主張
安倍首相年頭発言
国民との対話姿勢 今年もない
新しい年の年頭にあたって安倍晋三首相が発表した年頭所感を読み、仕事始めの日に行われた首相の記者会見を聞きました。外交で大きな実を結び、経済でもデフレではない状況をつくったと、自画自賛のオンパレードです。昨年末で丸3年を迎えた安倍政権には、消費税増税や戦争法の強行、沖縄での米軍新基地建設の押し付けや環太平洋連携協定(TPP)、原発再稼働の推進など国民の不安と批判が渦巻いています。自らの成果を誇示するだけの安倍首相には、国民の批判に向き合い対話する姿勢が今年もありません。
独りよがりの独裁政治
何より驚いたのは、安倍政権の悪政のなかでも最悪の、昨年の戦争法強行について、首相の年頭所感でも記者会見でも、まともな言及がなかったことです。
歴代政権でさえ行使できないとしてきた集団的自衛権の行使をわずか一内閣の閣議決定で変更し、憲法に違反したアメリカなどの戦争に海外で自衛隊が参加する道を開いたこの悪法をめぐり、かつてない反対の世論が巻き起こり、いまも続いています。安倍首相でさえ強行直後には国民に丁寧に説明するといったのに、その後臨時国会も開かず、国民に説明する機会もつくらず、年頭所感や記者会見では戦争を未然に防ぐ基盤を築くことができたとの一言ですます―。それでいて、外交で大きな実を結んだと自画自賛する安倍首相には、国民の批判に向き合い、国民とまじめに語り合う、意思も能力もないのは明らかです。
経済運営でもそうです。安倍政権は政権発足から1年余りで消費税を増税し、大企業のもうけ最優先で国民生活の破壊を続けてきました。安倍首相は経済再生に全力をあげ、もはやデフレではない状況をつくったといいましたが、安倍政権の経済政策「アベノミクス」では物価を上げれば賃金も上がり、消費が増えて「経済の好循環」が起きていたはずです。どこにもそんな状況はありません。
さすがに記者会見でも外国メディアの記者からデフレは脱却していないのではないかと質問され、首相も「道半ば」であると言い訳せざるを得ませんでした。国民の暮らしの実態を直視しようとしない安倍政権の実態は明らかです。首相がデフレ脱却や経済再生を宣伝するのは、来年4月からの消費税の再増税実施のためといわれても弁解の余地はありません。
国民の批判に向き合おうとしない安倍首相が、新年を迎えて「挑戦、挑戦、そして、挑戦あるのみ」と意気込むのは、それこそ国民にとって危険です。国民は改憲など安倍政権の「挑戦」を、歓迎もしなければ見過ごしにもしません。
民主主義を取り戻す
丸3年を迎えた安倍政権の政治に際立つのは、憲法を踏みにじり、立憲主義を破壊するとともに、主権者である国民の意思に背く民主主義の破壊です。消費税増税でも戦争法強行でも、国民の圧倒的多数が反対しているのに強行を重ねる異例な独裁政権が長続きできるはずはありません。
立憲主義、民主主義を破壊する安倍政権を退陣に追い込み、政治を国民に取り戻そうではありませんか。新しい年を戦争法反対のなかで開始された国民の新たな歩みを、政治の変革に確実につなげる年にしようではありませんか。