小梨 明人(こなし あきと)
1982年、兵庫県生まれ。横浜国立大学を経て、ベンチャー系の人材コンサルティング会社に新卒入社。経営コンサルティング、ファイナンス、経営層の人材 紹介等、幅広く担当する。その後、スパイシーソフト株式会社にてHR管掌執行役員を務める。2013年1月よりバンク・オブ・イノベーションに参画。現在、 専務取締役COOを務める。バンク・オブ・イノベーションでは、企業理念を絵本にした『BOIZM BOOK』を制作するなど、企業理念の浸透を大切にした経営を行なっている。
私はもともと根っからの “人たらし”なんです(笑)
速水:小梨さんは、エンジニアやデザイナー出身ではなくて?
小梨:まったく違いますね。
速水:じゃあ、そもそもは会社の経営とかをやられていた?
小梨:もともと私は“人たらし”なんです。人を惹きつけて心をつかみ、誘い入れるという。
速水:つまり、人材確保の専門家ということですね。どういうキャリアでそうなられたのですか?
小梨:はじめは20 歳くらいで自ら事業を立ち上げました。たまたま18歳のときに始めたインターン先の会社が、私が重視するホスピタリティー優先ではない経営でしたが、 事業として成功していました。そして、私がやったらもっと大きくできるだろうと思い、仲間を集めて。
速水:こりゃ楽勝だぞ、と。それで友だちと独立を?
小梨:いえ、個人で起業しました。
速水:上手くいったんですか?
小梨:ええ。仲間は300人ぐらいになり、売り上げも伸びました。
速水:なるほど、それほどの規模にスケールしたのですね。
小梨:その仲間集めなどをやっている過程で、いろいろ経験して“フィロソフィー”というものを、より大事に思うようになり、それに共感できる人と仕事したほうが絶対にいいと確信しました。
速水:ほう。
小梨:経営者としてはなにかを成し遂げるために会社をつくるということが、いまでこそ大事だと思いますけれども、その当時はあまりそういう意識もなく。
速水:とにかくひたすら、成功すりゃいいと思っていた?
小梨:そんな感じで突っ走っていました。でもそれをいったん整理して、修学先を見つけるために、ゼロから就活をしようと思ったのです。
速水:えーっと? その状態のなにが気に食わなかったのかがよくわからなかったのですが?
小梨:それまで学生兼任の我流でやっていたので、より成長している企業の経営者にたくさん会って、経営というものをゼロから見つめ直してみたかった。
速水:最初から自分がトップだったから、改めてゼロから人生をかけて成し遂げたいことを探してみたかったと。
小梨:それで学生のアルバイトのメンバーに「就活ってどうやるの?」って聞いたら、「まずはリクナビなどに登録ですよ」と言うので試してみて。
速水:それはつまり、経営者に会いに行くのが目的で? 別にその会社に入るかは別で、立派な経営者にとにかく会いたい、と。
小梨:ええ。そうしたらある日、1日で10人くらいの経営者に会えるイベントがあり、それが大きなきっかけになりました。
速水:その1回で目的が叶った。
小梨:結局そのイベントを主催していたある会社の経営陣と意気投合しまして。
速水:「なるほど、こういう仕事があるじゃないか」と?
小梨:はい。その会社は、中小ベンチャー企業の経営支援をする会社で。
速水:いわゆるキャリア・コンサルタントやエージェント的な?
小梨:そうです。ベンチャー企業には上場前後の企業が多くて、社長たちはみなさん幹部採用に悩んでいたんです、右腕、左腕がほしい、みたいな。それをヒアリングし、求めている人をマッチングする仕事を行ないました。
速水:どのくらいの期間?
小梨:2年半くらいですね。でも、その新卒で入社した会社は結局解散してしまい。ただ、自身のクライアントは多く、そのかたがたとのコミットメントは会社だけではなく私個人がしているので、自分でやりきろう、みたいな。
速水:つまり自分自身を人材として派遣しちゃった。
小梨:あ、そうですね。なかでも1社、けっこう難易度の高いコミットをしている企業があり「これは外部コンサルタントという立場じゃ当事者意識が持ちづらく、成果が出ない」と思い「じゃ、もう私が入ります」と。
速水:つまり右腕を探している会社に、右腕として入ったわけだ。
小梨:そうです、そうです(笑)。
小梨明人氏。学生には『ONE PIECE』 を例にして話をすることも
小梨:私はよく学生に好きな漫画 のひとつである『ONE PIECE』の話をします。『ONE PIECE』を好きな人、多いじゃないで すか。
速水:僕も好きです。
小梨:あれって、ようは船に乗っている船長の夢は海賊王になることかもしれないけど、ほかのクルーは別に元々海賊王になりたいわけじゃなくて。
速水:別々の目的や志がある。
小梨:そう、でもいつの間にか志も巻き込んでしまう。それと近いことだと思うんですよ。だから私も、基本的に同じ想いをもつ人をいかに採用して、その人たちにチャレンジする場をいかに提供し、みながどういう志を目ざしていくかが大事で。それこそが経営者の仕事だと思うのです。
速水:なるほど。だけど、仲間をつくっていっしょに船旅をするのって大変だと思うのですけど。
小梨:大変です。ただ楽しい。
速水:ちなみに中高時代には体育会系の部活でしたか?
小梨:バレーボールと柔道をやっていました。
速水:そこで培われたもの?
小梨:いやあ、どうですかね。
速水:僕は文化部系だったんですが、そういう部活だと結束力が非常に弱いんですよ。なのでいまだにずっと組織ではなくフリーランスで仕事をしていて。だから「海賊王になりたくて船に乗ったけど誰もいっしょに乗ってくれなかった」系ですね。
小梨:ハハハ、なるほど(笑)。
今回の聞き手
速水健朗(はやみずけんろう)
73年11月9日生まれ、石川県出身。編集者・ライター。著書に『ラーメンと愛国』(講談社刊)、『自分探しが止まらない』(ソフトバンク刊)ほか。
http://www.hayamiz.jp/