サヨナラ☆タブロイド

パウルくんに捧ぐW杯【延長戦】

2014/07/24 20:34 投稿

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「ドイツ優勝に全財産を賭けてしまった父親と、その少年に起こった奇跡」


「夢をあきらめないで」という熱いメッセージが込められている。

http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303484504580028782038355888

・・というわけで今回は、ご存知の方も多いであろう、某政府広告をトップに据えた。
明るい北朝鮮と呼ばれる某国であるが、なかなか粋な計らいを魅せてくれるものである。

今は亡きパウル君も、きっと母国の幸運を願ったことだろう。
そして今大会、国を挙げ予言を的中させた政府は、まさに彼の後継者と呼ぶにふさわしい。

おめでとうドイツ。ありがとうパウル君。ザマミろ広報!

サッカーに予定調和のギャンブルなんて存在しないんだよッ!



さて、前回記事(下記リンク)の掲載後、いろんなことがあった。
【前半戦】
http://ch.nicovideo.jp/a-complex/blomaga/ar552976
【後半戦】
http://ch.nicovideo.jp/a-complex/blomaga/ar572749
もともと【後半戦】で記事を〆るつもりだったが、さすがに後味が悪い。

前回記事のテーマは、サッカーにおけるスターシステムの批判であった。
結果としてそれは当たったけれど、あそこまでの結果を予見していたわけではない。

試合前に抱いていた私自身の認識も、いくつか修正された。
そこで今回は、この天と地の境に焦点を当て、大会を総括し(主に私が)スッキリしたい。

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まず手短に、ドイツ以外の試合とチームを概観する。

①アルゼンチンvsオランダ

「ピッチ上のチェス」という表現がピッタリの内容。戦術確認だけで飽きてしまった。
こんな試合ばかりなら、海の潮の流れでもゆっくり見ていた方がマシだろう。

結局PK戦までもつれ込んだが、これをコスタリカの善戦などとは同列に扱えない。
第2回電脳戦で塚田九段が見せた、意地の千日手と同じ気持ちで見ることも不可能だ。

なぜならこれは、異質なモノ同士の、非対称の硬直ではないからだ。対称の硬直は死だ。
こんな試合を喜ぶなら、人間が機械にとって代わる日も、そう遠くないだろう。


②オランダvsブラジル

3位決定戦の空しさを、改めて世界に印象付けた試合。
リアルタイムで見る気は起こらず、録画で視聴した。

今でもロッベンは一番好きだ。彼ほど痛快な選手はいない。見るだけでスカッとする。
ファンペルシーのプレーも最高に美しい。たとえ憎たらしいイケメンでも許せてしまう。

けれども心情的な部分で、この試合を素直に楽しむことは出来なかった。
メンタルを説明のための万能薬として用いるのは嫌いだけど、ここは勘弁してほしい。



ネガティブな話が続く。次はミネイロンの悲劇だ。

大会前、ブラジル守備陣を批判する声はゼロに等しかった。a.e.
ネイマール頼みの攻撃陣に対する疑問は見られたものの、守備は誰もが太鼓判を押した。

この現実と事前予想とのギャップは、いかにして生じたのだろうか?
もはや隠語となった7を、この場で、何とか理解可能なレベルに希釈したい。

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まず一つ、メンタル面の弱さを挙げる声があった。
たしかに、王国での自国開催のプレッシャーは特別だった。

とは言え、あまりこの点ばかり強調するのはどうだろう?
ネイマール、ベルナルジ、オスカルの3人以外、彼らは全員80年代(以前)生まれだ。
(なお、ドイツの平均年齢は25そこそこ)

もう一つ、守備的MFのタレント不足を挙げる声もあった。(フェルナンジーニョその他)
DFの錚々たるメンバーと比べて、たしかに守備的MFは見劣りしたかもしれない。

(ブラジル代表所属クラブ)
http://members.jcom.home.ne.jp/wcup/brazil.htm

それでも、今大会抜群の守備を見せたオランダ、アルゼンチンと比べれば、
中盤より後方のタレント不足を嘆くのは、いくらなんでも無理がある。

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T・シウヴァはとりわけ優れたプレイヤーなのだろう。

しかし、彼以外もトップチームに所属する脂の乗った中堅(以上)ばかりだ。
大舞台での経験も、決して浅くない。よって上記の2つは、根拠として弱い。



そこで浮かび上がったのが、以下の仮説だ。
「ブラジルの守備網は、少数精鋭の混成部隊だった」というものだ。

①圧倒的な運動量で、全員攻撃全員守備(ドイツ)

②守備に人数をかけ、スペースを埋める(オランダ&アルゼンチン)

上記2つの、物量による守備に対し、ブラジルは質の融合で勝負した。


この選択は、必ずしも非難されるべき類のものではない。
ブラジルがコンフェデ杯で優勝したのは偶然ではなく、こうした守備の賜物でもあろう。
(総失点数3で、最少失点での優勝を果たした)

高レベルの個性が上手く組み合わされれば、それは最高の爆発力を発揮する。

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しかし、彼らにとって不幸なことに、W杯はコンフェデよりも試合数が多かった。
もし、W杯が8チームだけで行われていたら、彼らはどれほど救われただろう。

ブラジル守備陣は替えが利かない名選手で、パズルピースのように構成されていた。
なにもT・シウヴァのみが、特別だったわけではない。

他の3カ国は、その守備スタイルを大きく崩さずに戦い抜くことが出来た。
またそれは、比較的等質だが高水準の組織的守備によって実現された。

一方彼らは、補給が利かない中、延長戦を含めて計7試合を戦い、そして玉砕した。
欠落した黄金のピースは、その損失を一層際立たせることとなった。

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ブラジルは無敗でグループリーグを勝ち上がった。クロアチア、メキシコ、カメルーン。
この2戦目で引き分けた時点で、彼らの絶対に負けられない戦いは始まっていた。

W杯グループリーグが、強豪のための肩慣らしやスクリーニングであった時代は終わった。
参加各国のレベルは、大会を追うごとに向上している。この傾向に歯止めはかからない。

サッカーでは一度のミスが命取りになり得る。

国を背負った死闘を、長期間、何度も連続して繰り返せば、
いかに名選手の集まりといえども、精神的消耗は避けられない。

巨人はやがて倒される運命にある。彼らが王者であり続けるために、W杯は長過ぎた。



ドイツvsアルゼンチンの決勝戦。
私はもちろん、はじめからドイツを応援していた。

・・尤も、私は4年以上前も同じことを言っており、別に予想が当たったわけではない。
単にボードゲーム好きの私が、昔から勝手にドイツびいきをしていただけの話だ。


(幸せなハンス)

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相手はアルゼンチン。

対戦相手やPKなどの幸運に恵まれてきたチーム。
悪いチームではないが、決勝にはやや物足りないという印象を抱いていた。

メッシなどの名手はいるものの、これまでのトーナメント戦は、お世辞に言っても凡庸。
オランダとスタイルは似るものの、攻撃の幅や監督のルックスも含め、同国には及ばない。

よって私のアルゼンチンへの評価は、せいぜい劣化版オランダといったところであった。

この試合も、ドイツの運動量を前に、いつ力負けをするのかの勝負と見ていた。

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私のこうした楽観的な事前予想は、もちろん見事に覆される。

彼らはこの場にふさわしいチームであることを、試合開始からわずか10分で証明した。

カウンター、ドリブル、絶妙なパス回しと、次々と好機を演出。
ドイツお得意のプレスも、次々にファウルやイエローカードとなって吸収される。

守りでは"影の宰相"マスチェラーノを中心に、各場面で危機を摘み取っていく。
ドイツ相手に互角以上の戦いを見せ、前21分にはイグアインが決定的なシュートを放つ。

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その後も、手に汗握る攻防が続く。しかし、お互いゴールに嫌われる展開となる。

ドイツのミドルシュートはいつもの迫力に欠け、ヘディングはポストに嫌われる。
後半43分にはクローゼが交代。代表最後のプレーとなった。(21日現役引退を表明)

一方のアルゼンチンも、後半開始直後のオフサイドによる幻のゴールの他は、
かのメッシも含めシュートが枠を捉えきれない。0-0のまま後半戦を終える。

延長戦開始後は、さらに激しいゴール前での応酬となる。
1分にシュルレ、7分にパラシオ。しかし、ゴールだけはどうしても入らない。



延長前半が終わって、私はあろうことかサッカーの女神に毒突き始めていた。
この両チームに、スコアレスドローのPK戦とは、あまりに酷い仕打ちではないか?

ここまでの闘志と、そしてゴールへの意志を見せた選手たちに対し、延長でも無得点。
そうかと思えば、いかに手負いの王者とはいえ、大観衆を前に大量失点も躊躇わない。

予定調和は好きじゃない。期待を裏切られるのだって、そこまで嫌いじゃない。
しかし、ここまで思いが通じず報われないスポーツとは、一体何なのか?

PK戦は、サッカーであってサッカーではない。
最高の選手と最高のチーム、そして最高の舞台を揃え、挙句その出口がサッカーではない。

女神はなぜそこまで我々をお試しになるのか?

①このまま試合は永遠に終わらず、全員が倒れるまで戦い続ける

②罰ゲームのようなPK戦を、この嗜虐心に満ちた女神の気まぐれに委ねる

そのどちらがより幸福か、私が馬鹿げた妄想に耽り始めたとき、ついに試合は動いた。

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延長後半8分。

これまで再三ピンチを防いできた14番、マスチェラーノと、シュルレとの1対1。
シュルレは左サイドを駆け上がり、中央へクロス、マスチェラーノの足はわずかに届かず。


そして・・・ボールは空中でほんの一瞬バウンドしたのち、ネットへ深々と突き刺さる。

もはや子ども一人騙すことは出来ない。紛れも無くドイツのゴール。


女神の祝福は、ベテランクローゼの置き土産にほほ笑んだ。
23歳のシュルレから、22歳のゲッツェへ。


新星のたった一度の輝きは、このスタジアムを被う深い影をも振り払った。

そして舞台は幕を閉じる。新時代を告げる鐘の音の、長き余韻をとおくに残して。



≪延長戦終了後の中身の無い露骨な尺稼ぎ≫

前回の【後半戦】で、もう記事として完結するつもりだったのだけど、こうなった。
言いたいことは大体言ったつもりだったし、あとはゆっくりよいサッカーとW杯を。

・・そんな甘い願望は、その後の試合で見事に打ち砕かれ、私は再び記事を書くことに。

いや、いくらなんでもあれは無いよ・・・と、まあ、ともあれこれで最後だ。

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さて、もうちょっと言うと、本来書かれるはずの無いこの記事を書くに至ったのは、
よりにもよってブラジル相手に、精神論でお説教する新聞コラムを目にしてしまったからだ。

そりゃ、ファンが応援代わりに、何の中身も無い精神論を訴えるのは分かる。
取り立てて打つ手がなくても、とりあえず何かやってみる方が、上手くいくこともあるし。

けれどブラジルのファンでも何でもない日本人(サッカーファンかどうかも怪しい)が、
他国の一流選手に、そんな文句を言うのはさすがにどうだろう?それは応援ですらない。

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根拠のない精神論は、その責が自らに及ばぬ限り、常に支持される。

というか精神論は、実際にそれをやる本人以外、その責を問われることは決してない。

なぜなら他人の心の中身を、ソースコードの様に開示することは決して出来ないからだ。
勢い、第三者の存在し得ない自白による供述調書が、いとも容易に完成してしまう。

形を変えた結果責任と言えばそれはそれだが、失敗の原因は最期まで分からない。
旧日本軍みたいな失策も、これでは掉さすことも難しかろう。



せっかくだからついでに言っておくと、NHKのW杯総集編はいつもながら大変良かった。
(他があれだからとは決して言ってはならない)と、一応NHKを翼賛しておこう。

他にも言いたいことはあったような気もするが、都合上思い出せないのでよしとしよう。

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あと、アギーレ監督の就任も(それまでの経緯はさておき)大変喜ばしい。
彼ならば現在の日本代表に、合理的な視点からメスを入れてくれるだろう。

一部、日本人監督を推す声もあるが、今の日本はそこまでの地位に無い。
少なくとも『話の分かる』日本人監督が、メディアの玩具にされるより遥かによいだろう。

ともかく、ここまでして招聘したのだから、多少の敗戦や批判に屈せず、
4年後のロシア大会が終わるまで、きっちりとサポートしてほしい。

そして今度こそ、偶然ではなく必然で、内容のある勝ち点を挙げてほしいと思う。

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ただし協会は・・やっぱりどうだろう・・?(人員刷新しろとは言わないけどさ・・)

前の総括見た限りだと、協会はあの時点でも絶対ブラジルが優勝すると思ってただろ・・

(ブラジルW杯:選手はもっと激しさを 日本技術委が総括)【14年7月1日】
http://mainichi.jp/sports/news/20140702k0000m050105000c.html

ていうか、W杯が無事に終わる前から総括を行うこと自体、どう考えてもアブナイ。

準決勝でのブラジルの大敗は、百歩譲ってまあ仕方ないものとしても、
もしネイマールが準々決勝で選手生命を断たれていたら、肉弾サッカーは完全に黒歴史だ。

保身しろとまでは言わないが、サッカーは激しいスポーツだ。
勝ち負け以前に、万が一の事故も起こり得る。

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W杯は極上のサッカーである以上に、極限のサッカーでもあった。それもまた真の姿だ。

そんな中、最後まで魔法を失わなかったドイツに栄光あれ。

(24年越しの祝杯に)

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