Dr.U のコメント


うさぎです

 トッキーさんが、ブログで以下のように記されていました。(以下抜粋)

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 高森氏は、ゴー宣の以下の部分の説明について、「男系継承」への誤解があるように思うと指摘されています。

それによると、
1・男系継承とは、皇位継承者の資格を皇統に属する男系の人物に限定すること。
2・女性天皇でも、男→男→男→という形で皇室の血統を受け継いでいれば「男系継承」。
  歴史上の女性天皇の多くはこのケース。
3・女性天皇の血統を受け継ぐ人物Aが皇位を継承すれば、その人物の性別に関係なく女系継承。
  元明天皇→元正天皇がこのケース。
4・Aが男性であれば、その子Βの継承は厳密な概念規定では男系継承。
  Αが女性で、その子Вが継承すれば女系継承となる。
  元正天皇は独身なのでそうなっていない。
  次に即位した聖武天皇は文武天皇の男子なので男→男で男系継承。
ということだそうです。

 つまり、歴代天皇のうち「元明天皇→元正天皇」のみが女系継承であり、この一例以外は全て男系継承だったということになるわけです。
 ということは、やはりゴー宣で描いているとおり、「一代でも女が挟まったら破綻」であって、男系派の言っている「万世一系の男系」とかいうのは破綻しているということになるわけで、その大筋の部分では間違っていないという理解でよろしいでしょうか?
 あくまでも問題は、大筋の部分で間違っていないかどうかです。

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 以上のトッキーさんの高森先生への問いかけに関して、私が考えたことを以下に記させていただきます。

 男系固執派の定義によれば、ある人物(男女を問わない)が自らの血筋を、父子関係のみをさかのぼって特定祖先(皇祖・開祖など)にたどりつく場合、その人物は「男系」の男子、あるいは「男系」の女子ということになります。
 逆に、母子関係のみをさかのぼって特定祖先に至るなら、その人物は「女系」の男子・女子ということになります。
 男系固執派は、歴代天皇はいずれも、こうした意味での「男系」の男子・女子であったという意味で、その継承は「例外なく男系で継承されてきた」と主張します。
 そして問題の「元明天皇→元正天皇」の継承についてですが、この定義に基づく限りでは、元正天皇は父・草壁皇子を経由して祖父・天武天皇につながる「男系」の女子であるため、「例外なく男系で継承されてきた」という主張が、決定的に破綻しているということはありません。(あくまでも定義上の話です。)

 一方、高森先生の定義によると、新たに即位した天皇に関して、この人物の父や祖父(や、さらに時をさかのぼる祖先)が天皇であった場合、その継承は「男系」継承であるとされます。逆に、この人物の母や祖母(や、さらなる祖先)が天皇であった場合、その継承は「女系」継承となります。
 たとえば、もしも将来、秋篠宮さまが即位されることなく悠仁さまが新天皇に即位なさった場合、悠仁様はその祖父が天皇(平成天皇)であったが故に、その継承は「男系」の継承ということになります。
 この定義に基づくと、「元明天皇→元正天皇」の継承は、まず、元正天皇の母親は元明天皇なので、その継承は「女系」の継承であったということになります。しかしさらに(!)、元正天皇の祖父は天武天皇なので、その継承はまた「男系」の継承でもあったということになります。(定義上、そうなります。)

 結論として、男系固執派の定義においても、高森先生の定義においても、「元明→元正」は「男系」の継承であったと言い得る、ということになります。(ただし、高森先生の定義では「男系かつ女系」の継承であったということになります。)

🐇🐇🐇…

 もう一点だけ。トッキーさんは同じブログで次のようなことも記されていました。

「そもそも、皇統が「男系」だの「女系」だのという意識は前近代には存在しなかったはずですし、ましてや「女性でも男系女子なら男系継承」という、複雑で特殊な「男系」概念は、明治以降の日本の皇統男系固執派の世界にしか存在しないのではないでしょうか?」

 この問いかけについてですが、「男系女子なら男系継承」のような考えは、前近代の人は意識していなかったのではないかというご指摘は、まったくその通りだろうと思います。そういうことを言い出したのは、おそらくは江戸時代の儒家神道の論者たちのようです。
 ただし、「男系女子」のような概念が意識されていなかった、そのような言葉自体が存在しなかったということは、必ずしも、古い時代に「男系継承という皇位継承に関するルール・システム」が機能していなかった、発動していなかった、ということにはなりません。
 たとえば、日本語には「文法」というものがあり、それを説明する動詞とか、助動詞とか、あるいは時制や態に関する、諸々の概念が存在します。これらの概念は学問が発達する近代以前には存在していませんでしたが、昔の人々は、この複雑な文法の仕組みを「意識」することなく、しかし、文法の規則に従って日本語を使用していました。
 男系固執派の「男系継承」の議論についても、同じことが言えます。昔の人々は、このシステムを明確に意識化してはいなかった、しかし、実際に皇位継承の場面においては、このシステムは機能していた、という言い方は、十分可能です。
 現代人の視点から、分析的に、日本の皇位継承システムを考察してみたところ、そこに「男系継承」のシステムが見いだされた、それゆえに、このシステムをこれからも保持していくべきだ、という主張することは、不可能ではないでしょう。

🐇🐇🐇…

 以上、私が考えたことを述べさせていただきました。
 また、やギさんに怒られそうです。もしかしたら、私は、空気が読めない人間かも知れません。
 つじつまの合わないことを、なあなあで、あいまいに放っておくのは、いやです。
 
*なお、高森先生の最新のブログ「古来例外なく男系継承が維持されてきたとは言えない実例検証」ですが、そこで論じられている内容からして、タイトルは「古来例外なく男系継承が維持されてきたとは言えないことはないが、母方の血筋だってかなり重視されていたことが分かる実例検証」というのが、適切ではないでしょうか。

 うさぎより

No.38 24ヶ月前

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