主張
F35部品輸出
紛争助長する国になるだけだ
安倍晋三政権は、米国などが共同開発している最新鋭戦闘機F35向けに日本企業が製造した部品を米国に輸出し、その部品を組み込んだ機体がイスラエルなどに渡ることを「武器輸出三原則」に抵触しないと認める方針を固めました。
F35は日本の自衛隊も購入を決めていますが、共同開発に参加しているわけではありません。しかし民主党政権時代に共同開発への参加は「三原則」に反しないと認めているため、その枠内だと称して部品輸出を認め、機体の輸出も容認する方向にしたものです。「三原則」をなし崩しにするやり方は絶対に許されません。
武器禁輸政策の骨抜き
「武器輸出三原則」は佐藤栄作政権が1967年に国際紛争当事国などへの武器輸出を禁止し、76年には三木武夫政権が紛争当事国以外にも武器輸出を慎むとするなど、長く日本の武器輸出を事実上禁止する原則となってきたものです。ところがその後の自民党政権が、対米技術協力や「ミサイル防衛」に関連する日米共同開発を例外と認め、民主党政権時代の2011年12月には野田佳彦政権が、国際的な武器の共同開発について「包括的」に例外にすると定めて、「三原則」を空洞化してしまいました。
野田政権当時「赤旗」主張は「武器禁輸を国是としていたからこそ得てきた国際社会の信頼を失わせる『亡国』の決定」と批判しました。その基準を悪用した今回の安倍政権の決定は、その批判の正しさを裏打ちするものです。
野田政権当時の基準は、共同開発した兵器の第三国への輸出には、日本の事前承認を義務付け、「国際紛争等を助長するのを回避する」などとしていました。しかし、今回の安倍政権による「三原則」の骨抜きは、そうした言い訳さえ完全に投げ捨てるものです。
日本企業が製造した部品を使ったF35が輸出されるイスラエルは、つい最近もシリアやパレスチナなどへの武力攻撃をくりかえしている、国際紛争当事国そのものです。部品の売却も機体の売却もイスラエルの武力攻撃を日本が助長する危険を意味します。憲法の平和原則をふまえた「三原則」を完全にふみにじるのは明らかです。
米国は日本から部品を購入するだけでなく、日本の自衛隊が大量に導入するF35については日本国内にも施設をつくり、組み立てなどを日本の兵器産業にもまかせる方向です。米国が日本の兵器産業のもうけをえさにF35を売り込み、部品も購入して、それによって日本側も大もうけする醜悪な関係です。「三原則」の空洞化はまさに日米の「死の商人」を喜ばせることになります。
購入は憲法違反の疑いも
民主党政権時代に日本の導入が決まったF35は、42機で1兆6千億円といわれる、軍事費大盤振る舞いの典型です。初年度となる12年度は1機102億円(4機購入)だったものが、13年度予算案では2機で299億円と1・5倍にもなっています。残りの36機がさらに高騰しない保証はありません。
長距離攻撃能力と爆撃能力を保有するF35は、憲法が禁止している戦力そのものにあたる疑いが濃厚です。日米の「死の商人」を肥え太らせ憲法を踏みにじる、F35の購入も部品供給など生産への参加もきっぱりやめるべきです。