第3回目のゲストはこの人、サイバーエージェント『ガールフレンド(仮)』のプロデューサー、横山祐果さんです。
ガールフレンド(仮) ↑サイバーエージェント横山祐果さん(右)、スクウェア・エニックス安藤武博氏(左)。■ 才色兼備の“女神”横山プロデューサーとGFの人気の秘密に迫る!
安藤武博(以下、安藤):この対談企画は今まで20人近い方にご登場いただいているのですが、今回はついに女神が登場します。『ガールフレンド(仮)』(以下、GF)のプロデューサー、横山さんです。
横山祐果(以下、横山):よろしくお願いします。
安藤:横山さんはメディアによく出られていて、容姿や女子力を誉めた記事も多いですが、今日はそれはおいといてゲームの中身の話をしようと思うんですが……おきれいですね(笑)。
横山:うふふ、ありがとうございます(笑)。
安藤:GFは登録者数530万人を突破して、昨年の暮れで2周年を迎えました。僕が個人的に遊ぶきっかけになったのは今年のお正月、クロエ・ルメールのCMがすごく印象的だったことなんです。“(仮)”のついたタイトルも大発明だと思うんですよ。完全に狙いをもってつけたのか、それとも“(仮)”のまま進めたらそうなってしまったのか、どちらなんですか?
横山:最初は仮題の“(仮)”だったんですけど、チームメンバーと話をしていたときに「この“(仮)”にはちゃんと意味があるよね」という話になって。運命の子を探しにいくまでの“(仮)”という意味で、確かにしっくりくるなと思ってこれになりました。
安藤:狙ってつけていないのだとしたら、ゲームの神様に愛されたんですね。あまりそういうことは起こらないですし、“(仮)”とつくことでゲームの厚みやドラマ性が増すものってほかにないと思うんですよ。最初は「これ、仮題のまま出たんじゃないの?」と思った人も多いと思いますが、今となってはこの作品の世界観を表す玄関になっていて、みんなにとても愛されているし、今や『ボーイフレンド(仮)』というスピンオフも出ています。“(仮)”自体が確立されたわけですが、最初にこのタイトル名を発表したときの反響はどうでした?
横山:最初はまさにおっしゃる通りでしたけど、だんだん定着して今は『(仮)』と呼んでいただくこともありますね。
安藤:実は僕は、部下に企画書のタイトルには絶対“(仮)”とつけるなと言っているんです。プロジェクトってタイトル名に向かって進んでいく性質をもつので、“(仮)”とつけると本当に“(仮)”みたいな感じででき上がってしまう。でもエンターテイメントって面白いもので、そういう成功体験や常識に縛られていると新しい発明が生まれない。GFは僕のタイトル論を見事にぶち壊したタイトルだと思っていますし、タイトルにはまだまだ進化する余地があると個人的に感動したんです。
横山:同じことをデザイナーさんに言われました。“(仮)”のままだとうまくつくれないから、早く決めてくれと。
安藤:これって今の時代をすごく表していると思うんです。さっきオフィスを拝見させていただきましたが、皆さんお若いし、タイトル自体に20代にしかできないドライブ感がそのままにじみ出ている。たとえば横山さんが10年後に振り返ったときに、「あのときの私はすごくドライブしていたな」と思えるような、今しか絶対にできないタイトルの成り立ちだと思いますよ。
■ ゲーム制作経験ゼロの横山さんがGFをつくれた秘訣は?
安藤:サイバーエージェントさんはウェブサービスの会社としてスタートしていますが、この3年ぐらいで見事にゲーム会社にもなられましたよね。横山さんが会社に入られた時は、ゲームをつくられる予定はほぼなかったと思うんですが?
横山:なかったですね。
安藤:今はゲームクリエイターになられましたよね。ちゃんとプロデュースした作品があって、たくさんの人に愛されている。まったくつくったことのない人がつくり上げたからこそ既成概念にとらわれないタイトルになったし、あの内容になった。今までのゲームはある程度経験がないとつくれないという常識がありましたが、それを短期間で見事に覆した。長くゲームをつくっている人間からするとすごいことなんですよ。
横山:ありがとうございます。
安藤:5年10年経験を積まないとここまでできないということを横山さんとチームの皆さんでやってのけたわけですけど、うまくいった秘訣や心掛けていたこと、そのあたりの話をぜひ聞きたいですね。
横山:そうですね、チームのメンバーの組み合わせがすごくよかったかなって思います。
安藤:最初につくられた時は、ゲーム制作の経験者はおられたんですか?
横山:ガラケーでゲームをつくった経験のあるスタッフが、何人かいました。
安藤:たぶんそうだと思いました。しかも女性が中心になってつくったんだろうなというのが、僕がいちばん最初に触ったときの印象だったんですよ。
横山:本当ですか!?実はその通りで、女性スタッフの比率は多いんです。
安藤:僕らがつくっている『拡散性ミリオンアーサー』もGFも遊びとしては実は同じで、ここ3年ぐらいで業界を一世風靡したカードとカードバトルものなんですね。それこそものすごい数が出ていて、お客さんからすると「あれもこれも同じじゃん」という感じですけど、GFはほかのものに似ているにもかかわらず、ちゃんと作品の芯が立っている。世界観やキャラクターの息遣い、物語がしっかりしているんですね。それって何でかなとずっと考えていたんですけど、たぶん女性の細やかさみたいなものが、徹底的に凝縮されているんですよ。
横山:ありがとうございます!
安藤:インターフェースのデザインとかボタンとか、背景に使われている色も、おそらく女性の発想が元になって、女性が決定したことであの色になったと思うんです。たとえば水色とピンクは男性にはうまく扱えない色なんですけど、女性だから気持ちのよい配色になっている。ローディング画面でも、バーが進捗しながら金粉のようなものがキラキラと落ちるじゃないですか。あれは男には絶対にできない発想なんですよ。
横山:金粉のところは、ディズニーみたいに待っている間もドキドキワクワク感を感じてもらえるようにしたい、と指示したと思います。
安藤:「キラキラしながら動かないとカワいくないじゃない」とか、「そっちのほうがおもてなししている感じがあるよね?」といった相談を、女性スタッフが中心になってやっている感じがすごくしました。
横山:そうですね、それはあるかもしれないです。
安藤:それからゲーム全体が、すごく清潔な感じがしますよね。全然汗臭くない。普通ギャルゲーをやっていると、「これ、どうせオッサンがつくったんだろうなー」と、ふと醒めることがあるんです。GFは女の人が「男の人ってこういう時にドキドキするんじゃない?」といったことを考えながらつくったものの集合体なのに、結果きちんと従来のギャルゲーファンにも満足のいく内容になっている。それってありそうでなかった要素で、カードゲームが多い中で特に目立った要因だと思います。
横山:清潔さはすごく気を使いました。遊ばれるプレイヤーが嫌な気持ちとか、しめった気持ちにならないようにと。
安藤:漂白剤がちゃんと使われている洗いたてタオルのようなあの清潔感は、男性が遊んでもすごく心地いいんですよ。やっぱり男の人のことを考えられたり、チームの男性の方の意見をかなり取り入れたんですか?
横山:チームの男性の意見はかなり聞きました。最初にデザインを担当してくださった方も男の人で、男の人と女の人が一緒にやっていたので、それもよかったのかなと思います。あまり女の子しすぎてもよくないと思ったので、ちょうどよくバランスが取れたと思います。
安藤:いちばん印象的なのはホーム画面で、絶妙のトリミングで女の子が出てくることです。相当試して相談もされたと思うんですけど、あの大きさはどういう感じで決まったんですか? あれぐらい大きいとかわいさが伝わるだけでなく、ドキッとするんですよね、男子としては。
横山:とにかく大きく女の子を見せたいという話をして、あの大きさになりました。大きさ的には、あれが限界ですね。……でも、あの、めちゃめちゃ誉められて、どうしようかと思っているんですけど(笑)。
安藤:もちろんです。この連載は、僕が面白いと思ったゲームの話を聞く企画なので、今日はめっちゃ誉めますからね(笑)。