「実態も知らずに幕引き図るのか」
熊本県水俣市で開かれた水銀による健康・環境破壊を防ぐための「水銀に関する水俣条約」外交会議の開会式(9日)に寄せた安倍晋三首相のビデオメッセージが水俣病被害者の怒りを呼んでいます。批判を浴びているのが首相の「日本は水銀による被害を克服した」との発言です。
水俣病をめぐっては、昨年7月に水俣病特措法による救済申請を国が一方的に打ち切り、不服も受け付けないため、180人が救済を求めて「ノーモア・ミナマタ2次訴訟」を起こしています。
最大の被害者団体の水俣病不知火(しらぬい)患者会の大石利生会長は「安倍首相の『克服』発言は水俣病を終わったことにして幕引きを図ろうとするもので、現場も実態も知らずに被害者をばかにしている。水俣病被害は終わっていない」と憤ります。
被害者全員の救済を求めてきた日本共産党の松岡徹熊本県議は「『克服』発言はオリンピック招致時の福島原発事故の『汚染水をコントロールしている』と同じで事実とかけ離れている。数万人いるとも指摘される被害者救済のために、水俣病を引き起こした加害者でもある国の責任で不知火海沿岸住民の健康調査をまず実施し被害者全員救済の仕組みをつくってはじめて『克服』したと言える」とのべました。