2015年度にも陸上自衛隊への導入が狙われる米国製の垂直離着陸機V22オスプレイについて、防衛庁(現防衛省)が、1990年ごろに海上救難艇としての導入を検討したものの、同機の構造的欠陥である強烈な下降気流などが障害となって導入を断念していたことが分かりました。
防衛省は本紙の質問に対し「1990年ごろ、中期防衛力整備計画(91~95年度)の期間中に海上自衛隊(海自)の救難飛行艇US1Aの後継として導入が検討されたことがあった」と回答。US1Aは、洋上に着水して遭難者などを救助することができ、現在後継となっているUS2はこの改良型。固定翼機のためヘリや船より速いという利点があります。
導入を断念した理由について、民主党政権でオスプレイ配備に携わった森本敏前防衛相は近著『オスプレイの謎。その真実』で、海自が「救難活動や活動範囲拡大に着目して採用を検討していたが、V22は開発途上で下降気流が強いとの理由で断念した」と述べ、救難艇に不適との判断があったとしています。
一方、防衛省は「米国における開発の遅れも影響したのではないか」と説明。オスプレイは89~90年にかけて試作機が順調に飛行しましたが、91、92年には多数の死傷者を出す重大事故が発生。開発が大きく遅れました。2005年の本格量産後も重大事故が相次いでいます。防衛省は「大規模災害発生時の救援活動の確立に寄与する」(小野寺五典防衛相、6日会見)として、日米共同防災訓練(10月下旬、高知県)へのオスプレイ参加などで人道支援への活用を強調していますが、このような経緯と欠陥が「救援」に適するか改めて問われます。