声に特化したエフェクトとは、どんなものなのでしょうか? 本当にいろいろなことができるのですが、まずは、以下のビデオをご覧になってみてください。
ここではわかりやすいように、机の上にVoiceLive 2を載せていますが、本来は床(地面)に置いて足で踏んで操作する機材です。今回は、ROLLYさんがアコースティックギターを弾きながらマイクに向かって歌い、その音がマイクの下に取り付けられているアンプから出ているという構成になっています。その間にVoiceLive 2が入っているんですね。つまり、VoiceLive 2のマイク入力にマイクが、ギター入力にギターが接続されており、VoiceLive 2の出力がアンプへと接続されているわけです。VoiceLive 2のすべての機能をスルーにしておくと、最初にROLLYさんが歌っているとおり、まったくの“素”の音でのギター弾き語りとなります。ところが、ここで“HARMONY”というボタンをオンにすると、ROLLYさんの歌声に自動でハーモニーをつけてくれるのです。
こうしたハーモニーを作ること自体は、今のデジタル技術であればそれほど難しいものではありません。“ピッチシフター”という機能を使うことにより、リアルタイムに自分の歌声の3度上とか5度下といった音を出すことができるからです。ただし、音楽において難しいのは、常に3度上(正確には4半音上)と5度下(正確には7半音下)で固定すればキレイなハーモニーになるというわけではないことです。コードによって4音上だったり7音下だったりと、いろいろ変わるため、単純にはいかないのです。
↑本体背面にはマイク入力やギター入力のほか、PCとの接続用USB端子なども備える。足で踏んで操作するため、耐久性と操作性に配慮した筐体デザインになっている。でもVoiceLive 2においては、それが何の違和感もなくキレイなハーモニーなってしまいます。「VoiceLive 2は自動的にコーラスをつけてくれるマシンです。自分が弾いたギターのコードに合わせて、いちばん適切なコーラスハーモニーを勝手に考えてやってくれるのが特徴です」とROLLYさんが言うとおり、ギター入力が大きな意味を持っているんですね。実際、ROLLYさんの歌声をすごくキレイにハモってくれていますよね。また、あとでROLLYさんに聞いてみたところ、設定によってクワイアー(大合唱団)のような歌声にすることも可能であり、音的には12音くらいまで増やすことができるそうですよ。
このハーモニーのデモの最後にROLLYさんが押したのは“SHORTCUT”というボタンだったのですが、ROLLYさんここに“ハーモニー・ホールド”という機能を割り当てていました。ROLLYさんの歌声とともに生成されたハーモニーを、そのまま発音し続けてくれるようになっているのです。ふだんはROLLYさんが足で踏んで自分で操作するのですが、ここではカメラに見えるように机に置いているために、週刊アスキー副編集長のACCNがROLLYさんのアシスタントを担当。この操作をうまく行なうと、ただ同じフレーズを歌うだけでなく、「あ〜〜〜」といったバッキングをVoiceLive 2に歌わせながら、自分が主メロを歌っていくといった“1人コーラスセッション”ができるようになるわけですね。
さらに、ROLLYさんが“DELAY”ボタンをオンにすることで、エコー効果を演出しているのも面白いところですよね。DELAYとは「遅れ」を意味する言葉ですが、設定した時間ぶん遅れて音を出すエフェクトがディレイであり、それを繰り返していくエフェクトがエコーというものです。短い山びこ効果によって、非常にユニークな効果を得ることができるわけです。また、このビデオでは軽く流していましたが、右上の“REVERB”というボタンを押すことで、リバーブ効果を得ることができます。リバーブはカラオケで言うところのエコー(先ほどのエコーはディレイの繰り返しなので別のエフェクトです)。つまり風呂場で歌ったときのような反響音が付くサウンドにすることも可能です。
ビデオ後半でROLLYさんがデモしていたのが、“DOUBLE”ボタンによるダブラー効果です。ROLLYさんも言っているとおり、CDなどの作品では、1人が歌っているパートでもじつは同じ人が2回歌って、それを重ね録りすることでキレイなニュアンスを出しているケースがよくあります。同じ人が同じパートを歌っても、微妙にピッチやタイミングに違いがあることで、音に厚みが出てイイ感じに聞こえるからです。非常に地道な作業ですが、レコーディング現場ではこうしたことをしているんですね。それを簡易的に行なってしまおうというのがDOUBLEボタンなのです。入力されたボーカルの音を微妙に揺らしたうえで、元の歌声と重ねることで、重ね録りしたときのような効果を出すのです。
ROLLYさんも「あんまりわからないか……」と言っていましたが、確かにダブラーは、先ほどのハーモニーやエコーと比較すると、そこまで派手な効果ではなく、ややわかりにくい面もあるかもしれません。しかしオフの状態での音と比較すると、だいぶんリッチなボーカルサウンドに変わっていることが理解できると思います。
ちなみにここで使っているマイクは、ROLLYさんがVoiceLive 2を使う際にいつも利用しているSHUREの『BETA58』というマイク。これはプロミュージシャン御用達のボーカルマイクで、『SM58』の別バージョンです。まあ、どちらもそれほど高価なものではなく、とくにSM58なら1万円ちょっとで入手できる手ごろなものになります。ただし、BETA58はSM58よりも、かなり指向性が狭くなっているのがポイント。つまり、ボーカルだけを捉えて他の音が極力入らないという仕様になっているのです。というのも、ほかの楽器の音が入ってきてしまうと、先ほどのコード判定をする際の誤動作の原因となってしまう可能性があるからです。
こうしたマイクと組み合わせてVoiceLive 2を使うことにより、1人演奏であっても、けっこう派手な演出まで可能になってきます。が、もちろんそのように見せるためには、プレイヤーとしてのスキルが求められるというわけです。次回もまた、このVoiceLive 2による別のボーカルエフェクトの使い方をROLLYさんにデモしてもらいますよ。
記事の感想はROLLYさんのツイッター(@RollyBocchan)まで。
『TC-Helicon VoiceLive 2』
●実売価格 5万2000円前後(記事作成時の価格です)
●TCグループ・ジャパン
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