原発の再稼働へ前のめりで、国民の安全に対する責任を投げ捨てる―。原発ゴリ押しの安倍政権の姿勢に「安倍政権を終わらせることが、原子力防災の第一歩」との批判の声が上がっています。
九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)で、新規制基準に「適合した」とする審査書案を原子力規制委員会が了承した7月16日、安倍首相は「一歩前進ということだろう。世界で最も厳しい安全基準にのっとって、規制委が審査し、その上で安全だと結論が出れば、立地自治体の理解をいただきながら、再稼働を進めていきたい」と語りました。
この発言に対し、各地の原子力防災計画を検証している環境経済研究所(東京)の上岡直見代表はこう語ります。
「『規制委が審査…』というのを、安全が確認されたような印象操作に使って、実は責任を取ろうとしていないことが悪質です。技術的な安全対策も電力会社まかせ。事故があれば、規制委の見落としと電力会社のミスにするためです」
安全保証せず
実際、規制委の田中俊一委員長は、同じ16日の会見で「安全審査ではなくて、基準の適合性を審査した。基準の適合性はみていますが、安全だとは申し上げません」「ゼロリスク(危険がゼロだ)とは申し上げられない」と述べ、基準に適合しても“絶対安全は意味しない”と繰り返しています。
それもそのはず、規制基準は、東京電力福島第1原発事故がいまだに収束できず、事故原因の解明もされていない中で作られ、原発の安全をまったく保証しないものであることが明らかだからです。
しかも、今ある原発を存続させるため、追加の対策でよしとする基準です。欧州(EU)で採用されている核燃料溶融時の対応設備や格納容器の二重化などの最新技術を求めておらず、アメリカで規制対象となっている事故時の避難計画を審査・検証しようとすらしないなど、「世界で最も厳しい基準」とは程遠いものです。
上岡氏はいいます。
「重大事故とは何の脈絡もなく突然起きるのではなく、多くの連鎖的な要因のつながりで起きるものです。責任を取らずに再稼働を強引に進める安倍政権は、重大な原発事故を引き起こすことにつながる存在です。原子力防災の第一歩は、安倍政権を終わらせることです」
審査通っても
“審査で通れば安全”。福島原発事故前から安倍首相がふりまいてきた“主張”はすでに破たんしました。
安倍首相は第1次政権時の2006年に、日本共産党の吉井英勝衆院議員(当時)が、原発の地震や津波対策を求めた質問主意書に対し、答弁書で次のように答えていました。
「原子炉の安全性については、…経済産業省が審査し、その審査の妥当性について原子力安全委員会が確認しているものであり、御指摘のような事態が生じないように安全の確保に万全を期している」
吉井氏が指摘したのは、地震で送電線の鉄塔が倒れ、非常用ディーゼル発電機が機能しなければ原子炉の冷却ができず、核燃料が焼損し、放射性物質による汚染が発生する可能性でした。これは福島第1原発が事故に至った経緯そのものです。やるべきことをやらなかったことへの反省の弁は、再稼働に前のめりの安倍首相から聞こえてきません。