第3回目のゲストはこの人、サイバーエージェント『ガールフレンド(仮)』のプロデューサー、横山祐果さんです。
なお、第4回のゲストはDeNA『三国志ロワイヤル』の山口恭平さん。このインタビューを読んで気になっていただけた方は、8月26日発売の週刊アスキーをチェックしてみてくださいね。
↑サイバーエージェント『ガールフレンド(仮)』プロデューサー、横山祐果さん■ ゲームが大好きという訳ではないからこそつくれた
安藤:今横山さんはゲームをつくっていますが、サイバーエージェントさんは色々な事業を展開していますから、今後は他のことをやる可能性もありますよね。これからの横山さんにすごく興味があります。
横山:先のことはわからないですけど、ゲームで培ったことを活かして、何かしらサービスを出していけたらと思います。
安藤:ゲームで培ったものとは、具体的にどういうものですか?
横山:いろんなケースを想定することを勉強しました。ゲームって複雑ですよね。こんなボスが出るといいかなと思ったら、全然ウケなかった、そういうことってありますよね。得意になったわけではないですけど、そういったことへの対処ができるようになったような気がします。
安藤:女性はマルチタスクに長けた脳味噌を持っていると僕は思っていて、例えば自分の母親も料理をしながら洗濯物を取り込んで回覧板を回して、とやりますけど、男は同時に複数のことができないんですよ。今までは男の人が男っぽいインターフェースやサービスをつくってきましたが、それをゲームの複雑な伏線や構造設計ができる横山さんのような女性が使いやすくしていく。そういう新しいサービスが出てくるような予感がしてすごく楽しみです。
横山:ありがとうございます。
安藤:この会社に入った当初は、何をやられていたんですか?
横山:最初はブログやプラットフォームの運営、運用を担当していました。
安藤:それが突然ゲームになったきっかけはなんでしょう?
横山:世界観があるものをつくりたいと思っていたので、ゲームでやってみようかな、と思ったんです。
安藤:ゲームはお好きだったんですか?
横山:それが、そうでもなくてですね……。テトリスくらいしかやったことがなかったんです。
安藤:ゲーム好きの人がつくったゲームではないなと思いました。
横山:ホントですか、ばれてるー(笑)。
安藤:好きな人がつくったのなら、ああいう色味にはならないですよ。女の人であっても、男の人がつくったゲームからすり込みみたいなものを受けるはずですから。今はゲームをやられるようになりましたか? 「やらない」とおっしゃっても、全然問題ないと思いますよ。
横山:そうですね、流行っているゲームをちょっとだけやってみる感じなので、もうちょっとやらないとなと思います。
安藤:ご本人にお聞きしたわけではないのですが、スーパーマリオつくった宮本茂さんは、ほかの人がつくったゲームをほとんど遊ばれないという話をきいたことがあります。そのかわり映画を見たり、運動をしたり、そのほうがよっぽど脳味噌へのインプットになるそうなんですね。ゲームをやれば面白いゲームがつくれるとは限らないんですね。横山さんがゲームをつくるときに大事にしているインプットがあったら、ぜひ教えていただきたいですね。
横山:体も動かしますし、テレビや映画、舞台やマンガとか、いろいろ見るのが好きです。ミーハーなのかもしれませんね。
安藤:ミーハーというと悪いイメージもありますが、プロデューサーは時代を切り取ることが大事。なので今の時代をいろんな角度でチェックするのが好き、という言い方をするともっともらしくなりますよ。
横山:あ、確かにそうですね(笑)。今後はそう言うことにします(笑)。
安藤:チームの皆さんはどうですか?
横山:逆にゲームが好きな人が多いので、よかったなと思っています。
安藤:まんべんなくいろんなものが好きという感じですね。ミーハーだとか、まんべんなくて突出したものがない自覚があるという話を聞くと、人と組んで何かをやるプロデューサー資質が高い人なのかなと思います。僕もプロデューサーなんですけど、自分では何にもできない、って思いませんか? プロデューサーって、実は自分ができないことを把握している人だと思うんですよ。
横山:思います思います、何にもできないですね(笑)。
安藤:自分では何にもできないから、人に「やってほしい」と言い続ける仕事ですよね。横山さんのお仕事の流れはどうなんでしょう、譲れないところは最初に提示しておいて、あとは目利きの人の意見を聞く感じでしょうか。先ほどの声優さんのお話もそうですし、イラストもそうなんですか? 目利きの人がいないとあれだけかわいいものはできないですよね。
横山:イラストはそうですね、一応最初と最後だけ見て「オッケー!」みたいな感じです(笑)。
安藤:それだけ信用できる人が周りにいるということですね。
横山:はい、ありがたいことです。
安藤:実現するかしないかはおいといて、今後GFでやってみたいことはありますか?
横山:キャラクターのいろんな面を出して、プレイヤーに楽しんでいただけることをたくさんやっていきたいかなと思っています。
■ 曖昧なもの言いから見えてくる横山さんの才覚
安藤:横山さんという人がだんだん見えてきた気がします。印象的で面白いなと思ったのは、ものごとに深く突っ込まないしこだわりもないです、と言いながら、先ほど世界観のあるものをつくりたいとおっしゃった。実はそれって対極にある話ですよね。世界をひとつ創るわけですから。
ふわっとした印象を受けるんですけど、やっぱり何か芯がある人なんだろうなと思うんです。横山さんにとって世界観のあるものとはどういうものなのか、GFで実現できたとしたら一体何だったのかを最後に聞かせてもらえますか?
横山:プレイヤーが本当に実在していると思えるぐらいキャラクターに感情移入できるものや世界、そういうものをつくりたかったんだと思います。ちょっとはつくれたかなという気もしています。
安藤:だとすれば、GFはプレーヤーたちが「この学園は本当にあるかもしれない」と、一瞬でも錯覚するほどのものになっていると思いますよ。
横山:本当ですか、ありがとうございます。でもまだいけると思っているので、頑張りたいと思います。もっとプレイヤーのみなさんが妄想できちゃうようなものにしていきたいですね。
安藤:妄想は好きですか?(笑)。
横山:好きかな、多分好きだと思います(笑)。
安藤:横山さんって今っぽいな、と思うのは、会話のテンポをとるときに「ナントカかなー」という曖昧な言い回しをされますよね。でも横山さんご自身が曖昧な姿勢でゲーム制作に臨んだとすると、GFのようなしっかりしたものはつくれないと思うんです。今までにご登場いただいたクリエイターの方は、「俺のつくった世界観とシステムで遊べ!」というタイプの方が多いのですが、横山さんは初の女性で、しかもいちばん若い違いを感じます。
横山:そうなんですね。
安藤:曖昧な言い回しは、おそらく今の若い人によくある「断言して相手を傷つけない優しさ」や気遣いみたいなものから来ていると思うんです。でも先ほど金粉のお話で「待っている間もドキドキワクワク感を感じてもらえるようにしたい」とおっしゃったように、中ではしっかりしたものを持っている。「ナントカかなー」と言いながら、それこそ“(仮)”とついたものすらビシッと着地させてしまう器用さと絶妙なバランス感覚がある。それって横山さんの世代が持っている特殊な才能や考え方なんだなと、オッサンは思いました(笑)。オフィスでは同じくらいの世代の方が働いていますよね。
横山:そうですね。
安藤:みんな淡々と、静かにしゃべっている。今僕が会議室に入ったら、「うるせーオッサン!」と言われそうな気がします。僕らの会議はデシベルがすごく高くてうるさいので(笑)。でもこちらでは間仕切りもないし、女性のチームと男性のチームが本当に淡々と作業されていて、今どきな感じがありますね。暑苦しさがないですし、今日は新しい世代がゲームをつくり始めたという印象をすごく受けました。
横山:他己分析をいっぱいされた気が(笑)。でもいろいろわかってスッキリしました。ありがとうございました!
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