成蹊大学 法学部教授
塩澤 一洋
成蹊大学法学部教授、政策研究大学院客員教授、慶應義塾大学政策・メディア研究科講師、多摩美術大学講師、写真家、ScanSnapアンバサダー。専門は民法、知的財産法。大学の講義では、学生が実践しながら法的思考・適用スキルを身につけていく"トレイニング型授業"を多年にわたり実施。iPadによ るデジタル黒板を駆使。Mac/iPhone/iPadの活用術を始め、著作権、写真、 カメラなどに関する講演、講座の講師も多数。20年にわたって写真家として活躍し、結婚式、ポートレイト、料理、風景まで、あらゆる"きらきら"を写す。スティーブ・ジョブズ氏を撮影した写真は雑誌の表紙や記事に多数掲載。
長年、身体の一部としてカメラを使っています
山本:今日はshioさんならではのカメラの持ちかた、グリップも教えてほしくて。
塩澤:グリップね、はい。(と、ここでカメラの構えかた講座に。一般的に人差し指でシャッターを切る“ボトムアームスタイル”、shioさんが最も使う、親指でシャッターを切る“バックアームスタイル”、さらに“ライトアームスタイル”を説明。詳しくはブログ“やまけんの出張食い倒れ日記”で写真付きの解説を参照)。それと自撮りの場合はこう。
山本:そうそう、shioさんといえば自撮り写真の自然さだよね。そうか、そうやって撮っているのか。非常に理に適っているな。
塩澤:ええ。だから自撮りしているとは思えない集合写真がいっぱいありますよ。
山本:最近は自撮り棒みたいなの使ってる人多いけど。
塩澤:あんなの、いらないよ。
山本:いやあ、すごいなあ!
塩澤:やっぱり長年、身体の一部としてカメラを使ってきていますから、自然にできちゃうんです。この持ちかたならふつうに構えただけで水平・垂直が出せるし、安定してブレないですからね。
塩澤一洋氏学生たちは僕のブログにみんな載りたがりますよ
山本:そしてブログ“shiology”は、何年から書かれているんですか。
塩澤:2004年からです。その前も簡易なものは書いていたんですけどプライベートなことも書いていたので、そっちは消しちゃいました。当時、月刊アスキーで“法律家が見るIT業界”という連載をしていたら、2ちゃんねるでいろいろ書かれて。別に僕は気にし ないんだけど、そうやってウェブの裏街道でいろいろ書かれるのなら「俺はこういう人間で、こういうことを考えている」ということを、表で常日ごろから発信しておくほうがいいと思ってこのブログを始めたんです。
山本:なるほど。僕が法律家としてのshioさんに今日ぜひうかがいたかったのが、そのブログに学生さんのポートレートをたくさん載せているじゃないですか。それって肖像権とか著作権の問題もあるのではと思ってて。
塩澤:なんの問題もないですよ。
山本:そうなんですか? 僕も写真を撮るときは「嫌な人は言ってね」って断ってはいるんですが。shioさんが人物を撮るときも「ブログに載せるかも」ってことは明言するわけですか?
塩澤:時と場合、相手によります。撮影してもいいか、載せてもいいか。だけど学生の場合はむしろみんな「載りたい載りたい!」って言いますから。
山本:そうなんですか?
塩澤:ときどき「学生の写真をあんなに載せて」って批判する人もいますが、本人たちは載りたくて載ってるんで。そういう本人の気も知らないで「あんなひどいことして」みたいに言う人が最近の日本は多くて、意味がわからない。本人がよければいいわけなのに。
山本:僕もブログに写真を載せていると、たまに「あなたが撮った写真に通行人が写り込んでますけど」って言ってくる人がいて。
塩澤:そんなの、まったく問題ないですよ。だってまず、日本の法律に“肖像権”という権利はないんですから!
山本:え? おもしろいっ(笑)!へえー。じゃ、肖像権を持ち出すヤツがいたら「それはどこの法律?」って言えばいいんだ。
塩澤:そう。存在しない権利に振り回されているんです。たとえば総務省が提供している“現行法令データベース”で検索してみますか。“著作権”や“抵当権”で用語を検索すると、法令がいくつも出てくる。同様に、ここに。
山本:“肖像権”を入れてみると。わっ、「該当するデータはありません」! 本当だ、“肖像権”って日本にはないんだ! 明日から好き勝手に店内写真撮ろう(笑)。
塩澤:あ、店内の場合は他人のプロパティー、他人の不動産のなか なので、そこで撮っていいかどうかを決めることができるのは店主、あるいはその所有者です。だから僕も料理を撮るときはかならずお店のかたに「撮っていいですか」って聞いて、その了解を得てから撮影しています。
山本:法律家だな~! 今日、この5分だけでも僕にとっては相当有益でしたよ(笑)!
今回の聞き手
山本謙治(やまもとけんじ)
農産物流通コンサルタン ト、食生活ジャーナリストとして年間100日以上出張をする日々。最近では肉牛のオーナーになり、畜産関連の仕事も多数。