主張
安倍首相米国訪問
日米同盟強化に「希望」はない
訪米中の安倍晋三首相は、オバマ米大統領との首脳会談、米議会上下両院合同会議での演説などを通し、露骨なまでの対米従属の姿勢を示しました。美辞麗句を並べた米国礼賛の議会演説は、マスメディアも「米国が求める日本の姿を懸命に演じる」という「戦後70年を経ても変わらぬ日米の構図を際立たせた」(「朝日」4月30日付)と指摘するほどです。首相は議会演説で、「日米同盟」を「希望の同盟」と呼びました。しかし、首相が対米誓約した「戦争立法」の推進など日米軍事同盟強化の道に、日本の未来を託す「希望」はありません。
「不動」どころか「砂上」
日米両政府は、安倍首相の訪米で、「日米同盟」強化の重要性を繰り返しうたいました。
日米首脳会談に合わせて発表された「日米共同ビジョン声明」は日米両国が「不動の同盟国」になったとし、新たに策定した「日米軍事協力の指針(ガイドライン)」について「同盟を変革」し、「日本が地域の及びグローバルな(地球規模の)安全への貢献を拡大する」と強調しました。
首相は議会演説で、「戦後、初めての大改革」である「安保法制の充実」を進めており、「この法整備によって、自衛隊と米軍の協力関係は強化」されるとし、「日米(両軍)がそのもてる力をよく合わせられるようにする仕組み」が「日米防衛協力の新しいガイドライン」だと語りました。その上で、インド洋やイラクなどでの自衛隊の活動を挙げ、「これら実績をもとに、日本は、世界の平和と安定のため、これまで以上に責任を果たしていく」と表明しました。
戦後日本の安全保障政策を根本的に転換し、イラク侵略戦争やアフガニスタン報復戦争のような米国の地球規模での戦争に自衛隊が参戦し、米軍と共同してたたかうことを可能にするために「安保法制の充実」=「戦争立法」を進めるという表明であり、その仕組みづくりが新ガイドラインだということです。
首相は、「安保法制」整備を「この夏までに、成就させる」「この夏までに、必ず実現する」と繰り返しました。日本国民の反対世論が多数を占め、法案もできておらず、国会審議も始まっていないのに、日本を「海外で戦争する国」に大転換する「戦争立法」の成立を米国に誓約するのは、日本の主権をなきものにする異常極まりない態度です。
首相が首脳会談で、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設について「唯一の解決策とする立場は揺るぎない」と述べたことほど民意を踏みにじるものはありません。「日米同盟強化をうたえばうたうほど、よって立つ基盤のもろさが目立つ」「沖縄の(新基地)反対こそ『揺るぎない』」とし、「日米同盟」はまさに「砂上の同盟」(琉球新報4月30日付)だという痛烈な批判は当然です。
対等・平等・友好関係へ
軍事同盟の強化は歴史の逆流でしかありません。世界の大勢は軍事ブロックの解体・機能停止の進行であり、外部に仮想敵を設けない平和の地域共同体の発展です。
対米従属の根源である日米安保条約を廃棄し、日米友好条約を結び、真の対等・平等・友好の関係を築くことにこそ、21世紀の日米関係の未来を開く「希望」があります。