今回は、民主主義社会の目標が無意識化されていることの重大な弊害を図解を基に解説する。
ここに現在の国際金融軍事権力に簡単に操作される民主主義の根本的な問題がある、
と考えている。
現在の価値相対主義の民主主義において目指すべき目標は意識化されていない。
各政党の綱領には何かしらの目標が書かれているであろうが、投票する側にはその
ような意識は殆どないだろう。
あるとすれば多数決によりきまる、最大多数の最大幸福を目指すシステムであるという
漠然とした認識であろう。
しかし多数をとることが民主主義の目標で良いのだろうか?
答えは否である。
民主主義の多数決はあくまでも手段に過ぎないのである。
現在の日本国憲法では、民主主義の前段階に全ての人間は生まれながらにして自由で
あり、平等であるという「人間の尊厳」の自然権の思想がある。
これが根本規範というべきもので、ここから政治権力を選挙で選ぶ国民主権の
民主主義が正当化される。
以下に憲法の専門家の意見を列挙する。
(憲法第三版 芦部信喜 高橋和之補訂 P37より転載)
人権は、「人間の尊厳」の原理なしには認められないが、国民主権、すなわち国民が
国の政治体制を決定する最終かつ最高の権威を有するという原理も、国民がすべて
平等に人間として尊重されてはじめて成立する。
このように、国民主権も基本的人権も、ともに「人間の尊厳」という最も基本的な
原理に由来し、その二つが合して広義の民主主義を構成し、それが、人類普遍の原理
とされているのである。
(郷原豊茂の憲法 p4より転載)
「憲法の存在理由との関係でいきますと、あくまでねらいは人権保障にあり、統治機構
というのはその手段にすぎないという関係になっています。」
(郷原豊茂の憲法 p10より転載)
「あくまでもわれわれは民主主義を、便利だから使っているんですよ。
そのほうがうまくいくから使っているだけなんです。
自由を守るのに使える道具だから使っているんですね。
今もしこの道具が自由を守るために使えないとすれば、使うのをやめます。
あくまで民主主義は道具にすぎないんです。」
(転載終了)
「全ての人間が生まれながらにして自由で平等である」という人間の尊厳を一言で表
せば、誰もが支配されない状態ということである。
そこを根本規範に据えているのなら、民主主義の目標は
「誰もが支配されない状態の実現」
にある。
現実は、人間の尊厳を実現しているとはとても言えない不十分な状態であるからだ。
この人間の尊厳を最低限、担保するためのシステムとして選挙があり、選挙から発生
してくる、真理、自由、平等、友愛の諸権利がある。
それについては文章の末尾にあるリンクを参照していただきたい。
この目標が意識化されていないために、我々の民主主義は大きく道を踏み外している。
そのことを図解モデルを使って説明する。
以下の図はプランニングを行うときによく使われる目標を達成するための基本計画図である。
図は縦軸が目標。横軸が時間。
図を作成する流れとしては、
1 目標を確認する
2 現在の状況を確認する。
3 目標を実現するための時期を決める。
4 現状から目標を達成する時期までに、目標に近づいていくための手段と方向性を考える。
この図は、ファイナンシャルプランニングなどでもよく使われるモデルである。
民主主義とその目標の関係を考える上でもこの図は有効だ。
まず、民主主義の目標である「誰もが支配されない社会の実現」を意識化する。
そうすると縦軸に目標が、横軸に時間が発生する。
目標の軸が発生するので、現在の社会が目標に比べてどの位置にあるかの現在状況
の確認を行うことが可能になる。
目標と現状を確認することができるため、次に現状から目標を実現させるための手段と
方向性が発生する。
民主主義での手段は、選挙で誰もが支配されない社会の実現に向けた政策を行う政治を
選ぶことであり、方向性は基本的人権の実現の拡大である。
ところが民主主義の目標である、「誰もが支配されない社会の実現」が無意識化
すると、このモデルの他の項目(縦軸の目標。横軸の時間。目標と比較した現状)
も同時に無意識化されてしまう。
縦軸の目標が見えなくなってしまうためだ。
目標、現状、方向性の欠如に陥った我々の民主主義は、エゴイズムや拝金主義、
カルトなどのような他の価値観に大きな影響を受けるようになる。
また、目標が無意識化されていても、手段としての選挙制度は残っている。
目標は消えているのに、手段だけが残っている状況では、手段が目的化する。
つまり、選挙によって多数派になり勝利することが目標になるのである。
候補者の側は、勝つことが最優先事項になるから、哲学が無くなり、有権者に影響を
与えるマスコミに支持される政策を唱えるようになる。
有権者の側は、勝てる候補を選ぶことが目的になるので、マスコミに取り上げてもらえる
候補者を選ぶようになる。
そうなると通貨発行権やマスコミ・学術機関に多大なる影響を与え、世論操作能力
に秀でているマネーの管理者たる国際金融軍事権力が、候補者にも有権者にも
圧倒的な影響力を持つようになる。
その結果が、TPPや国家戦略特区などの新自由主義の暴走に象徴されるように
「マネーの管理者に支配される社会の実現」となる。
人権と民主主義を掲げる社会おいて、人間も人民も消え、マネーが道徳の中心になる
価値観が隆盛を迎えるというマジックはこうして実現する。
それに反発する価値観は多数出ているが、民主主義との融合という点で、矛盾を
孕むものも多い。
このような操作される民主主義を克服するためには、民主の目標を意識化すること。
そして、その後に発生する、現状の確認と、手段と方向性を意識化することが必要
なのである。
それでは、目標の意識化が成されれば、問題が解決されるかとい
うと、残念なことにそうはならない。
「現状の認識」と、「手段と方向性」の問題が残るためだ。
多くの左翼理論の目標は、搾取のない社会の実現においてきた。
一部の宗教団体もそうであろう。
しかし、目標が共有化されていても、「現状の認識」と、
「手段と方向性」が誘導されていては、目標を達成することは出来ない。
その誘導する手段が、歴史を通じて仕掛けられてきた
「マネーの無意識化による社会全体のマインドコントロール」である。
「目標の意識化」の次は、「現状認識」の問題となる。
それについては後日掲載する。
<参考リンク>国際金融権力によって、自由・平等・友愛の人権と民主主義を掲げる社会において人間と人民が消える理由
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