santafede33 のコメント

先日、実家に帰省していた妻が帰ってきて、懐かしい人に会ったと話してくれました。

妻の地元は、メキシコ内陸部の地方都市で、魔都DFからは大体4時間ぐらい車で行ったところにあります。街には、汚染と石油精製のコンビ、日本企業を一振り、新参者のナルコたちがいます。まあ、一般的な、当国の地方都市です。

妻の同級生に、オリバーという名の青年がいました。彼は、母親がおらず、父親と兄と二人で暮らしていました。兄は、天才的な頭脳の持ち主で、数学オリンピックに州で初めて出場を決めたとのことで、非常に有名でした。オリバーは、とても大きな頭と、大きな体を持ち、真っ白な肌で、友達は一人もいませんでした。彼は、突然、機関銃で友人達を撃ち殺す真似をしていたようです。(その頃は、まだ街には実際に機関銃をぶっ放す人達はいませんでした。当国は、昔から、治安が悪いわけではないのです)そして、ロシア語を話し、赤軍がいかに偉大だったのか、スペイン語−ロシア語の二次元通訳で友人達に語っていました。勿論、友人でオリバーのことを理解出来る、或いは、理解しようとする人はいませんでした。妻は、ただ、彼を尊敬の眼差しで見ていたようです。

そして、オリバーは、街に残って、彼なりの考えを持って、エンパナーダとチーズパイを売る仕事を始めました。それらを持って、バーに行くわけです。或いは、街の人の家を回って売るそうです。妻の実家にも行ったことがあるようです。

今回の帰省で、妻は、オリバーに久々に会いました。突如、妻が旧友と飲んでいた時に、フラリと現れたそうです。いつものチーズパイとエンパナーダを持って。そこで、彼は今回の件に関して、語り始めました。現在のウクライナとロシアに深く失望しているようでした。理由は、何度聞いても、よく分かりませんでした。ですが、彼が、とても深く失望していることだけは伝わってきたそうです。怒りでもなく、悲しみでもなく。

妻の旧友の夫が合流するとオリバーはロシア語で話しかけました。旧友の夫は困っていました。彼のことなんて知らないし、ロシア語はもっと分からない。僕らは、スペイン語で話しているのですから。

妻は、オリバーに聞きました。

ねえ、オリバーさっきなんて言ったの?
お前の夫は、日本人だったな。
あ、前に一回会ったよね。
どっちについてるんだ?
ウクライナ側じゃない、多分、日本は。
納得してるのか?
納得?誰が?
いい男だな。

旧友が言いました。
そんなヤツに話しちゃダメだよ、頭おかしーんだから、ほっときなさいよ。

ねえ、オリバー、あんた今何してんの?
俺は未亡ロシア人(Ruso viudo)なんだ。
え?彼女でもいたの?
俺は、Viudoなんだ。
どういうこと?

ちなみに、妻が最後に僕に言いいました。Oliver no se puede localizar(オリバーは、どこにも見当たらない)

昔はインフォナビ(集合住宅)にいたらしいんですが、今は、どこにいるのか分からないらしいです。そして、時折、フラッと現れるらしいです。
エンパナーダとチーズパイを持って。

この話は、多分、ここにしか書けないんで、ここに置いておきます。妻の話を聞きながら、そう思いました。

3月も終わりに近づき、人生の変わり目を感じます。音楽が、頭の中に鳴っているのですね。いいですね。こちらは春通り越して、夏が来てます。

No.9 32ヶ月前

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