「身を修め現場で戦う覚悟を作る」 うむ、実に良い。 まったくかくありたいと思う。 しかし、「自分の現場で戦え」「自分の現場を持て」などと繰り返して言われると、頭脳の中に菅原文太が現れて、「現場って何かね?」と問うてくる。 俺の内なる文太が問うてくる。 小林先生ならば、仕事場の机の上が現場であり、ペンを握り、原稿を描き上げることが現場で戦うことなのだろう。 刑事ドラマならば事件現場がそれであり、事件は会議室では起きていないのだろう。 ならば現場とは職場と同義であるのだろうか。 わからない。 俺の内なる文太にはわからない。 だから問う。 「現場って何かね」と。 俺の妻は深夜のファミレスで働いているのだが、それはそれはブラックな労働環境なのである。 彼女から聞かされるその現場はまるで19世紀アメリカ南部の奴隷制度が顕現しているかのようでハラワタが煮えくりかえって、臓腑があたかも煮込みラーメンと化す。 それでも彼女はそこが自分の現場であるのだからと死に物狂いで働く。 身も心もボロボロになりながらやり抜く彼女は「現場で戦う」立派な人なのだろうか。 彼女は嘆く。 私は悪に加担しているだけ。 私が頑張れば頑張るほど、ブラック企業が潤うんだ。 私が頑張ることが前例となって、そのあとに続く従業員もまた同じようにブラックな労働を強要されてしまう。 私が10年以上ブラック企業で働き続けたことは世の中にとってマイナスでしかない。 彼女の体は、なにより心はもう限界である。 俺は言う。 「そんな現場、さっさと辞めちまえ!」と。 現場を捨てろと言う俺はおそらくは正しくはないのだろう。 正しい人ならば内部告発とかユニオンとかに訴えかけて、労働環境を改善させて働き続けるべきで、それこそが社会正義であり、世のため人のためになる公共心あふるる善人の振る舞いであろう。 しかし、精神が壊れかけのレイディオ状態の彼女になお戦えと、おら言えねぇ。 現場から逃げろ、捨てろと言っちまう。 眩しいほど青い空の真下で、俺の内なる菅原文太が問いつめる。 「現場って何かね?」 エスケープせずに、強いストレスを感じながらも疑問に思ったことを覚悟を持って率直に問う。 そもそも現場ってなんぞ? よしりんに、みなさまに、そして自らにも問う。
常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!
昭和28年福岡生まれ。昭和51年ギャグ漫画家としてデビュー。代表作に『東大一直線』『おぼっちゃまくん』など多数。『ゴーマニズム宣言』では『戦争論』『天皇論』『コロナ論』等で話題を巻き起こし、日本人の常識を問い続ける。言論イベント「ゴー宣道場」主宰。現在は「週刊SPA!」で『ゴーマニズム宣言』連載、「FLASH」で『よしりん辻説法』を月1連載。他に「週刊エコノミスト」で巻頭言【闘論席】を月1担当。
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「身を修め現場で戦う覚悟を作る」
うむ、実に良い。
まったくかくありたいと思う。
しかし、「自分の現場で戦え」「自分の現場を持て」などと繰り返して言われると、頭脳の中に菅原文太が現れて、「現場って何かね?」と問うてくる。
俺の内なる文太が問うてくる。
小林先生ならば、仕事場の机の上が現場であり、ペンを握り、原稿を描き上げることが現場で戦うことなのだろう。
刑事ドラマならば事件現場がそれであり、事件は会議室では起きていないのだろう。
ならば現場とは職場と同義であるのだろうか。
わからない。
俺の内なる文太にはわからない。
だから問う。
「現場って何かね」と。
俺の妻は深夜のファミレスで働いているのだが、それはそれはブラックな労働環境なのである。
彼女から聞かされるその現場はまるで19世紀アメリカ南部の奴隷制度が顕現しているかのようでハラワタが煮えくりかえって、臓腑があたかも煮込みラーメンと化す。
それでも彼女はそこが自分の現場であるのだからと死に物狂いで働く。
身も心もボロボロになりながらやり抜く彼女は「現場で戦う」立派な人なのだろうか。
彼女は嘆く。
私は悪に加担しているだけ。
私が頑張れば頑張るほど、ブラック企業が潤うんだ。
私が頑張ることが前例となって、そのあとに続く従業員もまた同じようにブラックな労働を強要されてしまう。
私が10年以上ブラック企業で働き続けたことは世の中にとってマイナスでしかない。
彼女の体は、なにより心はもう限界である。
俺は言う。
「そんな現場、さっさと辞めちまえ!」と。
現場を捨てろと言う俺はおそらくは正しくはないのだろう。
正しい人ならば内部告発とかユニオンとかに訴えかけて、労働環境を改善させて働き続けるべきで、それこそが社会正義であり、世のため人のためになる公共心あふるる善人の振る舞いであろう。
しかし、精神が壊れかけのレイディオ状態の彼女になお戦えと、おら言えねぇ。
現場から逃げろ、捨てろと言っちまう。
眩しいほど青い空の真下で、俺の内なる菅原文太が問いつめる。
「現場って何かね?」
エスケープせずに、強いストレスを感じながらも疑問に思ったことを覚悟を持って率直に問う。
そもそも現場ってなんぞ?
よしりんに、みなさまに、そして自らにも問う。