精神科医
水島 広子 (みずしま ひろこ)
医学博士。慶応義塾大学医学部卒業、同大学院修了。慶応義塾大学医学部精神神経科勤務を経て、現在は対人関係療法専門クリニック院長、慶応義塾大学医学部非常勤講師(精神神経科)、アティテューディナル・ヒーリング・ジャパン( AHJ)代表。摂食障害、気分障害、トラウマ関連障害、思春期前後の問題や家族の病理などが専門。"対人関係療法"の日本における第一人者。2000年~ 2005年まで衆議院議員として児童虐待防止法の改正などに尽力。ベストセラー『女子の人間関係』、『自分でできる対人関係療法』など著書多数。1年間の海外放浪歴あり。娘・息子の二児の母。
中高時代は人気者で、 かつグレていました(笑)
水島:小学生のころから人目を一応気にしてはいたんですが、でもなにしろ小3からグレたというのが大きかった。
速水:小3で? 早いですね。
水島:小2のころまではただのガキ大将だったんですけどね。小3で学級委員をやっていたとき、ある日、学校で自習の時間があって先生がいなかったんです。そうしたらいじめっ子たちが、クラスでいちばん体の小さい男の子を殴り始めたんですよ。それを見て私、一回やってみたかったので「その子を殴るなら私を殴りなさい」って言ったら顔を本当にげんこつで50発殴られて。私は学校では絶対に泣かないと決めていたのでそのまま帰って、でも玄関に入った途端にうえーんって泣いてね。でも事情を聞いた母が学校に問い合わせると担任は「調べたけどそういう事実はなかった」って。そのときから私、大人は信用ならないなって思うようになって。だってクラス全員が見ていたことだったんですから。
速水:ふうむ。
水島:でも結局、そのあと1ヵ月のうちに自分を殴った子を含めて全員を自分の傘下に収めて。完全に君臨しました。
速水:小3で? すごいなあ。
水島:だけどおかげで教師不信が大学院までずっと続きました。でも、娘の担任の先生ですばらしいかたに出会えたので、そこからは「いい先生もいる」と思うようになれましたが。
水島広子氏大学1、2年のころは 女子の作法を守っていた
速水:では、ここにあるような“女の敵は女”みたいな体験は?
水島:高校は女子高だったんですが、あまりそういう状況にはならなかったんですよね。だけど大学で、医学部は100人定員のうち女子が10人しかいなくて。最初の1、2年は私もやっぱり気を遣ってちゃんと女子の作法を守っていたんですよ。旅行も女子としか行かず、お昼も男子に誘われてもかならずもうひとりは女子を連れていったりして。
速水:そうやって仲間、味方をつくるというのは政治の世界にもつながりそうな話ですが。実際に政治の世界に身を置かれていた時期はいかがでしたか。
水島:政治の世界はまた女の数が少ないですからね。私が一度やられて覚えているのが、同期の某女性代議士といっしょにあるテレビ番組に出演したときのこと。インタビュアーが「この仕事はご主人の理解がないとできないと思いますけどいかがですか」って言っ ら某代議士は「水島さんのところはどうだかわからないけど」って前置きをしてから「うちはとても協力的なんですよ」って言ったんです。
速水:うーん。
水島:その前置き、なに? って思いません(笑)? あれは、いちばんイヤな体験でしたねえ(笑)。
速水:ちょっとこの本のケースとははずれるかもしれませんが。相手を表向きはほめているんだけど、結局は自分のほうがいいでしょって言っているという……。
水島:そういうの、最近“マウンティング”っていうんですってね。
速水:そう、その話をまさにしようと思っていたんです。
水島:ママ友たちの間でもけっこうマウンティングがあるとか。
速水:合コンの例がわかりやすいかな。「この子はカワイイから」とか「オススメ」とか言いながら、でもそれは自分を持ち上げるためで。ほめ合ってると見せて相手を抑え込むようなコミュニケーションのことですよね。
水島:ええ。さらに女子というのはいじわるで、マウンティングに平気でのっちゃうような女の子を見て「あの子、本当にほめられてると思ってるの?」みたいに陰口をきいたりするんですよね。
速水:うわあ、怖いですねえ。『キャンディ・キャンディ』とかで読んだような世界だな
今回の聞き手
速水健朗(はやみずけんろう)
'73年11月9日生まれ、石川県出身。編集者・ライター。著書に『ラーメンと愛国』(講談社刊)、『自分探しが止まらない』(ソフトバンク刊)ほか。
http://www.hayamiz.jp/
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