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Kritaガイド@ Niconico 3.5 Kritaのブラシシステム

2016/08/13 14:41 投稿

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現在地:↑3.4 色ツール
←目次現在地:3.5 Kritaのブラシシステム
現在地:↓3.6 ブラシプリセットの管理

さて、先までの項ではKritaにおける色の扱いについて解説してきました。Kritaで描画を行うにはまずそれに使用する描画色を選択しておく必要があるというのがKritaのブラシの解説を理解する上での最低条件です。それを踏まえて解説を始めていきましょう。

3.5 Kritaのブラシシステム

ブラシの豊富さはKritaが誇る特徴の一つでもあります(ver. 3.0時点でデフォルト状態で121個)。ぜひ十全に活用を図りたいものです。そのためにはKritaのブラシのシステムを理解しておく必要があります。

3.5.1 ブラシエンジン

いくつかの数値及び数値のグラフによる設定からペンタブレット・マウス等からの入力をキャンバス上への描画へと変換するプログラムです。

Kritaのブラシシステムの大きな特徴の一つとして、通常のペイントツールでは一つに統合されているブラシエンジンが複数のブラシエンジンに分割されて実装されていることがあげられます。このような実装は拡張性が高く新しいブラシエンジンを追加することで比較的楽に新たなブラシの機能を実装できるという特徴がありますが、異なるブラシエンジン間では互換性が失われるという欠点もあります。

このような実装はペイントツールの中ではかなり独特なものです。Kritaはプラグインベースという基本的なコンセプトから最初の安定版からこの形式をとっていました。

Kritaのブラシエンジンは以下の16種類です。

ブラシエンジン説明
ピクセル所謂通常のブラシ。最も初期から実装されていたブラシエンジンであり、もっともよく用いられることになるブラシエンジンでもある。
混色描画する場所にある色に影響を受けて描画する色が選択した色から変化するという特徴を持つ。主に油彩・水彩ブラシやぼかしツールとして使用される。
スケッチラフスケッチや行書のような荒々しい線を描画できる。おそらくKrita独自のブラシエンジンの中では最も美しく、実用性も高いもの。
絵筆複数の毛を束ねて作られた「毛筆」をシミュレーションするブラシエンジン。開発段階では「Sumi」と呼ばれていたらしい。
形状ブラシで囲った範囲が選択した色で均一に塗りつぶされるという独特の挙動を示すブラシエンジン。投げ縄選択の選択範囲を塗りつぶすと言えばわかりやすいかもしれない。主にアニメ塗りなどに用いられる。
スプレースプレーをシミュレーションするブラシエンジン。
ハッチングデッサンなどで線を平行に引いたものをいくつかの角度で重ね合わせて影を表現するハッチングと呼ばれる描画法をシミュレーションするブラシエンジン。その他にも漫画のスクリーントーンなども表現できる。
グリッドプチプチのような一面に丸を敷き詰める描画を行う。
カーブ滑らかで強弱の付いた線を描画できる。マウスを使って絵を描く場合に便利。
ダイナミック少しマウス・スタイラスペンを動かすだけでブラシが非常に大きく動くブラシエンジン。
パーティクルこのブラシエンジンで描画すると多くの細い線で構成された複雑な図形が描画される。
複製一度ある場所に描いてあることを記憶させると、その複製を描画するようになる。
変形描いてあるものを変形させるブラシエンジン。
接線法線ペンタブのスタイラスペンの傾きデータを利用して法線マップを描画するブラシエンジン。Krita独自のブラシエンジンの中でも最も独創的なものであろう。
フィルタ描画した場所に設定されたフィルタの効果をかけるブラシエンジン。
チョークただあるだけのブラシエンジン。特に用途はない。

3.5.2 ブラシプリセット

ブラシプリセットとはブラシエンジンの設定を設定ファイルとして外部化したものです。これをブラシ使用時にブラシエンジンに読み込ませることで目的の設定へと即座に切り替えが可能になります。設定の項目が異なるため、異なるブラシエンジン間でブラシプリセットを共有することはできません。

Kritaにはデフォルトで100個以上の膨大な数のブラシプリセットが入っています。

3.5.3 描画ツール

ツールボックスからアクセスできるツールの中でも、キャンバスに描画を行うタイプのツールをこう呼びます。また描画の際にはブラシエンジンを使用して描画を行うことも特徴の一つです。描画ツールに分類されるツールは以下の通りです。

  • フリーハンドブラシツール
  • 直線ツール
  • 矩形ツール
  • 楕円ツール
  • 多角形ツール
  • 折れ線ツール
  • ベジェ曲線ツール
  • フリーハンドパスツール
  • ダイナミックブラシツール
  • 対称ブラシツール

※アプリケーションのジャンルとしての描画ツールと混同しないように気を付けてください。

3.5.4 Kritaのブラシシステムの概要と理解

と、ここまで来て「…?」となっている人がかなりの数いるかもしれません。いくつかあるブラシエンジンそれぞれの説明についてはおおよその人が理解できたでしょうが、ほかは正直さっぱりわからなかったかもしれません。

では、もうちょっとわかりやすく解説してみましょう。

上の図を見てください。机に置いてある紙はこの場合キャンバスのことです。

この時、手にとられ、様々な表現のために横にも山と積まれている大量の筆記用具がブラシプリセットにあたります。

筆記用具には様々な種類があります。消しゴムはボールペンとは違いますし、マジックペンで油彩筆の質感を再現するのは不可能とは言わずとも非常に困難です。この時、その筆記用具の種類こそがブラシエンジンにあたります。

そして、ペンを手に取りキャンバスに絵を描いているその手が描画ツールにあたるものです。

Kritaにおけるブラシとは何かといわれた時、強引にでも答えを出すならその答えはおそらく「ブラシプリセット」になります。ただ、Kritaが独特なのは

  • そのブラシプリセットが複数のブラシエンジンに分類されており、異なるブラシエンジンのブラシプリセットは全く違った特性を持つ (筆記用具がその種類によってそれぞれ全く特性を持っていることを考えてみてください)
  • ブラシプリセット単体ではなく、そのブラシプリセットを使って描画ツールで描画を行うということ (筆記用具が転がっていてもそれだけでは無用の長物ですが、それが適切な手に持たれた時はまさに魔法の杖になることを考えてみてください。)

という2つの事項があるためです。ひとまずはこの2つを知って、上の例えにだいたい納得できればKritaのブラシシステムの概要を理解できたと言えるでしょう。

3.5.5 Kritaの設計思想―全てをブラシに

もしかしたら、既にKritaのツールボックスドッキングパネルに消しゴムツールやぼかし/指先ツールがないことに気付いている人がいるかもしれません。しかし、これはKritaにそれらのツールが実装されていないという意味ではありません (消しゴムがないペイントソフトなど、想像するだけで恐ろしい代物です) これらは全てブラシプリセットとして実装されているのです。

「Kritaはブラシがたくさんあるのが強み」という評価がしばしばみられますが、それは決して間違えではないのですがやや理解が浅い言い方でしょう。ブラシエンジンの項にあるブラシエンジンの一覧に「変形ブラシエンジン」や「フィルタブラシエンジン」というものを見つけて「おや?」となった人がいるかもしれません。Kritaのブラシが豊富なのは、Kritaの設計思想自体と関係があります。「全てをブラシに」という思想です。

先ほどはKritaがブラシプリセットを使って描画ツールで描画を行うことを説明し、そしてそれ手が筆記用具を持って絵を描くことに例えました。考えてみて欲しいのですが、ここで手はごく普通のブラシ―例えば鉛筆、ボールペン、油彩筆など―しか持てないということがあるでしょうか。冷静に考えれば、消しゴムを持ってもいいでしょうし、彫刻刀を持ってもいいでしょう。あらゆる道具を手で持って作業したほうが楽ではないでしょうか?

このようにKritaにおいてブラシは単なるブラシ―描画を行うツール―というものを超えた役割を与えられています。鉛筆やサインペン、水彩筆などのキャンバスに描画を行う通常の意味でのブラシに加えて、消しゴム、指先ツール、範囲指定フィルタ、ゆがみツール等様々なツールがブラシプリセットとして実装されているのです (当然それらのツールをブラシプリセットにするために、いくつか特殊なブラシエンジンが実装されています。先に上げたフィルタブラシエンジンや変形ブラシエンジンはまさにそういうブラシエンジンにあたります。)

そうしてツールの垣根を超え平等にブラシプリセットとして実装された「ツール」たちを使い、描画ツールがキャンバス上に「描画」を行います。消しゴムブラシプリセットを使っているならその「描画」は描いてあるものを消す動作になるでしょうし、指先ツールにあたるブラシプリセットを使っているならその「描画」は色の境界をぼかす動作になるでしょう。

さらにこの設計思想にさらなる力を与えるのが2.3.4.2、2.4.4.1でも述べた「ブラシプリセット」です。

キャンバス上で右クリックするだけで表示できるポップアップパレットからは

  • ブラシプリセット

にアクセスできます。通常「ツール」として実装されているものの多くはKritaではブラシプリセットとして実装されています。つまりツールボックスに一切触らずに、ポップアップパレットから色とブラシを切り替えるだけでキャンバス上でほとんどの操作を行えてしまうのです。


ここまでKritaのブラシシステムについて延々と説明してきましたが、こんなことをやっている理由の一つにブラシシステムの無理解、特に消しゴムやぼかしツールの実装のしかたからKritaを諦めてしまう人がそれなりの数いることがあげられるでしょう。

確かにKritaのブラシの仕様は独特なところがあります。しかし、それは決してKritaのブラシシステムが劣っているということではなく、しっかりと使いこなせれば非常に高いパフォーマンスを発揮できるのです。おそらく本ページはそこに皆さんが至る大きな助けとなると思います。


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