―MVNO現状の勢いを、どう捉えていますか?
内藤氏:13年度は、前年比で41%。MVNO事業関係の売上げだけを見ても、33%増です。これを高いと見るか、低いと見るかは評価が分かれるかもしれませんが、市場が急速に立ち上がってきているのは事実と言えるでしょう。実際に、グイっと上がっているのは、最後の第4四半期です。おそらく今年度データを取れば、相当の伸びになると思います。
―契約数に関しては、いかがでしょうか。
内藤氏:これも売上げとまったく同じです。実際に伸びが大きいのは第4四半期で、年間ベースに直すと大きな数字になります。
―伸びた理由については、どう分析されていますか?
内藤氏:1GBが900円になり、マスメディアで特集を組まれることが増え、一般消費者の目に触れるようになったのがひとつあると思います。さらには、イオンさんを初めとする流通系の方々も販売に乗り出しました。それまでは、どちらかというと通信に関心のある方が使っているものでしたが、急速に認知度が上がったのは大きかったですね。
―一方で、「格安SIM」という呼ばれ方だと、勝負の軸が価格だけのようにも聞こえます。
内藤氏:時間軸で見ると、現在はまだフェーズ2の段階です。回線を貸し出すMNOとは異なる料金プランを出していて、これが別名“格安SIM”と呼ばれています。団体としては、この次のフェーズ3を目指していますが、まだ道半ばですね。ただ、格安=MVNOではないですし、価格はあくまで差別化の一例です。
―フェーズ3では、どのようなサービスを目指しているのか、具体例を教えてください。
内藤氏:実際には、まだ具現化できていません。2020年に向けて、これはいいというものを各社がトライし、いくつかがヒットするのではないでしょうか。一方で、人間が使うだけだと回線数にも限界があります。M2Mをはじめとした、通信の基盤としてMVNOが使われるようになればいいですね。
↑現状は、MVNO各社が料金プランに工夫凝らしているフェーズ2の段階。より多彩なサービスを目指す。―フェーズ3に移行するには、何が足りないのでしょうか?
内藤氏:アイデアが足りないといわれるかもしれませんが、それは各社の課題です。一方で、政策上の課題もあります。MVNOがより高度で多様な通信サービスを提供したいと思っても、障壁がまだ残っています。その障壁を崩していかなければならないということで、3月に政策提言を出させていただきました。
優先度が高いのは“二種指定設備制度の見直し”です。なぜなら、MVNOにこういうものを提供しなければいけないという根拠になっているからです。今は、MNOが3グループで寡占になり、MNO同士はほぼ対等な関係です。しかし、MVNOのほうは不平等な状態にあります。どんな規律にすべきかの検討はまだ進んでいませんが、今のようにドコモさんだけではなく、MNO各社に対してしかけるべきということですね。
たとえばMNOは、ソフトバンクとワイレスシティプランニング、KDDIとUQコミュニケーションズのようにグループで回線の貸し出しをしていますが、本当にほかのMVNOと対等なのかは、透明性がないと明らかになりませんからね。
―端末については、いかがでしょうか。SIMロック解除の方向性について、どのように考えているのかを教えてください。
内藤氏:運用のされ方次第では、販売奨励金の高騰問題が解決するかもしれないと期待しています。
――ただ、MNOには毎月の割引がありますよね?
内藤氏:それはMNOのビジネスモデルです。彼らは加入者一人あたりの月間売上高が高いから、そういうことができるのであって、我々が真似できるものではありません。ですから、端末代を回収し終わったあとは少なくともSIMロックを外していただき、2年縛りをやらないという環境でいつでもMVNOに移れれば、多くの問題が解決するのではないかと思います。
“格安SIM”だけで終わらないために、今後MVNOが2020年までに実現を目標としている“フェーズ3”。どのような価値が創出されるのか楽しみですね。
また、MVNOの活動の認知度を上げるために、マスコットキャラクターである『しむし』君も誕生しました。MVNOがもっと盛り上がって、このキャラを見る機会が増えれば、今までよりも快適な通信サービスが受けられるかもしれません。