週アスが取材したのは、追加公演として開催された昼の部。本公演(夜の部)がまたたくまにソールドアウトしたため、急遽追加が決まったものだ。しかも追加公演にもかかわらず出演メンバーの豪華さは変わらず、むしろ ぱすぽ☆ や指原莉乃の参戦で、本公演に劣らないラインアップとなっていた。
IDOL NATION 追加公演 出演者リスト(出演順)
Cheeky Parade(オープニングアクト)
HKT48
東京女子流
ぱすぽ☆
指原莉乃
アイドリング!!!
SUPER☆GiRLS
SKE48
Cheeky Parade(オープニングアクト)
SUPER☆GiRLSの妹分として、今年2月19日に結成された『Cheeky Parade』。メジャーデビューを目指す発展途上の彼女たちにとって、代々木第一という巨大なステージは大きな挑戦だったはずだ。一部のメンバーは、開演前の舞台裏で足がガクガクしていたという。他のアイドルたちに比べて大舞台の経験が少ないのだから、無理もない話である。
しかも出番はオープニングアクトという難しい立場。自分の席を探し歩く観客が少なくないなか、彼女たちは精一杯のステージを見せてくれた。
その懸命さが伝わってくれば、意気に感じるのがアイドルファンの性。いつしか客席には、初めて聴いたであろう彼女たちの曲に合わせて踊り、声援を送るファンの姿が目立ち始めた。わずか2曲だけのステージながら、多くの観客の心には「Cheeky Parade」という存在が刻み込まれたに違いない。
そんな彼女たちは本ステージのあと、屋外の Resort Stage にて握手会を開催。こちらではリラックスした表情を見せていたのが印象的だった。さらに、9月22日に新宿BLAZEで開催されるソロライブのチケット800枚が、この場でついに完売。これまで最大250人規模の会場でライブを続けてきた Cheeky Parade が、メジャーグループと同じ規模の箱でどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。IDOL NATIONで得た経験は必ずや、そのステージでも生かされることだろう。
M1 Cheeky dreamer
M2 チィキィ ファイター
HKT48
IDOL NATION 本編のオープニングは、博多から『HKT48』が来襲だ。誰でもその名前を知っているのに、実際にライブを観た人は少ない。そんな HKT48 への期待感は、親戚の子の初舞台を見守るような不安感にも似ていたかもしれない。
そのざわざわ感を、オープニング映像の『Overture』が打ち破る。HKT48 ver. は多くの観客にとって初見だったはずだが、「Are you ready?」と迫りくるそのビートは、48グループファンの脳裏に刻まれたおなじみの曲。初めて発するはずなのに、まるで昔から知っていたかのようなテンションで「H・K・T フォーティーエ――イ!」の大合唱だ。
その興奮冷めやらぬまま、HKT48のメンバーたちは平均年齢14.6歳のフレッシュさを広大なステージに展開してみせた。1曲目はSKE48の『チャイムはLOVE SONG』。大トリに控えるSKE48のファンたちが、脊髄反射のごとく素早さでコールを送り始める。会場はすでに総立ちに近い盛り上がりだ。
ただ、その盛り上がりが「カラオケでみんなが知っている曲を歌う」的なノリに近い感も否めない。その状況をどう打ち破っていくのか。ここで飛び出したのが、ハーフ美少女で知られる村重杏奈の「一発芸、やってもいいですか!?」というセルフ無茶ぶりだ。しかもけっこうな尺を取っての自己アピールである。
その一発芸の“明太子”は正直、完成度が低かったかもしれない(せめて2秒間でも静止してくれれば)。だがその向こう見ずなチャレンジは、村重を個別認識していないファンにとっても「元気いいの出てきたなあ」という好感を持って受け止められたことだろう。
そしてここで、新加入の指原莉乃がもつスキルの高さも見せ付けられた。村重が自己アピールを始めるとすかさず、「おいどうした、村重」と名前を挙げつつ、自己紹介を行なうように促したのだ。これぞファン目線の気遣いである。いろんなグループのMCを聞いている記者も思わず、さすがと思わずにはいられなかった。
それでいて指原は、HKT48として歌うときは決して自ら目立とうとはしない。あえて自分を殺すという術を身に着けているのである。これほど頼もしい先輩がそうそういるだろうか。この組み合わせの妙をとっても、現在進行形のHKT48を観るのはおもしろいことだろう。
op映像 Overture
M1 チャイムはLOVE SONG
M2 君と虹と太陽と
M3 真夏のSounds good!
M4 ヘビーローテーション
東京女子流
実力派、独特な曲調、若さ、ファンクっぽさ、日本武道館。『東京女子流』を形容するそんな言葉からは、他のグループとの違いが見えてくる。アイドルのメインストリームではないかもしれないが、誰もが一目を置く。そんな女子流はこの日も、自分たちの流儀を貫いてみせた。
実のところ、東京女子流の出番になると、着席する客の姿が目立っていた。メンバーが「立って踊りましょう!」と促す場面もあったほどだ。有り体に言えば、当日の客層からするとこの日の女子流は少々アウェイだったかもしれない。だが、それが彼女たちのパフォーマンスに影響を与えることはなかった。
彼女たちのステージを何回も見ているファンにとっては、この日の女子流もいつもと変わらず女子流らしかったことだろう。5人という少ない人数にも関わらず、ダイナミックなダンスと歌声で広いステージを支配する。きっと彼女たちは数百人規模のライブハウスでも、1万人規模の代々木第一でも、同じように女子流ワールドを展開することができるのだ。
惜しむらくは、時間の都合で曲数が3曲に留まったこと。女子流のステージはじっくりと聴かせる・魅せる曲を連ねたあと、ファンみんながハッピーになれる曲で会場が沸きあがるという展開が多い。せめて5曲あればと思うファンも少なくなかったはずだ。
だがこの日の経験は、12月22日に武道館ソロライブを控える彼女たちにとって、貴重な場になったことだろう。広大な客席への視線の配り方、気負わずにパフォーマンスを大きく見せるステージング、熱心なファンではない客へのアピールなどなど。彼女たちが目にしたものすべてが、武道館に向けての糧となったに違いない。
M1 Rock you!
M2 LolitA☆Strawberry in summer
M3 Limited addiction -Unlimited addiction Royal Mirrorball Mix-
ぱすぽ☆
8月18日にZEPP東京でのライブを控える『ぱすぽ☆』。ふだんのキャパを超える大一番を控える彼女たちにとって、今回のステージでの課題は明確だったはずだ。ライトなファンをいかに惹きつけるかである。
実のところ ぱすぽ☆ は最近、POP'n アイドル02(ZEPP東京)やゆび祭り(武道館)など、大会場でのライブを続けて経験している。そして、いかにしてアウェイ感を克服するかも見えてきていたように感じられる。
その成果なのか、この日の ぱすぽ☆ は最初から、ファンの気持ちをつかむことに成功していた。1曲目にもってきた新曲の『夏色HANABI』は和のメロディーを取り入れつつ、重めのビートが腹に響くアイドルには珍しいヘビーな曲調が特徴だ。
それに加えて、9色の扇子を使ったパフォーマンスは観る者の目を奪う。初見のファンですら「なにやらおもしろい」と感じていた様子が伝わってきた。そうなればしめたもの。2曲目は鉄板の『少女飛行』である。魚の群れが有機的に大きくなったり小さくなったりする動きを思わせるダンスは、観る者が自然にカラダを動かしたくなる効果を持っているのだ。
そして3曲目は、振り付け講座がおなじみになってきた『マテリアルGirl』。この辺になるとほとんどのファンが楽しそうに「上・前・開いて~・ヘイヘイ!」の振り付けをマスターしていた。奥仲麻琴(まこっちゃん)からファンへの呼び掛けが敬語調になっていたのは意外だったが、そこだけは IDOL NATION を意識したヨソ行きバージョンだったのかもしれない。
M1 夏空HANABI
M2 少女飛行
M3 マテリアルGirl
M4 Dear My Friends
指原莉乃
わずか30分のインターバルをはさみ、この日2回目のステージに立った『指原莉乃』。いまや彼女の堂々としたステージングには安定感すら感じられるが、代々木第一の巨大なステージでもそれが見せられるのか。この日唯一のソロ出演には、そんな興味も感じられた。
そんな不安が杞憂に過ぎなかったことは、会場に詰め掛けたファンが最も実感していることだろう。会場はまるで指原莉乃のソロライブだったかのように、多くのファンとともにさしこワールドが形作られていたのだ。
1曲目はもちろん『それでも好きだよ』。指原がコール&レスポンスを誘い、客席もキッチリ呼応する。ステージのみならず客席にまで照明が当てられた光景は、コンサートでありつつもスポーツの試合すら思い起こさせる、プレーヤー(指原)とサポーター(ファン)との一体感が醸成されていた。
そんな指原はHKT48のステージを振り返り「あまりにメンバーがフレッシュで、自分がババアすぎた」と自虐ネタを振っていたが、そんな彼女はまだ十代なのである! HKT48では2番目に年長の菅本裕子でさえ18歳(高3)だが、先日の選抜総選挙で考えれば、トップ10のなかで指原は3番目に若い19歳なのだ(松井珠理奈、渡辺麻友の次)。
それはさておき、ラストは指原のライブではおなじみの『Yeah!めっちゃホリディ』。このオリジナルって、なんと10年前の曲(2002年5月29日リリース)だって知ってました!? それゆえ若いファンにとってはもはや、さしこの曲として認知されているようである。それも納得の完成度は、エンターテイナーとしての指原の完成度であるのかもしれない。
M1 それでも好きだよ
M2 意気地なしマスカレード
M3 Yeah! めっちゃホリディ
アイドリング!!!
つい一週間前に、もうひとつのアイドルフェスである『TOKYO IDOL FESTIVAL 2012』でホスト役を務め上げた『アイドリング!!!』。そのときには大トリを務めた彼女たちは今回、チャレンジャーというまったく逆の立場で、本ライブに臨むこととなった。
知名度も実績も十分に高いにもかかわらず、バラエティタレントとしての存在感の強さから「微妙に違う立ち位置」を醸し出すのがアイドリング!!!のユニークなところ。それでいて他流試合ではキッチリと存在感を残すあたり、さすがはバラエティ最強の呼び声も高い、順応力の高さを見せてくれた。
『アイドリング!!!』はゴールドの衣装で統一。ちなみに夜の本公演では、『One Up!!!』のPVでおなじみの黒いビキニ風衣装で魅せてくれた。1曲目にもってきた『One Up!!!』はライブ3日前に発売されたばかりの最新シングル曲であり、選曲としては順当なところ。だがこの曲が今回の IDOL NATION では、思わぬ飛び道具となったのである。
実はこの『One Up!!!』、発表当初はファンからの受けがあまり良くなかったという印象だ。記者は「聴きこむほど良さがわかる曲」と評していたのだが、おそらくは全体の構成が古参のファンにとっては聴きなれない感じを与えているのであろう。
たとえばAメロとBメロがともに基音で終わることにより、展開が見えづらい点がそうだ。いっぽうでサビは3度(短3度)上げで終わっており、アイドル曲としては未完の継続性を感じさせる定番の表現なのだが、アイドリング!!!ではサビを基音で完了させることが多く、落ち着かない感じを受けるファンがいるのかもしれない。
※余談だが、アイドリング!!!の曲では他グループの曲に比べ、Dメロの存在感が大きくなっている展開も多い。
本番前にバックステージでリラックスした表情を見せる19号・橘ゆりかと20号・大川藍。ウイダーinゼリーが全面協賛しているとあって、アイドルたちもエネルギーチャージしていたぞ。 出番を前にステージ裏で待機するアイドリング!!!。裏側だけでも立派にライブをこなせそうな規模には、a-nation musicweek のサイズ感が表われていた。ところがこの『One Up!!!』が、会場を多数を占めた他グループのファンにとっては、むしろ受け入れやすい曲調だったのである。上ずった感じのドラマチックなサビでは、おそらくアイドリング!!!を初見であろうファンからも、即席のコールが挙がっていた。
こうなればしめたもの。21人という大人数が見せる華やかなステージと、確実に聞く者の心をつかむMCは、彼女たちが得意とするところだ。ふだんにくらべ「木曜深夜の放送だけでも見てください」という懇願ネタが多かったキライはあるが、「アイドリング!!!って意外にいいネ!」という印象を植え付けることに成功したのは間違いない。
『One Up!!!』のサビで「Jump!」。本人たちの背丈と比べれば、スクリーンがいかに巨大なのか理解できることだろう。 『One Up!!!』のDメロ終わりにくる「バイバーイ」のフリ。こういった印象的な振り付けは大会場になると生きてくるのだ。ラストのプールサイド大作戦では、花道もあつらえられた特大ステージを縦横無尽に走り回り、アイドリング!!!らしいハシャギっぷりを惜しみなく披露。ふだんから複数のユニットに分かれての活動が多い彼女たちらしく、3ヵ所ほどに分かれてのアピールはお手のものだったようだ。
M1 One Up!!!
M2 苺牛乳
M3 プールサイド大作戦
SUPER☆GiRLS
トリ前という大事なポジションを与えられた『SUPER☆GiRLS』(スパガ)。そのライブを観て感じられたのは、女性ファンからの支持が高いということだ。
そもそも IDOL NATION の客席は、ふだんのアイドルライブやアイドルフェスより女子率が高かったように感じられる。近年、アイドルファンにおける女子の比率は高まってきているが、a-nation musicweek の一環という今回のライブでは、女性ファンでも足が運びやすい効果もあったのかもしれない。
そして美少女ぞろいのアイドルグループの中でも、スパガにはとくに女子受けしそうなルックスのメンバーが多い。CMで聴きなれた曲が多いこともあり、客席を見渡すとフリコピを楽しんでいる女子が目立っていた。
いっぽうで、決して男子受けが悪いわけでもない。むしろ『プリプリ♥SUMMERキッス』のお尻ふりふりダンスのように、男子の五感に訴えかける仕掛けも随所に用意されている。もちろんこの日出演したグループすべてが高い女子力をもつわけだが、メンバー全員そろってのお尻ふりふりダンスを嫌味なくこなせるのは、なぜかスパガだけと思わせる何かを感じさせた。
そのスパガのライブ、オープニングは最近のライブでおなじみの巨大フラッグを掲げての入場だ。これがなかなか絵になるのである。フラッグを用意しているグループはほかにもあるが、メンバーが手持ちで入場してくるシーンはほとんど記憶にない。シンプルながらインパクトの高い演出であり、とくに今回のような巨大な会場では効果が高かったと言えよう。
opテーマ Welcome to S☆G Show II
M1 EveryBody JUMP!!
M2 プリプリ♥SUMMERキッス
M3 MAX! 乙女心
SKE48
いろんなアイドルが一度に観られるフェスとしての性格をもつ本公演ではあるが、客席の多くを占めていたのは、大トリを務めた『SKE48』のファンだったようだ。それは『Overture SKE48 ver.』が流れたときの、どよめきにも似た沸き上がりからも容易にうかがえることができた。
しかも今回はチームSやKⅡではなく、“スペシャルメンバー”16名によるライブ。W松井をはじめ、第4回選抜総選挙でランクインしたメンバーほぼ全員が出揃い、栄ファンも納得のラインアップとなった。
そして全体を代表して高柳明音が、「去年は名古屋のa-nationに参加させていただいたんですけど、今年はここ代々木第一体育館にやってきました!」と叫び、SKE48が全国区へと躍進していることを実感させた。そもそもこのMCを高柳が担当すること自体、彼女がSKE48のNo.3として着実に成長していることの証である。
大トリで締めた『SKE48』。上段左から金子栞、松本梨奈、秦佐和子、石田安奈、矢方美紀、古川愛李、須田亜香里、大矢真那、向田茉夏。中段左から阿比留李帆、矢神久美、木崎ゆりあ、木本花音。手前左から松井玲奈、松井珠理奈、、高柳明音。惜しむらくは、トリにもかかわらず持ち時間が他のグループと横並びで、曲数が少なかったこと。フェスにつきものの時間制限ではあるが、会場の多数派を占めていた栄ファンにとっては不完全燃焼に終わったようだ。
その代わりというわけでもないだろうが、最後にはアンコールとしてHKT48を従えての再登場。曲名の『手をつなぎながら』そのままに、SKEとHKTのメンバーがペアになって手をつないでのパフォーマンスだ。
このとき年少のHKT48のほうが、大きな動きを見せていたのが印象的だった。若さは未熟さであり、大胆さでもある。その向こう見ずな妹分たちをリードするかのように、安定したステージを見せるSKE48からは、もはや“派生グループ”という表現が似つかわしくない貫禄すら感じられた。
op映像 Overture
M1 アイシテラブル!
M2 ごめんね、SUMMER
M3 パレオはエメラルド
【アンコール】
EN1 手をつなぎながら (with HKT48)
祭りを終えて
全体を通して今回の IDOL NATION は、ファンにとっても出演したアイドルたちにとっても満足度の高いイベントとなったようだ。なにより度肝を抜かれる巨大ステージを観るだけでも、すごいイベントに来たという高揚感を味わえたに違いない。
また、メインステージのほかにも無料で観覧できるステージや、数多くの物販ブースが立ち並び、アイドルたちがブースに立ち寄ることもある。たとえば昼公演のチケットしか持っていないファンでも、一日中 a-nation musicweek の空気を楽しむことができるのだ。
a-nation といえば巨大スタジアム、という固定観念を打ち破り、お祭り感を前面に打ち出した今回の musicweek。ぜひ来年も開催してもらいたいものである。
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