憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認などを提言(15日)した安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の議事録について、政府は24日までに全面非公開とすることを決定しました。首相に近い元官僚や学者らを集めた「お友達懇談会」に安全保障政策の大転換を提言させながら、議論の実態を国民に明かさないのは、政府の説明責任の点でも重大な問題です。
本紙の情報公開請求に対し、安保法制懇の事務局を務めた国家安全保障局は議事録を全面「不開示」としました。その理由について「率直な意見交換が損なわれる」「特定の委員が名指しで批判される」などとしています。
担当者は取材に対し、議事録の作成は「政府内部の検討に資するため」であり、今後も開示しない方針を明らかにしました。
官邸ホームページ上には、安保法制懇の配布資料や議事要旨が公開されています。しかし議事要旨では、発言者名と全ての発言内容が記された議事録と異なり、出席者の発言が簡略化されるなど政府側の編集が加えられています。
そもそも同懇談会は、集団的自衛権行使の容認論者だけを集めて構成されており、法的な設置根拠もない首相の私的機関です。政府が議事録を作成しながら全面非公開とする背景には、結論ありきの議論を隠す狙いがあるとみられます。
結論ありきコソコソと
日弁連憲法問題対策本部事務局の井上正信弁護士
私的懇談会でありながら、国のかたちを大きく変える議論が安保法制懇で行われたことは間違いありません。
国民や日本の安全を守るためになぜ憲法の解釈を変えなければならないのか。明文改憲ではなぜダメなのか。これらの必要性(立法事実)についてどんな議論がされたのか、公開資料からは全く分かりません。議事要旨からうかがえるのは、結論ありきで緊張感のない議論が交わされた様子だけです。
議事録全てが不開示とは、国民にコソコソ隠れて改憲を進めているのも同然です。「特定の委員が批判される」というなら、名前だけ伏せればいい話で、非公開の理由にはなりません。議事録は公開し、国民的議論に付すべきです。