主張
派遣制度見直し案
正社員減らしの道開く大改悪
派遣労働が、企業の都合のいい働き方に変えられようとしています。臨時的・一時的な業務に限り期間を制限して認められてきた活用から、制限なく使い続けられる常時活用への大転換です。これでは正社員を減らして安上がりの派遣に切り替える企業の動きが広がるのは目に見えています。
厚生労働省が12日、労働政策審議会の部会に示した派遣制度見直しの骨子案は、派遣労働を根本から変える大改悪案です。派遣労働者の待遇が改善されないだけでなく、雇用全体を低賃金、不安定化させるもので、絶対に許すわけにはいきません。
企業の自由勝手に
雇用は、企業が労働者を直接雇い入れて働かせる「直接雇用」が原則です。派遣という働き方は、派遣会社に雇われ、そこから別の会社に貸し出されて働く「間接雇用」という不安定な形態です。このような人を貸して「中間搾取」する事業は、戦後は職業安定法で禁止されていました。
それを例外として認めたのがいまの労働者派遣法です。正社員に代えて恒常的な業務に入れないという「常用代替防止」、「臨時的・一時的業務」に限るとして「専門26業務」を指定し、その他の一般業務は使用期間が原則1年(最長3年)に制限されています。
製造業の大企業などがこうした規制を破って恒常的な業務に派遣を入れ、景気の良しあしで使い捨てる違法、脱法行為が横行しています。労働者保護の立場から、こうした大企業の横暴、無法行為の規制を強めることこそいま政治が力をつくすべきです。
ところが厚労省の派遣制度見直し案は、企業が派遣を利用する障害になっていた規制をことごとく取り払い、自由勝手に活用できるようにするものです。専門26業務と一般業務の区別を撤廃し、派遣会社に無期雇用された労働者は無期限の派遣を認めます。有期雇用の労働者は「3年」という制限をつけますが、派遣先企業が労働組合の意見を聞けば永続的に延長できます。
派遣先企業の使用者責任がなくなっているのも重大な問題点です。3年働いた派遣労働者に直接雇用を申し込む義務がなくなります。均等待遇の義務も盛りこまれていません。フランスやドイツは、派遣を受け入れる企業にたいして自社の労働者と同一の労働条件にすることを義務づけています。
厚労省の見直し案は、財界の反対をうけて、「均衡」への配慮をいっているだけです。派遣労働者は正社員に比べて賃金は約7割です。しかも派遣受け入れ企業には雇用者責任がないので社会保険加入などの経費も不要です。派遣先企業の負担になる責任、義務をすべて取り払って派遣を安く自由に使える道を開くという、企業利益を優先する姿勢が露骨です。
垣根を越えた共同を
この方向では「派遣が当たり前」の社会になってしまいます。低賃金で不安定な雇用を拡大しようとする安倍晋三政権の労働規制緩和の暴走をくい止めるたたかいが重要です。13日には日本弁護士連合会が主催した集会に連合、全労連などが垣根を越えて参加し、決意を示しました。政府は、答申をえて年明けの通常国会に法案を出す構えですが、これを阻止する共同の強化が求められています。