『オクテ女子のための恋愛基礎講座』発売にあわせて、社会学研究者でBL研究家の金田淳子さんと、「オクテ男女の恋愛と結婚と性」について語り合いました。

『オクテ女子のための恋愛基礎講座』(幻冬舎文庫583円)

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金田淳子/
社会学研究者。BL・やおい・同人誌研究家。
東京大学法学部と文学部を卒業後、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。
文芸批評誌『ユリイカ』のボーイズラブ特集や『美術手帖 特集:ボーイズラブ』に企画段階から協力。
共著に『オトコのカラダはキモチいい』 『文化の社会学』等。ホウドウキョク内のフリーダムな番組『真夜中のニャーゴ』金曜23時05~に出演中。

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アル:
(前回の続き)金田さんがパートナーに求める条件は「アナルに水晶玉を入れない人」、つまり「科学的思考ができる人」というお話でしたが、残りの2つの条件は何ですか?

金田:私、たいした儲けもないんですけど、「仕事の邪魔をされたくない」というのはありますね。

アル:BLの書籍を捨てろとか言わない人ですね。

金田:そう。でも私があまりにも片づけない人だから、仕事を邪魔しないというのは、他の人が考えるより、相当ものすごいエベレスト的な条件です。

アル:それこそ山が積み重なっているんですよね?腐女子はBLタワーみたいなのがありますよね、家に。

金田:お金さえあればマンションの隣の部屋を買ったりして、そこを書架にすればいいんですけど、それができないから、タワマンならぬ、タワ本になるわけじゃないですか。

アル:女友達は実家暮らしなんですが、タワーを増築していくうちに、巨大な建造物になったらしく。でも、親はそのBLタワーを見て見ぬフリをするって。見て見ぬフリをできる親がすげーなって。

金田:うちは定期的に苦情を入れられますが、ギリでやり過ごしています。しかし仮にうちでのっぴきならない事態となり、母が私を殺したとしても、情状酌量で許してあげてほしいです。

アル:残りの1つは何ですか?

金田:すごく真面目な話になりますけど、 他人の身になって考えられる人。たとえばもし本人がお金持ちでも「自分がホームレスだったら」とか考えられる人。

アル:私もそこはすごく大事で、「自分より弱いものに優しいこと」は譲れない条件でした。

金田:私の場合、自分もいつホームレスになるかわからないぐらいに思ってるから。

アル:見た目とかはどうですか?

金田:見た目はね、生理的嫌悪感が発する感じじゃなければ大丈夫。そのへんは、美醜よりも目つきと口のゆがみとかが生理的に気になるほうで、苦手な美形タレントさんも数名います。だから容姿については、自分はストライクゾーンが広い方だと思っています。チビやハゲが好きっていうのもあるし。
ただ、ひとつだけ、どんな見た目が好みの人でも、口が臭いのはやめてほしいと思っている。

アル:それはもう本当に苦しいですからね。息ができないし。

金田:口が臭い人と一緒に、話を長いことするのが辛いんです。論理とか知性とか、そういうこと言っている場合じゃないんですよ、申し訳ないけど。
だから、もし病気でそうなっているんだったら、治してほしい。治せない病気でそうなっているなら、もうしょうがないけど。

ただ、自分自身も気づいてないだけで、口臭があるかもしれなくて、周囲の人には「私に口臭があったらぜひ何らかの形で指摘してください!」って頼んでいます。

アル:口が臭くなければ、顔の造作はどうでもいいですか?

金田:そもそも私、三次元の人の顔を覚えるのがすごい苦手で。二次元は最適化されているから覚えれるんですよ。記号化されているし、髪型変わったりしないし。

アル:三次元は覚えれないからどうでもいい、みたいな(笑)

金田:そうですね。だからすごい失礼な話なんですけども、アルテイシアさんに半年後とかにお会いしても、わからない可能性があります。髪型とか変わっていると、かなりキツイ。とくに女性は、髪型とメイクと服装で全く別の人になってしまいますから。

アル:パートナーの髪型は辮髪(べんぱつ)とかでもいいんですか?

金田:辮髪、カッコいいじゃん!ラーメンマンが初恋だった人、多いんですよ。それに私は「月代」(戦国時代発祥の、頭頂部をわざわざ剃った武士のスタイル)すごい好きですし。

アル:私もね、辮髪は好きなんですよ。戦闘力が高そうな感じがしますから。

金田:そういえば、アルテイシアさんがパートナーに求める条件の1位が「強い」っていうのが珍しいし、すごいなと思いました。強さっていうのは、物理的な強さなんですよね?

アル:どっちも必要ですね。「心身ともに強い」というのが大事。

金田:ああ!心もね!それは重要だな。

アル:単なる男友達であれば、戦闘力が低くてもいいんですよ。プーアルとかウーロン並みでも全然いい。ただ“男”としては好きになれないんですよね…。
物心ついた頃から少女漫画よりも『北斗の拳』や『キン肉マン』に夢中だったし、ラオウやアシュラマンに萌えていたから。

金田:子どもの頃から一貫してるんですね。

アル:岡田育さんは共著『オトコのカラダはキモチいい』で「物心ついた頃からケンカが弱そうで美しい男性キャラが好きだった」と仰ってますよね。

金田:そうそう、岡田さんは、特に二次元だと中性的な男性が好きらしいですね。メガネ男子とかも。

アル:そういう意味で、萌えの源流を辿るのはいいかもなって。

金田:それはそうですね。新刊の第4章の『好きにならない!』でも『とはいえ、ときめきたい女子に5つの提案』として「萌えで探す」「萌えに改造する」と挙げてますよね。

…ただね、三次元を好きになれる人はまだしも、二次元オンリーの人で、かつ、現実には居そうにない耽美的なものが好きな人の場合、なかなか難しいと思いますね。

アル:ヴァンパイアとか好きでも、あんまりいないし。

金田:ジルベールみたいな人、いないしね。あんなフリチンでジルベールブラウス着て歩いていたら、通報されますよ。
でも、この『好きになれない!』という第4章は、私のために書かれていると思ったんです。

アル:そうなんですか?

金田:私も友達としては好きになりますよ。女性と同じように男性の友達も好きになるんですけど、何かしたいかと言われると、何ひとつとして興味が沸かない、みたいな感じになるので。

アル:何ひとつとして。

金田:『ときめきたい女子に5つの提案』として「キスしてみる」もありますよね?キスすることでスイッチが入って、相手を異性として意識するパターンも多いと。

アル:逆にキスしてみて「無理!」と思ったら無理だし、話が早いですよね。

金田:私はそもそもキスが嫌いなんですよ。

アル:口が臭くなくても?

金田:口が臭くなくても。主な理由は、キスの最中にヒマだからです。

アル:ヒマ?!ちょっと意味がわからないんですけど。

金田:エヘヘヘ、ごめんなさい。なんだろうな。舌と舌がからみあってても、触感として全く気持ちよいと思わないんです。
それと、キスが嫌いなのは、唾液のにおいが嫌いっていうのもあるんです。口が臭くなくても、何となく唾液のにおいはしますよね。唾液って、空気に触れると臭くなるから。

アル:唾液が嫌いな人は、ディープキスが苦手な人が多いですよね。するとセックスもキツイですよね。セックスなんて唾液だらけになるじゃないですか、どこもかしこも。

金田:そうなんですよ。軽いキスから始まっても、だんだんノリにノッてくるとディープキスになるじゃないですか。そしたら唾液はもちろんダラダラ出るし、私としてはそのあたりで「これ、楽しいか?」っていう。
「キスをすることにより、女性は(男性も)だんだんと興奮し濡れそぼってくる」みたいな手順が書いてある恋愛小説とかでも「いや…ムリ」って思う、自分的には。

アル:BLで男たちがジュッポジュッポやってるのはいいんですか?

金田:それは、私の中ではフローラルな香り。でも「ああディープキス気持ちよすぎるよぉ~」とか言っていると「何がだ?」って思うのね。

私、乳首が気持ちいいのと、クリトリスを中心にマンコが気持ちいいのはわかるよ。アナルもなんかわかるよ。ちんちんも、クリトリスだと思えばわかる。が、ディープキスが気持ちいいのだけは、個人的に全然わからないんです。

アル:ほー!

金田:気持ちいいですか?

アル:うん!私はね、キスは3時間ぶっ通しでもできます。

金田:えー!すごい!飽きないって感じ?

アル:飽きない、飽きない。

金田:唾液のにおい、気になりませんか?

アル:それで言うと、フェラとかの方がよっぽど唾液のにおいが。今自分が舐めている物体が目の前にあるので。

金田:ただね、私としてはフェラの方が、まあちんちんはちゃんと洗ってある前提で、唾液がひとり分なために助かってる感じ。

アル:じゃあクンニの後にキスとか求められたら、もう愛液はあるわ、唾液はあるわ、液だらけですごく苦痛なんですかね?

金田:クンニの後のキスは、まあ普通のキスと同じぐらいに感じてますね。私、自分のマンコの臭いは嫌いじゃないんですよ。

アル:つまり、己の愛液はいいんですか?

金田:己の愛液はむしろ、週に1度くらい舐めてチェックしていますね。

アル:舐めてチェック?麻薬課の刑事が「コカインか(ぺろり)」ってやるみたいに?

金田:自分の体から出ているものについて、ウンコ以外は試しておかなければという、使命感みたいなものがあるんです。

アル:ああ…でもそれは大事なことかもしれません。昔、彼氏とタイ旅行に行った時、セックスをしていたら「あれ、ナンプラーどっかにこぼれてない?」って。私の股からナンプラーが出てたんですよ。

金田:え?どういう意味?どういう意味?

アル:毎日タイ料理を食べ続けていたら、愛液がナンプラー化してたんです。インド人とか汗がスパイス臭いって言うじゃないですか?やっぱり食べ物が人間を作るんだなって、食育に想いを馳せました(笑)

金田:じゃあ愛液をそのまま料理に使えるじゃないですか。お得じゃないですか!

アル:そうそう(笑)、便利な感じになってたんです。まあ、通常は磯の香っぽいですよね。

金田:磯ではあると思いますね。そういうわけで、たぶんキスするくらいならクンニをします。

アル:します!レズビアンプレイとしてクンニを?

金田:それくらい、キスは好きじゃないので。キスされたら「そうか、キミは、こんなに唾液くさい、ただただヒマなキスするほど私のことを好きなのか…の確認はわかったから、離れろ!」と思う。

アル:それは好きじゃないというより、積極的に嫌いですよね。

金田:うん。

アル:たしかに、それだと恋愛が生まれにくいですね。友達以上恋人未満的な関係でも、キスがキッカケになることは多いから。多少は気になる相手にキスされたら、やっぱりジュンとなりますし。

金田:ジュンってなるかぁ…。

アル:私はなる。

金田:ジュンってならないんだよな…。

アル:そこは大きいですよね。個人差はありますが、女性の場合、キスやセックスをすることで「性欲のスイッチ」が入るというか。「セックスするから、セックスしたくなる」みたいな。

金田:うんうん。『相手に欲情されて求められることで濡れる』と書かれてますよね。

アル:でも、そもそも性欲がない人の場合、そのスイッチも入らない。

金田:私とか若い頃はまだ性欲があったんですけど、最近はもうガタッと性欲が落ちて、あんなに好きだったオナニーすらも半年に一度ぐらいになりました。

アル:「バイブを持ってる女は寂しい女だ」とか言われるけど逆で、バイブを持ってるぐらい性欲のある女は、彼氏ができるんですよね。

金田:アメリカの調査で、キンゼイレポートとか見ても、セックスを多くしている人ほどオナニーも多くしている。とにかく、そういう人は何もかもがお盛んなんですよ。

―次回に続く!

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