あまずさのブロマガ

迷衛星のネタ帖 #02 箱入り娘のホックを外そう

2017/01/26 22:20 投稿

コメント:4

  • タグ:
  • 登録タグはありません
  • タグ:
  • 登録タグはありません

 みなさんこんばんは。迷衛星の人です。
 今月は動画うpできないのでブロマガで勘弁してつかあさい。


 これは1987年、ドイツがまだ西と東に分離していたときのこと。西ドイツのドイツ連邦郵便局(で合ってるのかな…)はテレビ中継用の通信衛星を注文・購入した。名前はものすごく安直にTV-Sat 1.製造はフランスの重工業メーカー、アエロスパシエル。日本でいうとAS332シュペールピューマ や AS365 ドーファン などのヘリコプターで知られている・・・?(うp主は浅学のため初耳でした) TV-SAT 1の開発にはドイツのメッサーシュミット社もスラスタで関わっている。
TV-SAT 1 軌道上予想図
 このTV-SAT 1の重量は2トン程度。6基のトラポンを搭載し(うち1つは予備)、Kuバンドにてヨーロッパ各国にテレビ放送を中継するはずだった。衛星は西経19度、南大西洋上空の静止軌道に留め置かれる。寿命は8年。うまく使えば10年以上は持つはずだ。



 さて、このTV-SAT 1は1987年11月21日にAriane2ロケット2号機で打ち上げられた。Ariane2初号機は打ち上げに失敗しているのだが、2号機の打ち上げは無事成功。さあ衛星の初期チェックに入ろうとしたその矢先、大事件が起こった。

_人人人人人人人人人人人人_
太陽電池パドルが開かない
 ̄Y^Y^Y^YY^Y^Y^Y^Y ̄

(AAが正常に表示されてなかったらごめんなさい)

 正確に言えば、2翼ある太陽電池パドルの片方が開かなかった。つまり発電量は半減するということだ。やばい。放送衛星の電力が半減するということは、放送できるチャンネルも減ってしまうということだ。放送局からもスポンサーからも視聴者からも非難を免れない。
 そこで望み薄ながらも衛星の復旧に挑んだ……が駄目。いつもより多く回したり(もちろんTV-SAT 1は三軸安定である。スピン衛星ではない)、振動を与えてみたりしたが、パドルが開くことはなかった。

 しかもこいつは運が悪かった。「まあ半分は生きてるんだし、なんとかなるんじゃないか」なんて甘い夢は見ないほうが良い。なんと開かなかったパドルの下に、地上からのテレビ電波を受け取るアンテナがあったのだ。上流から電波が来ないのなら、それを増幅して放送することなどできない。技術的にいろいろ試してみても地上からのテレビ電波をキャッチするようにはできなかった。かくしてTV-SAT 1は放送衛星としての役割をなんら果すことなく墓場軌道へ移動、停波処分となった

 その後1989年8月にTV-SAT 2は打ち上げられ、こちらは何事もなく運用に就いた。余談だが、TV-SAT 2と同時に打ち上げられたのがヒッパルコス天文衛星だ。この衛星は宇宙天文学に大きな功績を残したことで知られている。



 ところで気になるのは、どうして太陽電池パドルが開かなかったのかという理由だ。機械的なトラブルであればここで紹介したりなんかしない。この理由は実に簡単。

パドルの留め金を外し忘れていた


 地上では不意に動くのを防止するために、太陽電池にロックをかけて開かないようにする。これは事故防止と機体の安全のために行うごく普通のことだ。しかしこのTV-SAT 1、そのロックを外し忘れたまま宇宙に飛び出してしまったのだ。打ち上げ前にチェックを何重にも受けたはずなのに……どうしてそんな簡単なことに気づかなかったんだ……
 
 ということで各位、フェアリングの中に収められた箱入り娘のホックはちゃんと外してあげましょう。絶対に、確実に、そして紳士的にです。外していいのは太陽電池パドルだけですからね? 変なところのお触りは厳禁ですよ!


参考文献
SPACE SYSTEMS FAILURES written by David M . Harland & Ralph D. Lorenz
Gunter's Space Page "TV-SAT 1,2" http://space.skyrocket.de/doc_sdat/tvsat-1.htm


※現在地球観測衛星「みどり」の同人誌を製作しているため、1月~3月中旬まで動画の制作を休止しています。申し訳ありませんがご理解をお願いします。
 また同人誌は完成しだい宣伝いたします。読む人を選ぶ硬めの本ではありますが、関心のある方はぜひお手にとっていただければ幸いです。東京とびもの学会さんおよびComic Zinさんでの頒布販売を予定しています。To Be Announced...


コメント

あまずさ (著者)
No.2 (2017/01/26 23:18)
>>1
情報ありがとうございます。私ミリタリは弱いので、あんまりその辺詳しくないんですよね……ヨーロッパの航空宇宙産業は軒並みエアバスに吸収されてしまったし
コメントありがとうございます
こちらヒューストン
No.3 (2017/01/27 22:50)
面白かったです!
同人誌の方もどんな内容か楽しみです。
あまずさ (著者)
No.4 (2017/01/28 09:02)
>>3
応援ありがとうございます!
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事