもありがたいことですョ。

冒頭のせいたかの独白は、私自身の気持ちそのままです。

せいたかが言ってるように、過去にそれなりに色々ありはしたのですが、
特に去年の夏から今頃にかけても、かなり、精神的に参っていました。
その時、何気なく聞いた初音ミクの歌に涙し、かなり救われたんです。
それまでの私のストレス対処法は、山に篭るって感じでした。
自然に囲まれてれば、落ち着く、みたいな。
でも今思えば、一時だけでも人との面倒な関係を絶とうとしていただけなのか知れないです。
単なる逃避です。

おかしな話、自然とは真逆の電子の歌声と、
その歌から読み取れる、表には出てこない大勢の人達の言葉を聴いているうちに
やっ... 全文表示
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