危険な暴走「アベノミクス」
景気回復へ 共産党の対案
党副委員長・政策委員長 小池晃さんに聞く
安倍政権の経済政策「アベノミクス」の是非が問われています。日本共産党が発表した「『アベノミクス』の危険な暴走を許さず、消費税増税を中止し、国民の仕事と所得を増やす、本格的な景気回復を」との提言(「景気回復提言」、4月24日発表)について、小池晃副委員長・政策委員長に聞きました。
家計・経済壊す「毒矢」と対決
格差はより拡大
―「提言」で指摘した「アベノミクス」の暴走ぶりがより明らかになってきていますね。
小池 安倍首相は「3本の矢」で日本を元気にすると打ち出しました。第一の矢は「次元の違う金融緩和」です。安倍氏は昨年の総選挙で“輪転機をぐるぐる回してお札をする”とまでいっていました。そして今、何がおこっているのか。ごく一握りの富裕層、機関投資家、外国人投資家のところに巨万の富が積みあがりつつあります。
わずか半年間で、ユニクロの柳井正さん(ファーストリテイリング会長兼社長)の資産増加額は4人家族の保有株式で1兆円を超えています。一方、庶民の家計を食品、光熱費などの値上げが直撃し、イカ釣りなど漁業関係者は燃油高騰で深刻な打撃をうけています。中小企業・業者は原材料の上昇に悲鳴をあげています。貧困と格差が拡大するような事態が生まれています。
バブルはいずれ破裂します。そうなれば失業と倒産の嵐が吹き荒れることになります。
二つ目の矢は「機動的財政運営」です。中身はきわめて従来型の自民党政治の完全復活で、大手ゼネコンだけがもうかる巨大開発のオンパレードです。東京外環道をはじめとする高速道路建設や国際コンテナ戦略港湾など不要不急の大型開発が目白押しです。もっぱら大企業を対象にした企業減税は今年度予算でも2000億円盛り込まれています。
こんなことをやれば、借金の山が積みあがっていくだけです。
第三の矢の「成長戦略」の一番のターゲットは雇用です。正社員のなかに職種限定、地域限定の「限定正社員」をつくって、いつでも首を切れるようにしようとしています。また、「限定なし」の正社員には「残業代ゼロ」のホワイトカラー・エグゼンプションを導入しようとしています。労働者を物のように使い捨て、命まで奪うような「ブラック企業」化を日本の企業全体にまで広げる危険性があります。
しかも「3本の矢」だけではなく、ほかに「2本の矢」があります。一つは、消費税の増税、もう一つは社会保障の切り捨てです。「5本の矢」はただの矢ではなく「毒矢」です。「5本の毒矢」が家計を襲う。こんなことをやって暮らしがよくなるわけがないし、景気が回復するわけがありません。
投機とバブルへ
―「毒」ばかりで危険だということですね。
小池 安倍政権の「アベノミクス」は無責任で危険です。かつて金融政策の失敗でバブルになったことはありましたが、はじめから「投機とバブル」を引き起こそうと突き進む。日本経団連も加盟企業が多国籍企業化しているなかで、国内の雇用や地域経済をどうやって力強いものにしていくかなどということには、まったく無頓着です。米国式の会計基準を持ち込んで、株価、株式の配当にばかり目がいき、企業にとって宝である労働者を次々と切り捨てていく。
非常に無責任で危険な経済運営を安倍政権と財界が一体となってすすめようというのが「アベノミクス」です。これに真っ向から立ち向かうことが大切です。この点でも自共対決が鮮明です。
幅広い立場の人々と対話へ
家計あたためる
―日本共産党の「デフレ不況打開策」のポイントは。
小池 日本経済の6割を占めるのは家計の消費(個人消費)です。ここをあたためて所得と需要を増やして不況から抜け出すというのが基本的な考え方です。
すでに発表している「経済提言」や「賃上げ・雇用アピール」の内容もふまえ、「アベノミクス」への対案としてまとめました。柱は4本です。
第一は、賃上げと安定した雇用の拡大で働く人の所得を増やすことです。わが党の「賃上げ・雇用アピール」にもとづく国会質問を受け、政府も経済界に申し入れましたが、賃金は下がり続けています。私たちは、大企業は内部留保のほんの一部を使うだけで賃上げは可能であり、最低賃金の引き上げを中小企業支援と一体でおこなうことなどを提案しています。
第二に、こういう時に絶対やってはならないことは、消費税の増税です。景気を冷え込ませ、逆に全体の税収も減らしてしまう。きっぱり中止することを求めます。財源は消費税に頼らない別の道でつくる。富裕層に応分の負担を求める、ゆきすぎた大企業減税をやめるということも具体的に提案しています。
第三は、社会保障です。現役世代も高齢者も安心できる制度を確立していく。10月から年金の削減をはじめようとしています。生活保護制度の基準引き下げを突破口に社会保障の大改悪が狙われています。これをやめさせ、社会保障の拡充を通じて将来不安をなくし景気を回復させていく。
産業政策に注目
―産業政策も提案されていることが注目されていますね。
小池 ええ、第四の柱として、内需主導の健全な成長をもたらす産業政策を提案しています。
日本の経済をけん引してきたのは、労働者の力です。ところが、いまの大企業は「国際競争力の強化」の名のもとに、人件費をコストとしかとらえずにコスト削減競争に走って、企業にとって宝である労働者を次々に切り捨てる。この結果、個人消費を冷え込ませ、技術力を低下させ、大企業の企業活動にも重大な影響を与えています。1990年代以降、雇用のルールがどんどん弱体化させられてきました。人間らしく働けるルールを確立することが大切です。
中小企業は、雇用の7割、企業数の99%です。ここが元気にならなければ、日本経済は復活しません。この間の中小企業政策は「選択と集中」の名のもとに、中小企業を切り捨てています。そうではなくて中小企業全体を視野に入れて振興支援策を進めていくことが必要です。
あるいは、▽自然エネルギーの開発と本格的普及、▽基礎研究を重視し科学技術、学問研究の基盤を強化する、▽農林漁業を、日本の基幹産業、地域経済の柱として振興する。本当に地に足のついた政策を強めていくことによって、日本の健全な成長を実現していくというまっとうな道をすすんでいこうじゃないかということを、産業政策ではかなり強調しています。
関連していうと、食と農を破壊して医療や保険や食品安全など国民生活のあらゆる分野に深刻な打撃をもたらす環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加は、まったく逆行するものです。交渉参加を撤回することを求めています。
日本の経済の行く末をまじめに考えている人たちと一番響き合う提言ではないかと考えています。経営に携わる方々も含めて幅広い立場の人たちと、おおいに話をしていきたいと思います。