前回の記事では、MIKU STOMPが搭載する11種類の歌詞モードの中から“Random1”というモードを選んで、ROLLYさんに試奏してもらいました。ギターを弾いてから実際に歌声が出てくるまでに微妙な時間差(レイテンシー)があるため、ROLLYさんも当初は戸惑っていたようでしたが、すぐに慣れていろいろな曲を弾いていました。このRandom1というモードは、膨大なボーカロイド楽曲の歌詞データベースからよく使われる単語約1000語を抜き出し、ランダムで歌わせるというユニークな仕組み。そのため、ROLLYさんはメロディーを弾いているだけなのに、それっぽい歌詞で歌ってくれていたんですよね。
↑本体上部には、「アー、アー、アー」や「ニャン、ニャン、ニャン」など、全11種類の歌詞パターンを選べるロータリースイッチを搭載。
「せっかくなら、自分の思い通りの歌詞を歌わせてみたいですね」とROLLYさん。もちろん、MIKU STOMPにはそのような機能が用意されていますよ。それが“Phrase1”から“Phrase3”という3種類のモード。これらは、ユーザーが設定した歌詞で初音ミクが歌ってくれるというモードなのですが、その歌詞の入力方法がなんともユニークなんです。
この機能を利用するためには、まずiPhoneやiPod touch、iPadといったiOSデバイスが必要となります。用意したiOSデバイスに無料の専用アプリ『Lyrics for MIKU STOMP』をインストールします。
『Lyrics for MIKU STOMP』このアプリ上で歌詞を入力するのですが、その入力自体はいたって簡単。歌詞をひらがなで入力するだけです。ボーカロイドのユーザーであればご存じの通り、「今日は」であれば「こんにちわ」、「おはよう」なら「おはよお」のように、発音通りにひらがなを入力していくわけですね。今回も、いつものようにROLLYさんがその場ですぐさま作詞してくれましたので、私がひらがなで入力してみました。
↑専用アプリ『Lyrics for MIKU STOMP』では、歌わせたい歌詞をひらがなで入力する。で、面白いのはここから。そう、どうやってMIKU STOMPへこの歌詞を伝送するかです。USBで接続するわけでも、Wi-FiやBluetoothで送るわけでもなく、なんとギターのピックアップに音を聞かせて伝送するのです!
「ん? これは何をやってるんですか?」と、ROLLYさんからも質問があがったので解説しましょう。これは入力された文字をデータ化した上で、音の信号に変換しているのです。昔、存在していた電話回線で通信するためのモデムみたいなものですね。実際、iPhoneからは「ピーガーーーー」という懐かしい感じの音が出てきますが、それをギターに聞かせるとMIKU STOMPへと送られます。実際にやってみると、簡単に転送が成功。不思議だけど、うまくできている仕組みですね。
↑ギターのピックアップにiPhoneをかざし、アプリの送信ボタンを押すだけで、歌詞の転送は完了。というわけで、いよいよ準備完了。BGMに合わせてROLLYさんにギターを弾いてもらいました。が、実はここで問題が発生。前回試したRandom1モードでの演奏では問題にならなかったのですが、オリジナルの歌詞を歌わせようとしたら、歌詞がどんどん先に進んでしまって、どうにもメロディーと合わないのです……。
その原因は単純。ROLLYさんのギター奏法が上手すぎて、MIKU STOMPが過剰反応してしまっていたのです! 正確に言うと、MIKU STOMPは1音の入力が来たら、1音を発音するという仕組みであるため、ちょっとでも弦をビビらせる弾き方をすると「ビビビ」で3発音進んでしまい、歌詞とズレるわけです。極端な話ですが、ギターのド素人が弦を1本1本爪弾いたほうが、正確に歌わせることができるかもしれません。もちろん、チョーキングやビブラートを効かせた歌い方は可能なのですが、いずれにしてもビビったり、2度弾きしてはダメなんですね。
また、ROLLYさんからは「初音ミクの歌声をうまく聞き取れないので、どこを弾いているのかがわからなくなってしまいます」という苦情も……。ボーカロイド、とくに“eVocaloid”と呼ばれるMIKU STOMPの歌声に慣れないROLLYさんにとっては、なかなか聞き取りにくかったようですね。私には普通に聞こえたのですが……。
↑MIKU STOMPでオリジナル歌詞を歌わせるための猛特訓。ここまでギターに四苦八苦するROLLYさんは珍しい!?というわけで、そこから猛特訓になりました。歌詞をホワイトボードに書いて、今どこを弾いているかを指さしながら演奏していくという、なんだかとんでもないスタイル(笑)。これだと、超ド素人ふうに1音1音弾いているあいだはよいのですが、ちょっと気分が乗って普段の弾き方をした途端にズレてしまうのが難点でした。そんな特訓の様子と(ひとまずの)結果が、以下のビデオです。
上手なギタリストほど、MIKU STOMPの演奏に慣れるのに時間がかかるのかもしれません。ROLLYさんがギター演奏に四苦八苦するという珍しい光景が見れたのは、個人的にはとっても面白かったです。
記事の感想はROLLYさんのツイッター(@RollyBocchan)まで。週刊アスキー本誌にも掲載しています。
『MIKU STOMP』
●実売価格 1万4000円前後(記事作成時の価格です)
●コルグ
©Crypton Future Media, INC. www.piapro.net
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