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まさに究極のアコギ録音機材『iRig Acoustic』の音色がVR的 ROLLY×週アスFinal

2016/02/21 13:00 投稿

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 アコースティックギターを実際に聴こえる音と変わらない音で録音する──これは簡単そうで実はとても難しいことなのです。もちろん、エレキギターのレコーディングにもさまざまなテクニックがあるのですが、アコースティックギターの難しさは“いかに生楽器らしく録るか”という点にあります。プロのレコーディングエンジニアも毎回苦労と工夫を重ねながら録っているのです。

 そのアコースティックギターを誰でも簡単に、しかもとてもキレイな音で、iPhoneやiPadを使って録音できてしまうという製品が、イタリアのIK Multimedia社から発売されました。『iRig Acoustic』という実売7500円前後の小さな機材。今回はこのiRig Acousticで録音すると、どんなふうに録れるのか。熟練ギタリストのROLLYさんと一緒に試してみようと思います。

20160205ROLLY×週アス Vol.42

 まずは、ぜひ動画をご覧ください。

 動画中でも話題に出ていますが、アコースティックギターすなわちアコギをキレイに録るには、ギターの前にコンデンサーマイクと呼ばれる高感度のマイクを立てて録音するという手法が一般的です。こうすることで空気感も含め、まさに目の前で聴いているような雰囲気で録れるからです。ただし、スタジオにある高級なコンデンサーマイクとなると1本何十万円もするので、一般のユーザーにはなかなか手が出ません。また、そうしたマイクは取り扱いも大変だし、さらにマイクプリアンプと呼ばれる特殊な機材が必要になるなど、なにかとコストがかさみます。

 一方、ROLLYさんがもうひとつの方法として挙げているエレアコ(エレクトリック・アコースティックギター)は、アコギにピックアップ(一般にピエゾと呼ばれる特殊なマイクを採用しているケースがほとんど)を取り付けた構造になっており、ケーブルで接続すれば、そのままレコーディングできる便利な楽器です。ただし、エレアコはエレアコ特有の音になりますので、普通のアコギのサウンドとはちょっと違うんですよね。

20160205ROLLY×週アス Vol.42

 そこで今回ご紹介するiRig Acousticの出番。見た目はギターのピックにケーブルがつながっているような感じですが、クリップ型の構造になっていて、ギターの丸い穴のところから板を挟むように差し込みます。取り付け以上。いたってシンプル。

20160205ROLLY×週アス Vol.42 ↑iRig Acousticをウクレレに取り付けたところ。取り付けは本当に簡単。

 仕組みとしては、この三角のピックの形をしたところに、MEMS(Micro Electrical-Mechanical System:微小電気機械システム)と呼ばれる技術を使った非常に小さなマイクが搭載されており、これでギターの音を拾います。ケーブルの反対側にはヘッドホンに接続するための端子があり、これをiPhoneやiPadに接続するだけでオーケー。

20160205ROLLY×週アス Vol.42

 ただ、つないでしまうとiPhoneやiPadのヘッドホン端子が埋まってしまい、音をモニターできなくなってしまいます。iRig Acousticはヘッドホン出力を取り出した端子も装備しているため、ここに手持ちのヘッドホンをつなぐことで、ギターからの音を即モニターすることができるのです。

20160205ROLLY×週アス Vol.42

 ところで動画を見て「この音がiRig Acousticで録った音?」と疑問に思う方も多いと思います。けっこういい音で録れていますしね。でも、違うんです。このビデオはiPhoneで撮影したのですが、使っているのはZOOM『iQ5』というLightning接続のステレオマイク。これも感度が素晴らしく高音質で録れるのですが、iPhoneに直接取り付けるマイクであるため、ROLLYさんや私の声も一緒に拾っています。

 では、この音とiRig Acousticの音がどれほど違うか? 以下のオーディオを聴いてみてください。

 どうでしょう? まったく世界が違うほど、雰囲気が異なるのがおわかりいただけるのではないでしょうか。もちろんiQ5だって、ギターの目の前にセッティングして音だけ録れば、もっと良くなるはずですが、一般的なマイクでの簡単録音という意味で比較してください。「違いがわからない!」という人は、ノートPCやスマホのスピーカーではなく、ちゃんとしたスピーカーで鳴らすか、ヘッドホンを使ってぜひ聴き比べてみてください。

 ちなみに、ここではROLLYさんからの指示もあり、ちょっとだけトリックを使っています。録った音はモノラルであること、また直接ギターの音を録っているだけに部屋全体で響くような空気感がないので、リバーブをかけてほしいという要望だったのです。そのため、私のDTM環境でうっすらとリバーブをかけたステレオ処理にしているのもポイントであります。ギターだけの音をしっかり録っているからこそ、キレイにリバーブがかかるわけですね。

 もうひとつのポイントは、ROLLYさんの歌声について。最初の動画では、曲の後半からROLLYさんのボーカルが入っています。それに対し、オーディオのほうはほとんど入っていません。ほとんどというのは、よ〜く聴いてみるとオーディオの42秒目あたりからかすかにボーカルが聴こえるのためですが、この程度では入っていないに等しい状況といえます。すなわち、ボーカルと(ほぼ)完全に分離できるというポイントです。

20160205ROLLY×週アス Vol.42

 次に試してみたのは、またちょっと面白い実験。ROLLYさんが「ギターのボディーを叩いた音は入るの?」という素朴な疑問を投げかけてきたので、「そりゃあ入るでしょう」と試してみました。その音を聴いて、ROLLYさんが「だったらギタープレイしつつ、ボディーを叩いてリズムを入れると面白い!」と言うので、私がちょっと叩いてみました。こちらも、iQ5によるビデオと、iRig Acousticによるオーディオを同時に録ってみましたので聴き比べてみてください。

 どうですか? iQ5でもすごくキレイには録れているんですが、iRig Acousticでの音はまた違いますよね。ギターについては先ほどの通りである一方、私がボディーを叩いている音の雰囲気にもずいぶんと違いがあることがわかるでしょうか。

 たとえば右手で叩いているトンという音は、iQ5だと遠くから拾っているだけにオモチャを叩いているような軽い感じです。それに対し、iRig Acousticのほうは、明らかに低音まで響いているがおわかりいただけると思います。また、左手は軽く爪を立ててシャカシャカした感じで叩きましたが、こちらの雰囲気もずいぶん違って、立派なパーカッションのように聴こえるでしょう。こんなふうに使い方が広がるのも面白いと思った次第です。

 ROLLYさんにはウクレレでも試していただきました。iRig Acousticはボディーの板に挟むだけなので、ウクレレへの取り外し&取り付けも一瞬です。果たしてどんな音になるのか、あまり想像できていなかったのですが、これもやってみてビックリでした。とくに解説は必要ないと思いますので、以下の2つを聴き比べてください。

 もちろん、プレイヤー(=ROLLYさん)が上手いからというのはその通りなんですけど、こんな音がiPhoneで簡単に録れてしまうというのはたいへん画期的なことと思います。おっと、書き忘れましたが、パーカッションの録音もウクレレの録音も、最初のギターと同じようにうっすらリバーブをかけてます。

20160205ROLLY×週アス Vol.42 ↑iRig Acousticと組わせて使うと効果的なアプリ『AmpliTube Acoustic』。フリー版と有料版が用意されている。

 なお、今回のiRig Acousticの録音は、あえてごく普通のレコーダーソフトで加工もせず、そのまま録音しました。IK MultimediaではiRig Acousticをより効果的に活用できるようにする『AmpliTube Acoustic』というアプリもリリースしています。簡易機能のみのフリー版と、エフェクトやドラム機能なども充実した有料版があるので、これらと組み合わせた使い方も試してみると、さまざまな発見があるかと思います。

 記事の感想はROLLYさんのツイッター(@RollyBocchan)まで。

iRig Acoustic
●実売価格 7500円前後(記事作成時の価格です)
●IK Multimedia

 2012年春からスタートした本連載ですが、今回をもって一息入れることなりました。当初はROLLYさんのFMラジオ番組内にコーナーを設け、私藤本がゲスト出演し、その内容を週刊アスキーの記事および週アスPLUSにも音付き記事として掲載するメディアミックス企画としてスタートしました。以降、iPhoneやiPadで使えるアプリや周辺機器を中心に、数々の音楽アイテムを取り上げ、ROLLYさんに実演していただきました。梵鐘アプリでパーカッションを鳴らしながらROLLYさんがギターを奏でたり、カエルのパペットでケロケロ歌わせてみたり、はたまたアンプシミュレーターアプリを使ってハードロックをしてみたり……ホントいろいろやりましたね。ぜひ、またROLLYさんとこのような面白い試みができたら嬉しいです。いつでも再開できるよう、引き続きネタをこしらえておこうと思います。ひとまず、長い間お付き合いいただいたROLLYさんに感謝するとともに、このような楽しい場を提供してくれたACCNさん、JFNの真壁さん、ライター加藤さんほか、携わってくれたスタッフの皆さまに心よりお礼申し上げます。読んでくださったみなさま、本当にありがとうございました。(藤本健)

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