遠藤 由貴(えんどう ゆき)
山梨県出身。株式会社アドウェイズ HRM&PRグループ 広報PRユニットユニットマネージャー。実践女子大学卒業後、2009年新卒で株式会社アドウェイズに入社。新規メディア開拓営業を1年間行なった後、女性向けメディアの専任となり、広告枠の営業や特集の企画、バズマーケティング事業に従事する。2012年4月から営業と兼務しながらメディア対応やリリース作成を手掛け、2012年10月から現職になる。広報の責任者を務め、新卒採用も兼務する。
「アジアといえば」というブランディングづくりを
速水:海外進出を意識されているという戦略だそうですが、具体的にはアジアですか。
遠藤:アジアがメインですね。
速水:広告代理店でアジアの領域を広げるみたいなことが、いまは必要な時期なんですか。
遠藤:アジアの市場って人口にしても伸び率にしてもポテンシャルのあるマーケットで。新興国でインフラはまだ整っていなくてもスマートフォンが普及してきていますし。その点、うちは中国に進出したのも早くて、2003年だったので。
速水:ほう、 10年以上前か。 遠藤 まだ全然広告のニーズはなかったんですけどね。けっこうなんでもやっていました。その後、中国でうまくやってきたノウハウをもって、2011年、2012年くらいで一気に9ヵ国に進出したんです。うちみたいな小さい会社は大手の企業さんには資金力では勝てない。だから、なるべく早く先に行ってノウハウを獲得しておくわけです。
速水:先行投資をしたんですね。
遠藤:「アジア、中国といえばアドウェイズに聞いてください」というブランディングをまずつくろうとして、ニーズがなくても先に進出しちゃいました。その中国での成功事例をもとに、各国で同じように展開しています。
遠藤由貴氏。流動的な業界だからこそゆるがない“人”を重視
速水:広報って、ある意味いますごく注目されている職業だとも思うんですよ。だけど昔の広報の仕事ともまたちょっと違うことをやっている気がするんですが。
遠藤:よく“攻めの広報”みたいな感じで言われることもありますが、ベンチャー企業は失うものがあまりないので。でもやはり、どちらかというと社員のモチベーションがより大事になってきているんじゃないかなとも思います。とくに私のいる業界はすごく、流動的で、日々やることが変わっていくので、そのなかで唯一変わらないのは人ですしね。例えば、スマートフォンの普及も3、4年前はどうなのって言われていたけれども、いまはもうほとんどの人が持っていますから。
速水:あんなに日本では普及しないって言われていたのに。
遠藤:そう、それがあっという間に普及したように、きっとあらゆることが今後もそうなっていくはず。そのなかで人という、ゆるがない部分に重点を置くことはとても大事ですからね。うちで働く意味というものを伝えるためにも、広報はそういう方面でもがんばっていかなきゃいけないと思うんです。
速水:広報の極意、心がけみたいなものってありますか。
遠藤:いちばん大事なポイントは、 スピードじゃないですかね。とくに私の場合は最初の4年間は営業をやっていたので、相手がなにをしてほしいかがなんとなくわかるので。「誰よりも優先的にやってます」と感じてもらえるような、そういうスピード感が重要だと思います。どんなに急でも必要であれば即リリースを出したりもしますし。
速水:あ、そうか。いわゆるプレスリリースを出したりするのも、 広報の仕事ですね。
遠藤:そうです。簡単に言うとあれを書いている人です。
速水:1日何枚は出すとか?
遠藤:いえ、枚数は決まっていませんが、ただ、どんどん出してアウトプットはしていったほうがいいので。だからいろいろな事業部と定期的にミーティングをしています。リリースを出すか出さないかの判断は彼らにはできないので。 だから、これ1個のニュースでは厳しいけど、この営業とこのエンジニアのニュース、これをくっつけたらいまのトレンドに合うからいいんじゃないかとかを頭のなかで料理して。
速水:なるほど。じゃ、各部署の動きを把握していなければいけないし、そういう意味では会社の戦略みたいなものの重要な立ち位置にもいるんですね。
遠藤:はい、ありがたいことに社長との距離もすごく近いので、上からの考えと下が思っていることの両方をくみ取れる立場なのは、唯一私だけかなとは思います。
今回の聞き手
速水健朗(はやみずけんろう)
73年11月9日生まれ、石川県出身。編集者・ライター。著書に『ラーメンと愛国』(講談社刊)、『自分探しが止まらない』(ソフトバンク刊)ほか。
http://www.hayamiz.jp/