日本記者クラブ主催「党首討論会」―志位委員長の発言
日本記者クラブ主催で3日に開催された党首討論会で、日本共産党の志位和夫委員長が行った発言を紹介します。ほかに安倍晋三・自民党総裁(首相)、海江田万里・民主党代表、橋下徹・日本維新の会共同代表、山口那津男・公明党代表、渡辺喜美・みんなの党代表、小沢一郎・生活の党代表、福島瑞穂・社民党党首、谷岡郁子・みどりの風代表が出席しました。
参院選で何を訴えるか
自民党と対決――日本政治の“四つの転換”を訴えたたかい抜く
冒頭、各党党首が今回の参院選で「国民に一番訴えたいこと」を1分間で表明しました。安倍氏は、自公政権復活で「政治は変わり、経済も動きだした」と誇りながらも「(国民に)実感を届けたい」と釈明。連立を組む山口氏も「実感が伴っていない」と認めつつ、大企業支援の「成長戦略」を実行すれば実感が出るかのように強弁しました。
海江田氏は、自公民で社会保障改悪や消費税増税の談合を続けてきたことに反省もなく、「自民党と公明党の政権は大変危うい。この危うさに対して、国民の暮らしを守る」と表明。橋下氏や渡辺氏は、「混合診療の全面解禁、カジノの解禁、40歳の世代は年金をもらえる年齢を段階的に引き上げる」(維新)、「民間の岩盤規制がはびこっている。特に電力、農業、医療だ」(みんな)などと国民生活を犠牲にする規制改革・社会保障削減をけしかけました。
志位氏は、次のように述べました。
志位 私たちは「自民党と対決、“四つの転換”」を訴えて選挙戦をたたかい抜きます。
第一は、国民の所得を増やして景気回復を図る政治への転換です。大企業の260兆円の内部留保の一部を活用して、賃上げと安定した雇用を増やし、景気回復の突破口を開きます。消費税増税には断固反対です。
第二は、原発ゼロの日本への転換です。事故が収束していないもとでの再稼働や原発輸出には、厳しく反対します。
第三は、憲法を守り、生かす政治への転換です。9条、96条の改定に反対し、9条を生かした平和外交をすすめてまいります。
最後に、アメリカいいなり政治からの転換です。TPP(環太平洋連携協定)推進、米軍普天間基地の辺野古「移設」などに反対し、自主独立、平和の日本をつくってまいります。
日本共産党をよろしくお願いいたします。
安倍首相に問う
ゼネコン業界へ4億7100万円もの献金要請――政治をカネで売る最悪の利権政治だ
首相 答えられず
次に、各党党首が相手を指名して質問する党首同士の討論が行われました。
志位氏は、安倍首相を指名し、次のように述べました。
志位 安倍さんに質問いたします。
ここに今年2月、自民党の石破幹事長をはじめ三役連名で出された文書があります。ゼネコンなどで構成する「日本建設業連合会」にあてた政治献金の要請文です。私たちの「しんぶん赤旗」日曜版が入手したものです。
要請文には、自民党の政治資金団体である国民政治協会の文書が添えられております。そこでは、自民党は「『強(きょう)靱(じん)な国土』の建設へと全力で立ち向かっており」、こうした「政策遂行を支援するため」献金をお願いしたいと述べ、「一、金 四億七千壱百萬円也」と金額まで明示しております。まるで請求書です。
「国土強靭化」とは10年間で200兆円という巨額の公共事業を進めるものですが、その見返りに金額まで明示して政治献金を求める―これは文字通り政治を金で売る、最悪の利権政治だと思いますが、見解を求めます。
これに対し、安倍首相は「文書を見たことはございませんので、なんとも申し上げようがありません」と答えるのが精いっぱい。ムダな公共事業のばらまきを「国土強靭化は、防災・減災のための国づくり」などと正当化し、巨大公共事業と引き換えに、献金を要求している事実をごまかしました。
金額まで明示して献金を求める是非を再度問う
首相 党に確認しないと答えられない
志位氏は2回目の質問で、次のように迫りました。
志位 先ほど私が出した文書は、日建連の事務局の側も、「赤旗」の取材に対して、そういう要請を受けた事実をコメントしております。ですから、間違いのないものです。
私が聞いたのは、「四億七千壱百萬円」という金額を明記した献金を求めることの是非です。これを改めて問いたいと思います。はっきり答えていただきたい。
安倍首相は「献金の話は、党のほうによく確認しないとお答えするわけにはいきません」と答えました。
消費税増税――自民の公約に「増税」の文字はない。国民の審判を受けずに13.5兆円もの大増税を強行するのか
首相 自公民で通した法律で増税は決まっている
経済政策などをめぐっては、維新、みんなが自民党に共鳴する場面が随所に見られました。
維新の橋下氏は「安倍首相のマクロ経済政策、大胆な金融緩和については賛成なんです」と絶賛。みんなの渡辺氏は「自民党の公約の中には、TPPに参加しないこともあるみたいなことを言っているが、これは国益を損なうものだ」と述べ、農業も地域経済も壊すTPP参加をけしかけました。
消費税増税をめぐっては、橋下氏が「消費税増税を財政再建の視点だけで考えている」として、増税による物価上昇を指摘しただけ。渡辺氏は「アベノミクスと名目3%成長というのは合わない。その矛盾をどう説明するのか」と述べるにとどまりました。
これに対し、日本共産党の志位氏は、次のように述べました。
志位 参院選挙の公約のなかで、自民党は「消費税については、全額、社会保障に使います」と述べているだけで増税という言葉はありません。首相は「経済情勢を見て秋に判断する」といいますが、国民の審判を受けないつもりでしょうか。13・5兆円もの大増税を国民の審判抜きに強行するというのは民主主義の国では許されないと考えますが、いかがでしょうか。いまの状況の下で増税をやれば、暮らしも経済もひいては財政も破たんに陥ることは明瞭です。
安倍首相は「昨年自公民で来年3%、再来年2%上げていくということを約束している」と述べ、参院選での審判を受けることなく増税を強行する姿勢を示しました。
都議選で躍進した共産党に――共産党の主張を実現する中長期的展望は(一問一答)
大目標として二つのゆがみを根底から改革する民主連合政府を展望日本共産党が躍進することが政界の変化つくる
主催者側から、日本共産党が“自共対決”を掲げていることについて「野党のままでは限界があるのではないか」とし、中長期的な将来、政権参加の考えはあるかとの質問があり、志位氏は次のように答えました。
志位 私たちは大きな目標として、民主連合政府を樹立するということを綱領で掲げております。
この政府は今の日本の政治の二つのゆがみを根底から改革する。すなわち、あまりに異常なアメリカ言いなりの政治、もう一つは大企業・財界中心の政治――この二つを改革して、まず資本主義の枠内で民主的な改革をすすめようという連合政権をつくることを展望しております。
今はまだ、そういう条件が熟しているとはいえませんけれども、私たち日本共産党が躍進することによって、そういった政界の中での変化が訪れることを展望しております。
1970年代に日本共産党が躍進したさいに野党の間の連立政権が現実の課題となったこともありました。ですから、わが党が伸びることが、そういう連立政権への道を開くことになると考え、大いに力を尽くして頑張りたいと思っております。
原発再稼働問題は参院選の大争点に――原発依存は選択肢にならないことを前提にした議論を
安倍首相は、原発問題をめぐり居直りに終始しました。
原発再稼働について「低廉で安定的な電力を供給していかなければいけない責任も負っているので、安全と判断があったものは再稼働していく」と述べ、事故も収束していないもとで新たな「安全神話」にたって無謀な再稼働をすすめていく姿勢を示しました。
これに対し最後に発言を求められた志位氏は、次のように述べました。
志位 私は原発問題について、一言述べておきたいと思います。
私は、原発に依存し続けるというのは選択肢にできないということを前提とした議論が必要だと思います。
再稼働というのは、おそらく今度の選挙の大争点になるでしょう。しかし、今なお15万人の方が避難生活を強いられている。そして、事故の原因も分かっておりません。収束もしておりません。そして、たとえば防災計画も作られていない。こういうもとで原発を動かすというのは絶対にあってはならない。
ですから、現実的な方策として、「原発即時ゼロ」の決断をして、そして廃炉に向かうプロセスをずっとすすめていく。そして、再生可能エネルギーへの抜本的転換を行う。こういうことを訴えていきたいと思っています。