Doc のコメント

公表された32都市の4月の死亡者数が例年よりも(年齢補正しても)6%程度超過しているようです。コロナの死亡確認者数は0.5%程度、インフルエンザ等は減っており、自殺者も減っている(厚労省発表)とのことですので、この超過死亡は自粛の影響(経済的困窮、医療離れ等)によるものだと思われます。この数字を見ても「命VS経済」という単純な問題ではないというのは明らかだと思います(そもそも自粛は先延ばしなので被害を減らせる保証はないわけですし)。
https://twitter.com/fusu3/status/1261221215525433344

よしりん先生のブログでも触れられてましたが、500サンプルの抗体検査は東京で0.6%程度、バックグラウンド(擬陽性)が0.4%程度とのことで、差し引くと0.2%(1サンプル)程度になります。先月半ばの東京の陽性確認者数は3千人程度で、0.02%程度ですので、単純計算では暗数が10倍程度ということになりますが、いかんせんサンプル数が少ないため、まだ何とも言えないという結果です。ただ、少なくとも暗数が100倍以上(把握されていない死亡者がたくさんいる)というような確率は低そうです。
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3979923.htm

さて、先日、西浦氏の講演があり、彼の思考が少し理解できたような気がするので、簡単に報告します。
https://live2.nicovideo.jp/watch/lv325833316

彼の計算に必要不可欠な変数の一つに発病間隔というものがあります。これは感染者が発病してから2次感染者が発病するまでの平均時間を表す量で、感染のサイクルの時間間隔を決める重要な量です。

今回のウイルスについては発病間隔はよく分かっておらず、SARSが8日程度であることから、当初は同程度であろうと考えられていたのですが、これを4.8日(標準偏差2.3日)であると推定したのが西浦氏であり、彼はこの成果に基づいて計算を行っているということが講演で明らかになりました。

ただ、その論文を確認したところ、データ数が28ペア(その内、結果に使用しているのは18ペア)であり(しかも標準偏差2.3日というのは小さすぎる)、本当に信用できるのかは分からないのですが、当人は自分の成果であるため、それに基づいて研究を進めているようです。また、日本のデータを追加した研究は、やりたいけど時間が取れないとのことでした。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7128842/

発病間隔が分かると、感染してから時間t後に人にうつす平均確率R×f(t)の概形が推定できます(全ての時間で積算すると再生産数Rになる)。

西浦氏の数値(発病間隔4.8日、ただし、標準偏差は2.3日だと小さすぎておかしなことになるので、2.8日に変更、当人もそのまま使っているのか疑問)を用いて、f(t)の概形を推定すると、f(t)のピークの位置(≒世代時間)は4日程度、標準偏差(広がり)は2日弱程度になります。

そうすると、潜伏期間が平均5日程度ですので、この結果は感染の多くが発病前・発病直後に起こるということを意味しており、発病後の検査・隔離は感染抑制の立場からはあまり意味がないということを示唆しています。さらに、標準偏差が2日弱程度であることを勘案すると、発病後4日くらい経てば、その後の感染は少数であるため、隔離する必要すらない(!!)ということになります。

おそらく西浦氏(と専門家会議)は明言はしないものの、内心ではそういう認識があるのだと思います。実際に、講演でも、SARSとの違いとして、遠回しな表現で(かつ自分の功績として)隔離の有効性の話に触れていますし、検査・隔離に否定的なのも、stay homeの方針も言動が整合しています。

ちなみに、感染してから隔離/治療/死亡するまでの平均時間Tは、この標準偏差から見積もることができて、この場合は6日弱程度(通常の10日程度の推定に比べて小さい)になります。実は、以前の西浦氏のシミュレーションで、Tが5日になっているものがあり、様々な人がおかしいのではないかと指摘したことがあったのですが(私自身もおかしいと思ってました)、これは彼の研究に基づく確信的な設定であったようです。また、彼の実効再生産数の推定が他の人のものよりも小さく出ているのも、これが理由です。

この西浦氏の発病間隔の推定の話は、専門家会議の報告では触れられていないため、この問題に関心のある(他分野の)研究者達にはほとんど知られておらず、私も今回の講演を聞くまでは知りませんでした。この話が知られれば、賛否はともかく、議論が大きく変わるのではないかと思います。

それから、検査数の偏りによるデータの不純性の問題は、やはり頭を悩ませているようで、陽性率による補正もあまり上手くいっていない(故に実態把握のための検査数の増強を望んでいる)ようです。専門家会議の報告に使われていないのも、それが理由だそうです。

以上、テクニカルな話で、興味がない方はすみません。
本日の生放送も楽しみにしております。

No.211 56ヶ月前

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