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アニメ「艦隊これくしょん」の駆逐艦運用について(2)~ 特型駆逐艦~

2015/02/05 18:00 投稿

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・ワシントン海軍軍縮条約とその日本海軍への影響

1922年(大正11年)、米、英、仏、日、伊の間に海軍の主力艦艇を制限する条約が結ばれた。いわゆるワシントン海軍軍縮条約である。
この条約は歯止めのきかない主力艦艇の建造合戦を中止し、各国の財政破綻を回避する目的で結ばれたもので、もしこの条約がなければ日本も開戦を待たずして財政破綻は必至だったと言われている。
さて、この条約では米、英、日の主力艦艇の比率は5:5:3であり、日本は米英に対して劣勢が確定してしまった。
主力艦艇での決戦で勝利の見込みがなくなった日本海軍は「漸減邀撃作戦」にその国運をかけて艦隊を整備していく。
「漸減邀撃」すなわち、進行してくる敵艦隊に対して、潜水艦、駆逐艦、軽巡洋艦などを駆使して魚雷攻撃で敵主力艦を削り、日本海軍の主力艦艇と戦力が釣り合った段階で決戦を挑む、という戦略であった。
・外洋型の強力な駆逐艦『特型駆逐艦』
ここで問題となったのが駆逐艦である。敵艦隊を洋上で魚雷攻撃するためには、強力な魚雷兵装と長い航続距離が求められるが、従来の沿岸防衛を中心とした小形の駆逐艦では、性能が不足していたのである。
そこで軍艦の設計を一手に担う海軍艦政本部は、外洋航海能力を持った睦月型を大きく超える、特別な能力をもった駆逐艦を設計した。
それが「特型駆逐艦」である。一番艦「吹雪」の名を取って「吹雪型」と呼ばれる事もある。



特型駆逐艦「吹雪」(写真は第20駆逐隊時代のもの)



特型駆逐艦について、その前級の睦月型と諸元を比べてみよう。

・睦月型基準排水量 1315t
・吹雪型基準排水量 1680t(365t増大)

・睦月型全長 102.7m
・吹雪型全長 118.5m(15.8m増)

・睦月型機関出力38,500馬力
・吹雪型機関出力 50,000馬力(11500馬力増)

・睦月型航続距離 速力14ノットで4,000海里
・吹雪型航続距離 速力14ノットで5,000海里(1000海里増)

・睦月型主砲12cm単装砲4基 4門
・吹雪型主砲12.7cm連装砲3基 6門(2門増)

・睦月型魚雷61cm3連装魚雷発射管 2基6門
・吹雪型魚雷61cm3連装魚雷発射管 3基9門(3門増)

睦月型でさえ各国の駆逐艦と比べると強力な駆逐艦だったのに、吹雪たち特型駆逐艦は睦月型を大きく超えた性能を持ち、各国の駆逐艦は一気に旧式と化してしまったのである。
もはや水雷艇を追い払ったり、艦隊の港を警備する艦船ではなく、駆逐艦は主力艦艇を積極的に攻撃する艦艇へと進化したのである。
吹雪型以降の初春型、白露型、陽炎型などの駆逐艦は「艦隊型駆逐艦」とも呼ばれ、艦隊決戦の一翼を担う水雷戦隊の中核として、日本海軍は大きな期待を寄せていた。

・艦隊決戦から海上護衛任務へ

結論から言ってしまえば、第二次世界大戦において、「艦隊決戦」など発生しなかった。
局地的な艦隊戦はあったものの、主力戦艦同士が全力で殴り合う戦闘はほとんど起こらず、吹雪たち艦隊型駆逐艦はもっぱら輸送船やタンカーの護衛に東奔西走することになる。
サボ島沖夜戦など、ソロモン諸島をめぐる戦いで敵艦に雷撃や砲撃する事ももちろんあったが、それよりも輸送船を狙う魚雷艇や航空機、潜水艦との死闘で沈んでいく駆逐艦が多かった。
艦隊型駆逐艦は対水上戦闘を主眼に設計されていたため、初期には潜水艦を見つけるソナーを装備しておらず、対空レーダーもなかった。
戦争中盤以降は順次改修され、2番主砲を下して対空機銃を増設するなど、次第に護衛や対空戦闘を重視した改造が施されている。
しかし米軍のようにレーダーと連動した対空システムなどは装備されず、おおむね目視に頼った対空戦闘では効果もあがらず、次第に連合軍の前に屈していくのである。
・終戦、そして賠償艦へ
終戦時、特型駆逐艦で残存していたのは、「潮」「響」のみ。
24隻を数えた特型姉妹も、この2隻を除いて全艦沈没してしまった。
しかも「潮」は機関損傷を修理できず、右舷側のスクリューを回すことができない状態であった。「響」も1番主砲を含む前半部に大ダメージを負っており、「潮」から1番主砲を移植して何とか戦闘可能状態まで修復できたものの、「潮」の修理の見通しは全く立たない状況だった。


(1番主砲を撤去された「潮」。機銃も装備されておらず、武装解除後の撮影と思われる)

なお「響」は大和の沖縄特攻作戦にも参加する予定だったが、直前に機雷に触れて損傷してしまい、作戦には参加しなかった。
しかし数少ない稼働艦として、8月15日の終戦当日にも「響」は25ミリ機銃で対空戦闘を行っている。

終戦後、「響」は賠償艦してソ連に引き渡され、「ヴェールヌイ(Верный)」と名前を変えてソ連海軍に在籍したのはご存知の通りである。

開戦時から日本海軍を支えた特型駆逐艦。日本にただ一隻残っていた「潮」も1948年に解体され、日本から彼女たちは姿を消してしまったのである。


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