Dr.U のコメント

うさぎです

 うーん。
 小林先生と高森先生は、「元明→元正は女系継承であり、元正は女系天皇である」という主張を撤回するわけにはいかないのですね。
 ならば、どのようなロジックを組めばいいのか…。どうすれば、国民大衆に簡単に理解してもらえて、しかも、つけいる隙のないような理論武装ができるだろうか…。
 ひとまず、うさぎの小さな脳味噌をフル活動させて、次のようなロジックを組んでみました。

 まず、これまで男系固執派は、次のような主張をしてきました。

「これまで天皇になった人は、みんな父子関係のみをさかのぼって神武天皇にたどりつく人たちだけなんだよ、それが神武から今まで続いたんだよ、そうやって長く続いてきたものだから簡単に変えちゃいけない。」

 こういった主張に対して、まず私たちがやらなければならないことは、従来の男系固執派の「男系・女系」の定義と、自分たちの定義とが根本的に違うことを、はっきりと表明することです。たとえば、次のように。

「私たちの用いる『男系』『女系』という言葉の意味は、男系固執派の人たちのそれとは異なっています。男系固執派の定義では、『男系』の人間とは《自らの血筋を父子関係のみを遡って神武天皇にたどりつく男性・女性》のことを指します。そして、このような男性・女性が皇位につくことを『男系継承』と呼んでいます。同様に、『女系』の人間とは《自らの血筋を母子関係のみを遡って神武天皇にたどりつく男性・女性》のことを指します。そして、このような男性・女性が皇位につくことを『女系継承』と呼んでいます。」

「一方、私たちの定義では、皇位の《父子間継承》のことを『男系継承』、《母子間継承》のことを『女系継承』と呼びます。ですから、男系固執派の議論では定義上『男系継承』となっていた『元明天皇→元正天皇』の皇位継承は、私たちの議論においては定義上『女系継承』となります。こうして、私たちの目標は、女性天皇を公認するだけでなく、この母子間継承という意味での『女系継承』も公認して、女性天皇の子供にも継承権を与えることです。」

 このように、あらかじめ定義の違いを表明しておけば、国民大衆は、それぞれ異なった定義によってなされる主張のあいだで、混乱しないですむように思います。

 なお、このように父子間継承を男系継承、母子間継承を女系継承、と定義する場合、皇位継承が天皇の子供以外の皇族(兄弟姉妹・従妹・叔父と甥・遠く離れた傍系)になされるとき、それをどう呼べばいいのかという問題が生じます。結論としては、そのようなケースを無理やり「男系」か「女系」のカテゴリーに入れるべきではありません。

 高森先生は、先のトッキーさんのブログの中で、「元正天皇の次に即位した(元正の甥の)聖武天皇は文武天皇の男子なので男→男で男系継承」である、と説明されていました。しかし、「元正(おば)→聖武(おい)」という、明らかに父子間継承ではない継承が、どうしてここで男系継承とされるのか、戸惑いを感じるのは私だけではないはずです。

 ここで、次のようなケースを考えてみて下さい。未来の仮定の話ですが、愛子様が天皇に即位したとします。そして愛子天皇の長男(A)がその次の天皇になったとします。そして諸事情から、次の天皇には愛子天皇の次男(B)の娘(C)が即位したとします〔次男(B)は即位せず〕。さて、この場合、(C)の即位は男系継承なのでしょうか、それとも女系継承なのでしょうか?  
 上の高森先生の「元正→聖武」の説明から推測すると、「新天皇の(C)は愛子天皇(♀)の孫なので女→女で女系継承」ということになるのでしょうか。そうだとすれば、なんだか分かりにくい仕組みだとは思いませんか? ここでは、(C)は父親(B)を介して愛子天皇につながっているのに、その即位は「女系継承」ということになるのです。ここでの「女系」の意味は、もはや、母子間の継承を「女系」継承とすると定義したときの「女系」の意味をから逸脱しています。

 以上のような分かりにくさ、混乱を避ける方法は、一つしかないように思われます。それは、父子間継承と母子間継承以外の継承のケースについては、はじめから「男系」「女系」の概念の適用範囲外とすることです。これ認識しておくことは、大事なことだと思います。

 もう一点、注意しておかなければならないことがあります。高森先生はブログ(「皇族同士の婚姻が可能だったのは双系制が基底にあったから」)で、ある天皇に関して、その父も母も生まれながらの皇族である場合には、その天皇は「双系」の天皇であると、義江明子さんの「双系制」の定義を紹介しながら論じられています。
 もし小林先生が、この高森先生の意味で「双系」という言葉を用いるつもりであれば、今後は「女性天皇と双系継承の公認を求める」と主張することは不可となります。なぜなら、言うまでもなく、現在は皇族同士の結婚(近親婚)は事実上、不可だからです。「双系の天皇」を求めるというのは、たとえば、自分は愛子様のお子様と悠仁様のお子様が結婚できるような制度の公認を求める、と言っていることになります。

 以上のことを、まとめると、

 もしも、「元明→元正」の継承例は「女系」の継承である、ということで押し通したいのなら、

① まず男系固執派の「男系継承」の定義を簡単に説明し、その定義においては「元明→元正」は「女系継承」であり、また「万世一系」の主張も、つじつまだけはあっていることを認める。

⓶ その上で、自分たちの「男系」「女系」定義は、男系固執派のものとは全く違うこと、すなわち「男系」の継承とは「父子間継承」のこと、「女系」の継承とは「母子間継承」のことであると、明確に示し、この定義に基づいて「元明→元正」を「女系」の継承、元正天皇は「女系天皇」であると、主張する。

③ そして、この意味での「男系」「女系」概念は、あくまでも皇位継承が父子間か母子間で行われたときにのみ用いられるものであり、それ以外の継承パターン(兄弟間、従妹間、傍系移行など)に関しては適用外であると、明確にことわっておく。

④ さらに、歴史上の天皇に関しては、男系天皇も女系天皇(元正天皇)も双系天皇(舒明天皇など)も存在したが、現在は皇族の近親婚は不可能なので、当然のことだが自分たちは「双系継承」「双系天皇」は求めたりはしない、ということをはっきり示す。

⑤ 自分たちが求めるのは、次のことであると明言する。「上皇陛下・上皇后陛下の子孫であれば男女を問わず皇位継承権を与えられるように法律を改正すること(なお候補者が複数の場合には、長子優先・直系優先)。」 スローガン的には、「男性天皇・男系天皇だけでなく、女性天皇・女系天皇も公認すべき!」というものになる。


🐇🐇🐇…

 最後に、男系固執派の屁理屈に対する対処の仕方ですが、次の点を強調する。

① 「万世一系」説は皇統図を見る限りではつじつまはあっているが、だからといって日本の歴史において、女帝が強い政治的リーダーシップを持たなかったわけではないし、皇位継承において母方の血筋が軽視されていたという事実もない。
 → 既に義江明子さんなど、多くの歴史家によってこのことは論証されている。

⓶ 上皇后美智子様がおっしゃっていたように、伝統には「心」と「型」の部分があり、大事なのは「心」を伝える事であって、「型」に拘泥することではない。明治以前と、現代では、社会の在り方は大きく変わっているのだから、皇位継承の在り方も、それに応じて変化するのが自然であり、また必要なことである。



🐇🐇🐇…

 ふう。いま、考えられるのは、これくらいです。
 
 うさぎでした

No.87 24ヶ月前

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