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 ご返信をいただきありがとうございます。

 先日、長崎旅行の道中で原爆資料館に立ち寄ったのですが、その一連展示の末部に「世界史の流れと並行しながら原爆投下までの経緯を一覧する」趣旨のオブジェがあり、おしなべて真面目な顔で写っている関連人物のなかで、なぜかチャーチルの写真だけが例のVサイン付のニッコリ顔で(アインシュタインですらあの有名な舌出し顔ではなかったのに)、原爆投下による惨事を理解しているはず(というか、そのための施設に居るのですから)の自分でさえ「この、この野郎」と慄えながらも自然と笑ってしまうのを拒絶できませんでした。チャーチルの、単なる戦時の躁暴とも違う・ブリット政治家の常道からも外れている「あの感じ」は、21世紀にいたるまで解離されるべきではないのにされてきた何かだと思います。「あんな政治家いていいのかよ」という意味でチャーチルはトランプと同じくらいのブツだったのではないかという盲点を、長崎の原爆資料館における顔写真のチョイスは図らずも射抜いているように思われました。

 そして、デュア・リパとガル・ガドット双方への評(それにまつわる「郷愁」)を拝読して、かつて菊地さんがピナ・バウシュの訃報によせて「彼女も大衆食堂の家に生まれました。カフェ・ミュラーの舞台裏で何が起こっていたか、ワタシはすべて知っています」というような弔辞を述べておられたのを思い出しました。菊地さんによるアルモドバル評と同じく、あの弔辞はシス男性が女性およびセクシュアルマイノリティの陣営とごく自然に連帯していた、本当に美しい文章のうちのひとつだったと思い出しますが、そのような十分に政治的ですらある連帯も「郷愁」の成せる業でしょう。そして〈今・ここ〉の急襲は、意識的な言語化を圧倒するほどの力である「郷愁」を冷めさせてしまうものなのかもしれません。

 外を出ると蚊が寄ってくるようになったので、今年も既に夏が近いですね。ピナ・バウシュとMJが亡くなったのも梅雨明けごろでしたが、今年も大変な夏になることが確定しているように思います。インク不足によって菓子袋のパッケージから色が消える夏、とか(笑) 考えるだけでワクワクしますね。

No.5 1ヶ月前
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  • <菊地成孔のアンダーグラウンドX(26/5/12=No.36)>

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