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【文化】海外のお笑いを見るときの本当のハードルは何か?

2017/04/08 21:28 投稿

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他のところでやりとりしていたのですがだいぶ長大になったので、せっかくだからこちらのブログにまとめておこうと思います。


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日本人の欧米コンプレックスというのは、若い人にはイメージしずらいかもしれないが、今(現2017年時点)でいう40代後半以上の世代にはわりと存在していると思う。もう少し下の30代である僕が幼少の頃はまだテレビのCMで、カッコイイイメージとして西洋白人が起用されていたのを憶えている。

一方お笑いの世界に目を向けると若干異なる事情がある。特にお笑いファンクラスタになのだが、なんとなく「日本の笑いはレベルが高く、外国の笑いはレベルが低い」という先入観が広まっている。これは昔松本人志が、おそらく東京FMでやっていた「放送室」というラジオ番組発だったように思うが、「西洋の笑いなんてMrビーンみたいのばかりで低レベル」と言って、これまたある世代以上には極めて影響力が強い人だけに、浸透して今も空気のようにそのイメージが残っているのだと思う。

だが明らかに松本人志は、実際に海外のお笑いをいろいろ見た上で放言したわけではなかった。まあ作り手側の人間というのは研究者ではないのだから、誤解も含む発言にイチイチ目くじらを立てることもないと思うが、少なくとも評論家はちゃんと指摘すべきだし、それを鵜呑みにした”お笑いファン”も問題だった。

例えばMrビーンの件にしても、ビーン演じるローワン・アトキンソンがイギリス本国で最も評価されているのは多弁で毒舌の「ブラックアダー」というキャラなのをご存知だろうか?先にブラックアダーがあって、ある意味それと正反対の無言のビーンを演ったのだ。

またこういう議論をすると、弁護のつもりなのだろうが、「言葉の壁があるからMrビーンのようなサイレントの笑いなら世界でウケる」というロジックを持ち出す人もいる。だがそういう人は、具体的に何か作品を見て「言葉の壁」の存在を感じたことがあるのだろうか。「言葉が違う=言葉がいらないサイレントなら大丈夫」と観念的に考えて言ってるだけなのでは?だとしたら松本人志の放言と、質的には何も変わらない。

実際に作品を見ずに決めてかかっている風潮そのものに僕は疑問を感じ、一時期海外のお笑いをたくさん見てみた。日本に入ってきている程度ではあるし、外国語が得意なわけでもない。でも「海外のお笑いが低レベル」というのは偏見だと実感すると同時に、海外の笑いを見る上での本当のハードルは何なのかが分かってきた気がする。


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最も大きなハードルはふたつ。まず作品が字幕でなく声優が吹き替えている場合、セリフの意味は理解できても、言葉のリズムが大きく変わってしまうこと。お笑いをよく見る人であれば、例えば一文の中にオチのキーワードがどの場所にくるかだけでも笑いの大きさが変わってしまうのは理解できるだろう。

声優吹き替えのコメディが、独特の「愉快げ」な雰囲気を醸しながら(それはプロの声優たちの彼らなりの努力ではある)、しっくり笑いに繋がっていきにくいのは「意味の理解」よりもこの「リズム」問題が大きいと思う。

逆に字幕というのは、単純に「文章を読んで理解する」ものではなく、実際は耳から入ってくる外国語のリズムも無意識に重ねている。字幕の質にもよるが、画面に映る人物と自然にリンクするように出し方には気を遣っているものであり、意外だけれどもわりとリズム感は損なわれにくい。それがうまくいっていない字幕は、お笑い云々以前に、とたんに分かりにくくなるものだ。


そしてもうひとつのハードルは、「外国の言葉」ではなく、その国では当たり前のドメスティックな文化がギャグに織り込まれたとき。その国ではおなじみの有名人とか商品とかがネタの前提に使われる場合、なんとなく察することはできてもちゃんとは分からない。

これは作品によりけりで、意識的にそういうギャグばかりガンガン使っているものはさすがにお手上げだ。だがコメディ映画ではそういう作品はあまり多いとは思わない。日本人も先入観を持たずもっと気軽に、海外のコメディ映画をどんどん見ていけばいいと思う。日本は映画やシットコムの笑いがかなり手薄だが、引っ張られて日本製も盛んになっていくはず。映画の笑いはストーリーの中の笑いであり、話芸で例えるなら、ギャグを羅列する漫才よりも落語に近い(ZAZのような例外はある)。

アメリカで盛んな話芸は漫談=スタンダップコメディだが、こちらのほうがドメスティックなギャグの割合が上がる。スタンダップ的な笑いを日本でやったのは立川談志やツービートがすぐ思い浮かぶ。人生幸朗もそうかもしれない。個人的にはこの手の笑いは大好きだし、例えば元々スタンダップコメディアンだったウディ・アレンの漫談ネタ本なんか読んでみるとまた違ったタイプですごく面白いけど、一般的にどんどん外国のスタンダップを見ていこうと勧めるのはなかなか難しいだろう。


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以上これらすべて私見で、僕以上にたくさん世界の笑いを見てる人から異論・反論はあるかもしれません。また今回は「2つのハードル」に話を絞って、オススメ作品紹介のようなものは入れませんでした。いやいや自分はこう思う、お前はもっとこういうものを見ろ、等々のご意見はお気軽にどうぞ。
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