大人気ブロガーであり、デジタル業界をワクワクさせるエンジニアでもある村上福之さん。ミステリアスな肩書をもつ氏に、自著の想い出やこれからのコンテンツについて語っていただきました。 20140831_arai_sorette993

株式会社クレイジーワークス 代表取締役 総裁
村上福之

株式会社クレイジーワークスの代表取締役総裁。元家電メーカー系エンジニア。2012年、『ソーシャルもうええねん』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション刊)を出版。スマートフォン向け電子書籍サービスであるandrobookとandromusicとステログをバイアウト。また、米国で1億円ファンディングしたGumroadのコピーサイトAmeroadを1日でつくってヤフオクで売却したことでも話題を呼ぶ。アルファブロガーアワード2010受賞。世界中への災害地への寄付活動が趣味。会員2000人を抱える"ふくゆき会"の会長も務める。
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速水:まずは世間話からしたほう
がいいですかね?

村上:いや、暑いですねえ(笑)!

速水:僕は千葉に海水浴に行きましたよ(笑)。ヤンキーばっかりいましたけど。

村上:速水さんといえば、そういうカルチャーギャップの本を書かれているんですよね。僕が大好きなエリアです。

速水:わりと下世話なね。

村上:だけど、本ってタイトルが8割くらいじゃないですか。速水さんの本も、タイトルのつけかたがいいなと思いました。

速水:でもそんなに僕の本は売れているわけではないので(笑)。ま、タイトルは大事ですけどね。

村上:タイトルがよければ中味は白紙でもいいかも(笑)。だけど本を売るのって難しいですね。僕、自分の本を売るときに営業も自らやっていたんですよ。出版社に営業と広報と編集がひとりしかいなかったので、いろいろなことを自分でやったんです。広告予算もないっていうから、電車の中吊り広告も自分で買いましたし。個人で電車広告を買う人ってあまりいないですよね。

速水:それはいないですよ(笑)。本の取次とも著者自らがコミュニケーションをとって?

村上:はい。POS管理も全部やりました。

速水:それはすごい。僕もこの業界に10年以上いるけど、そこまでの経験はしてないですよ(笑)

ブログは基本的に全部ボランティアなんです

速水:改めて、ここでひとつ質問したいんですが。肩書をひとつあげるとしたら、なんですか。有名ブロガーであり、本を出しているから著者でもあるし、社長でもあるし、名刺には総裁とも書いてある。エンジニアでもありますよね。

村上:なんやろ。最近はめんどくさいのでニートと言っています。

速水:ニート(笑)? オフィスに引きこもっている?

村上:いやあ。最近はオフィスにもあまり行かないですけどね。スマホバブルもはじけましたし。無職とかニートっていうと、それ以上は深く突っ込んで聞かれないから。めんどうくさいときには、次の言葉が続かないように会話をもっていくのが好きなんです。

速水:え、ちょっと待って。これ、この話はもう続けたくないということの意志アピールですか?

村上:アハハハハ! いやあ、でもホント、自分でもなにやってるか、最近よくわからないんですよ。じゃ、エバンジェリスト(伝道者)にでもしておいてください。

速水:なにを布教するんですか。

村上:なんやろ。ダメ人間でも生きていける、ということかな(笑)。

速水:そのための活動としてブログを書いたりしている、と。ということはブロガーでもある。

村上:ブロガーでもいいですけど、まったくお金になっていないので。いろんなメディアに書かせていただいていますけど、基本は全部ボランティアなんですよ。

速水:アフィリエイトとかは。

村上:まったくやっていません。昔はアクセス解析とかやってみたこともあるけど、そんなちまちましても男のロマンを感じないし。それでお金が入ってもねえ。

速水:それを職業にするという意識はまったくない。

村上:完全に趣味ですね。

速水:じゃ、職業的な意味でクレイジーワークスは。

村上:そこは一応ビジネスとしてやっていますけど。

速水:いまクレイジーワークスで手がけている仕事は?

村上:なんでしょうね。ふつうにどうでもいい受託アプリをぽこぽこつくったりしていますよ。

速水:どうでもいいって(笑)。

村上:いや、僕の仕事のやる気のなさは天下一品だということは、みんな知ってますから。

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初めてのことはなんでも基本的に楽しい

速水:本を書いてみようと思ったのはなにかきっかけが?

村上:いや、単にフリーの編集のかたが僕のブログを見つけて。

速水:本を出しませんかって?

村上:それがきっかけです。やはり、はじめてのことは基本的に楽しいですね。まあ、人生で一度くらい本を書いてみたかったんで。まったくお金にならなかったですけど、まあ、楽しかった。本当、お金になることと楽しいことって全然違うんですよ。たとえばゲームにしても、作業的につまらないゲームほど儲かる。

速水:不思議ですねえ。

村上:クソみたいな仕事のほうがお金になるけど、それは作品性も世の中に問うものでもない。

速水:ふうむ。それはエンジニアも物書きもいっしょです。

村上:物書きも、フォトグラファーも漫画家も、みなさんそうですよね。『ガロ』に描いてもお金にならないのと同じ。

速水:わかりやすい(笑)。

村上:心は満たされるけど、懐は満たされない。これはもう、人生のテーマですね。

速水:なにか、仕組みでどうにかならないですかね。作品と楽しさと、お金を結びつける方法みたいなのを発明してくださいよ(笑)。

村上:これがすごい難しい。だって、たくさんの人がよろこぶ話、たくさんの人が読んでくれるものならいいかというと、それはNOじゃないですか。じゃ、すばらしいコンテンツってなんやの? って、最近すごく考えさせられるんです。映画にしても作品をつくると赤字になって、グッズの売上でそれを補てんしたりするのって、どうなんだろうとか。

速水:意味のあるコンテンツをつくったとしても赤字になってしまうとなると、もう作品をつくることが社会奉仕みたいに。

村上:なっちゃってますね。

速水:もう慈善事業ですね。このコンテンツとはなんぞや問題、なんか解決策はないんですかね。

村上:読者になにかウケること言わなあかんの? じゃ、やはりいまのアベノミクスの影響でこれからはきっと働いたら働いたぶんだけ儲かる時代がやってくると思います。みんなスキルアップと自己啓発のためにがんばりましょう。これでいい?

速水:それ、結論にしますか!?

村上:じゃあね、余生はコンテンツをつくって身銭を切って社会貢献をしよう。そんな時代になるかもしれません。

速水:うーん。村上さんが言うとそれも嘘っぽいけどなあ(笑)

今回の聞き手
速水健朗(はやみずけんろう)
'73年11月9日生まれ、石川県出身。編集者・ライター。著書に『ラーメンと愛国』(講談社刊)、『自分探しが止まらない』(ソフトバンク刊)ほか。
http://www.hayamiz.jp/

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