週刊アスキー本誌では、角川アスキー総合研究所・遠藤諭による『神は雲の中にあられる』が好評連載中です。この連載の中で、とくに週アスPLUSの読者の皆様にご覧いただきたい記事を不定期に転載いたします。 文具とアップルの間。それで、グーグルストアってどうなるの?
その昔、ニューヨークの名物のひとつはソニーセンターだった。いまは、5番街やソーホーのアップルストア。時代はめぐるのだけれど……。
グーグル“X”ストア店内予想図 ↑最近のグーグルは“X”がキーワード。ということで、Google X Storeというものの予想図を描いてみた。たぶん、グーグルが現在考えているのはもっと大型でこんなんじゃないと思いますが。 1990年代のなかば、某テレビ局で現地駐在しているAさんに、ニューヨーク中のショップを案内された。Aさんは、筋金入りのアップルユーザーなのだが、「マンハッタン島でマックの専門フロアがあるのは、J&Rだけなんですよ」と言ったのを覚えている。J&Rというのは、グランドゼロに近いPCのほかにCDから工具まで扱う量販店である。
それから数年が経過して、ソーホーにアップルストアができたときには驚いた。郵便局をリノベーションした建物は、軒先に、数十センチ四方の小さなアップルマークしかないので探すのに苦労した。1階の展示スペースや中空・ガラスの階段など、いまではおなじみなアップルストアの空間が、訪れる人を包み込む仕組みである。
音楽プレーヤーiPod発売と同じ頃なので、アップルが提供するライフスタイルが、スッと晴れて見えてきた時期なのだろう。ちょっとよそ行きで、人々の意識を高揚させて、スマートでおしゃれで前向きであることで差別化する。それが、2000年代のアップルそのものだったと言ってもよい。
ところが、これを書いている段階では"噂"に過ぎないのだが、アップル製品が米国の文具チェーン店"STAPLES"でも買えるようになるという。STAPLESは、"OFFICE DEPOT"みたいなお店で、売り場には、たしかに他社製のスマートフォンやPCは売っている。しかし、この噂にニュース性があるのは、5番街や銀座や上海は南京東路にあるガラス張りのアップルストアとあまりに対照的だからだろう。
これからアップルは、スマートテレビのiTVや廉価版のiPhoneを発売するのではないかとも言われている。米国では、テレビなんかは、ベストバイやウォルマートなどの量販と1年契約してドカンと売るような商売の仕方だ。マックの販売も考えると、文具チェーンのSTAPLESとの提携はかしこい選択かもしれない。マックやiPadが、米国ではラバーバンドボール(米国ではなぜか玉に巻いて輪ゴムを売っている)なんかと一緒に扱われるようになったというのは気になるが。
ところで、アップルのこのニュースと前後して、グーグルがリアル店舗を作るという話も飛び込んできた。米国では、マイクロソフトも自社製品のためのショップを持っているし、昨年2月には、アマゾンも実店舗を作るという話題があった。しかし、グーグルがリアル店舗を作るならアップルストアとは正反対の超ナードで、超オタクで、超コンピューターマニアで秋葉原なお店にしてほしい。個人的には、スカスカで風邪をひきそうなアップルストアより数倍そっちのほうが好きだからだ。
ところで、グーグル創業者のひとり、ラリー・ペイジが、ヨドバシアキバで、モミモミチェアを2台買って帰ったって本当でしょうか?
【筆者近況】
遠藤諭(えんどう さとし)
角川アスキー総合研究所ゼネラルマネジャー。元『月刊アスキー』編集長。元“東京おとなクラブ”主宰。コミケから出版社取締役まで経験。現在は、1万人調査“メディア&コンテンツサーベイ”のほか、デジタルやメディアに関するトレンド解説や執筆・講演などで活動。東京カレーニュース主宰。TOKYO MX TV 毎週月曜日18:00からのTOKYO MX NEWS内“よくわかるIT”でコメンテーターを務め、『週刊アスキー』で“神は雲の中にあられる”を巻末で連載中。
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