「地に落ちた原子力安全行政に対する信頼を回復する」ことを最重要課題として掲げてスタートした原子力規制委員会が19日で、発足から1年が経過しました。田中俊一委員長は、「変化が確実に生まれている」との所感を発表しましたが、何が変わったのでしょうか。
規制委が、この1年最も力を入れてきたのが原発再稼働の条件となる新規制基準の策定です。当初、「5年かけてもおかしくないような内容」と認めながら、スケジュール通り6月には規制基準を決定し、7月8日に施行しました。専門家や市民団体からは拙速との批判が出されました。現在、6原発12基で新基準への適合性を審査しています。
規制委の事務局、原子力規制庁は、審査を80人体制で実施。ところが、8月には「原子力施設の規制(規制基準への適合性審査等)に関する事務」などを業務内容とする中途採用の募集を行いました。募集対象も電力会社の技術者です。一層の“スピード審査”への体制づくりとも言えます。
再稼働ありきのやり方も問題になりました。全国で唯一稼働していた関西電力大飯原発3、4号機は、新基準施行前に現状評価を実施。「直ちに安全上重大な問題は生じない」などとして、運転継続を容認しました。新基準が求める対策が整備されていないものは代替対策を容認。調査中の敷地内断層などの問題は棚上げにして結論を出しました。
一方で、東京電力福島第1原発の放射能汚染水問題では、対応が後手に回り、改善の方向性はまだ見えていません。
体制も、福島第1原発の事故収束におもに従事しているのは53人。現地に常駐している職員はわずか10人程度です。
規制委は12年11月に福島第1原発に対する措置を講ずべき事項をまとめ、同原発を特定原子力施設に指定。東電はこの決定に基づき、実施計画を策定しました。規制委は、「原子炉による災害上、核燃料物質の防護上十分なものになっている」として、実施計画を認可しました。
しかし、4月に発覚した地下貯水槽からの汚染水漏れに始まり、海に近い地下水の放射能汚染が判明し、汚染地下水の海洋への流出が続いています。さらにタンクから大量の汚染水漏れ事故も起き、事態は泥沼化しました。
規制委が汚染水対策の検討会を設置、議論を始めたのは8月になってからでした。