政府は11日、財界・大企業が求める「残業代ゼロ」制度について関係閣僚会議を開き、労働時間規制を外す新たな制度を導入することで一致しました。菅義偉官房長官、甘利経済再生相、田村憲久厚労相が会談。今月下旬に閣議決定する新たな成長戦略に盛り込むことになりました。新制度は労働時間規制を外すもので、対象者を「年収1千万円以上」とし、仕事の範囲が明確で高い職業能力を持つ労働者とします。
甘利氏は「使用者にとっても労働生産性をさらに上げていくための手立てが用意されることになる」、田村氏も「時間に縛られるよりも生産性が上がる」とのべ、労働者を際限のない長時間労働に駆り立てていく考えを示しました。
一方、政府は、もう一つの「残業代ゼロ」制度である「裁量労働制」を拡大することで一致しています。これは、実際の労働時間に関係なく、労使で決めた時間を労働時間とみなす制度で、決めた時間を超えても残業代は支払われません。
ただし、裁量労働制では、深夜・休日労働の割増賃金は支払わなければならず、対象も企画や研究業務などに限られています。財界は「規制が強く、活用はほとんど進んでいない」(経団連の榊原定征会長)と緩和を求めています。新制度と併せて、「残業代ゼロ」を広範な労働者に広げる考えです。
裁量制も拡大
新しい労働制度は、「1日8時間、週40時間」など労働時間の大原則を突き崩すもので、労働者は成果をあげるために際限なく働かされることになります。企業は労働時間の管理もしなくなり、過労死しても「自己責任」とされてしまいます。
榊原会長は「少なくとも全労働者の10%程度は適用を受けられるようにすべきだ」(9日)と求めており、いったん導入すれば対象が広げられることは必至です。
「残業代ゼロ、過労死促進制度」(全労連)と批判の声が広がるなか、政府は、ゼロではなく「残業代込み」(田村憲久厚労相)と言い訳を始めています。「時間でなく成果で評価する働き方にふさわしい制度が必要だ」(田村氏)という導入の論拠を自ら否定する矛盾に陥っています。