話題のスマホゲームのクリエイターとスクウェア・エニックス安藤武博氏が対談する連載『召喚★アプリ神(ゴッド)』。週刊アスキー本誌で掲載しきれなかったインタビュー内容を3回に分けて掲載します。

 第2回目のゲストはこの人、スクウェア・エニックス『聖剣伝説RISE of MANA』のプロデューサー、小山田将さんです。さらに今回はスペシャルゲストとして聖剣伝説シリーズ生みの親である石井浩一さんにもお話を伺いました。

石井浩一氏(株式会社グレッゾ 代表取締役) アプリ神

■ 石井氏の聖剣への思いとマナ誕生の秘密
安藤武博氏(以下、安藤氏):(中編より)石井さんにとって聖剣とは何かという答えになりつつありますね。石井さんが考えたものが聖剣になり得るというのは、確かにあると思います。

石井浩一氏(以下、石井)聖剣ってあったかい、かわいい、と言われることもあるけど、実はヨーロッパのファンタジーの、ブラックでダークな“毒”を含んだファンタジーの描き方をちゃんと踏襲しているんだよ。かわいいけど凶悪になるラビとかね。

安藤:あらためて見るとびっくりしますよね。

石井:心の闇とか死とか、人間としてあまり触れたくない部分ってあるよね。でもそれに近いものを入れていかないと、ファンタジーとしての土台ができない。本当に表面を撫でている世界しかつくれなくなってしまう。

安藤:薄っぺらい世界になってしまいますね。

石井:俺が目指していたのは、そのままのヨーロッパファンタジーじゃない。自分は日本人で、日本のよさを見て、感じて育ってきた。だから聖剣は、日本で生まれた俺の目でとらえたファンタジー世界というところに落としこみたかった。日本発信の王道ファンタジーが聖剣、というね。
 FFもこだわり方は同じで、実は俺の中でFFと聖剣は結び付いているし、FF外伝では両者のイメージの統一と、自分のイメージの世界でちゃんとつくってみたいという欲が結構入っていたね。

安藤:なるほど。

石井:聖剣の世界を感じさせるシンボル的なものとして見えたイメージが“樹”なんだよ。マナの力、その種として転がっているのがクリスタル。マナのイメージを深めていったときに、クサいんだけど”愛”というデータに起こしにくいものがなんとなく漂っていて、それに対してマナが干渉したり反応する感じ、目に見えないものを感じさせる何かが表現できないかなと。

安藤:マナの概念の誕生は、聖剣を語る上でははずせないですよね。

石井:だけどマナって、実際どういうものなのかまったくわからない。マナが結晶化した石があるらしいとか、マナの力が強い場所に精霊がいるとか、漠然としている。でも多くの伏線を張って囲んでいくことで、存在が感じられるようになる。
 人間世界でも、神様を見たことがなくてもいると思う心、信じる心が力を生み出すことがあるよね。マナはそういうものになっていくのかなと。

安藤:小山田が言っていた聖剣世界の居心地のよさ、その正体がつまびらかになりましたね。かわいいもの、温かいものに反して、本当は見たくないもの、暗いものもきちんと入れる。目で確認できて触れられるものと、目に見えないけど存在が感じられる神様や愛のようなもの。この両方を存在させることが、今後も聖剣のキーワードになるかもしれないですね。

安藤武博氏(スクウェア・エニックス プロデューサー) アプリ神

■ 動き出した聖剣のこれから
安藤:石井さんの聖剣とファンタジー論をあらためて聞いてどうですか。RoMにきちんと反映されていると思いますか?

小山田将氏(以下、小山田):入れられるものは入れています。特に天使と悪魔という存在など、もともとRoMは“二律背反”をテーマに掲げていて、好きとか嫌いとか、温かいものとそうでないものも入っています。愛についても親子愛だったり、いろんな理由があっての愛などがシナリオに散りばめられているので、ちゃんと新しい聖剣伝説になっているんじゃないかと思います。

安藤:RoMはオンラインの運営ものなので、当然これからも続いていきますが、今後はどんな展開を考えていますか?

小山田:本来の聖剣にあった多種多様な要素を追加して、遊びの幅を増やしていく方向を考えています。具体的には魔ペットを使った遊びを準備しています。
 物語もより世界を広げていく予定です。現在のお話は6月にクライマックスレベルの盛り上がりになって、主人公の天使と悪魔、2人の主人となる天王と魔王がどうマナの樹と関わっているかが明らかになります。それがわかると、今回の聖剣伝説の世界がより開けて見えるように構成されているので、今後の展開に期待していただきたいと思います。

小山田将氏(スクウェア・エニックス プロデューサー) アプリ神

安藤:RoMを起点に復活ののろしが上がって、ほかの聖剣ブランドも動き出しますよね。ここでほかのタイトルの展望についても言及してほしいんですが!

小山田:はい、iOSで既に出ている聖剣伝説2の、Android版をつくり始めています。

安藤:チューニングもかなりやっていて、今日タッチパネルで全方位に移動できるバージョンを遊びましたけど、直感的に操作できますよね。

石井:うん、俺も今触ったけど、気持ちよく遊べそうだね。

小山田:バーチャルパッドの不満を解消して、360度動かしたぶんだけキャラが正確に追いかけるようにしたので、今までより直感的に遊べます。iOS版もバージョンアップ予定です。

安藤:それがまずひとつだよね。あとは2年後に聖剣は25周年を迎えます。僕は聖剣のファンとして、その時に聖剣の“5”にあたるものが遊びたい。スマホにはRoMがあるから、聖剣5はエンディングがあるパッケージゲームを専用のゲーム機で遊びたい。
 今回のインタビューで”聖剣伝説とは何か?”ということがつまびらかになりましたが、石井さんが関わっているか否かでもすごく変わると思います。僕は石井さんの神話が、また遊びたい。聖剣5は、ぜひ小山田プロデューサーと石井さんでタッグを組んで、パッケージゲームとしてつくってほしいですね。

小山田:はい、やりたいと思います。剣5は石井さんにぜひ、いや絶対関わっていただきたいです。本音を言うと、RoMにもちょっと関わっていただきたいなと(笑)。

石井:何かしらの形で関わるなら、ビシビシ行くけどいいかな(笑)?

安藤:容赦なくお願いします(笑)。RoMも25周年までは必ず続けます。基本無料でスマートフォンで遊ぶ聖剣と、ゲームの面白さをきちんと詰め込んだパッケージゲームの聖剣、2つの聖剣がきちんとファンの皆さんに届くといいなと思います。では最後にお2人から、ファンのみなさんにメッセージをお願いします。

小山田:RoMは新しい聖剣でありつつも、昔遊んだ聖剣に近い体験ができると思います。外部コントローラーにも対応していますので、当時の操作感や聖剣伝説2などのイメージを思い返しながら遊んでいただけるとすごく嬉しいです。先ほどお話したiOS版とAndroid版の聖剣伝説2も外部コントローラーに対応しますので、絶対に損はさせません!と胸を張って言わせていただきますね。

石井:小山田君は俺の代わりによい聖剣をつくろうと頑張ってくれているから、応援したいし見守っていきたいね。これからも小山田君をよろしくお願いします。

『聖剣伝説 RISE of MANA』 アプリ神

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