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【国立国会図書館】民明書房は存在した!!【知っているのか雷電】

2013/07/09 23:14 投稿

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1.民明書房とは
おそらく30代以上の男性限定であろうが、みなさんは民明書房を御存知だろうか?民明書房とは『魁!!男塾』(宮下あきら、集英社)という漫画に出てくる架空の出版社であり、登場人物が使う拳法や暗殺拳、決闘方法などを説明する際に引用元の書誌情報の中に書かれているものである。信ぴょう性は皆無であり、荒唐無稽で突拍子もない事があたかも本当のことのように書かれており、当時の小学生は錯誤して民明書房の書籍の有無を書店に尋ねたという冗談話が残っている。1)
実例をあげると下記のようなことが書かれている。

『纏劾狙振弾…棍法術最強の流派として名高いチャク家流に伝わる最大奥義。この技の創始者宋家二代呉竜府は正確無比の打球で敵をことごとく倒したという。この現代でいうゴルフスイングにも酷似した打撃法は、運動力学的観点からいっても弾の飛距離・威力・正確さを得るために最も効果的であることが証明されている。ちなみにゴルフは英国発祥というのが定説であったが、最近では前出の創始者呉竜府の名前でもわかるとおり、中国がその起源であるという説が支配的である。
民明書房刊『スポーツ起源異聞』より』2)

などと書かれており、前述したとおり明らかに荒唐無稽であるが、あたかも本当のことのように書かれているのが特徴であり、シリアスな笑いを取ることを目的としている。
漫画上の設定では1926年(大正15年)に大河内民明丸という人物が創業した出版社とされており、リアリティある設定をすることで『遊び』『笑い』を提供している。
また、近年ではポップカルチャー分野において、この『遊び』『笑い』部分から方方で民明書房が使われるようになっており、3)ある特定の分野では微量な浸透を見せている。
簡易にまとめると、民明書房とはリアリティを持たせて『遊び』『笑い』を作り出すために想造された架空の出版社である。

             魁!!男塾 宮下あきらより

2.実在する民明書房
さて、ここから本題に入ろう。まず民明書房は確実に存在しない架空の出版社であることは間違いがない。しかしながら、民明書房は実在していたのである。もちろん民明書房の笑いの種として冗談で引用元を民明書房にするつもりはない。これは偶然の発見なのであるが、私は国立国会図書館のデータベースを参照していた時のことである。その時、平勢隆郎『正しからざる引用と批判の「形」』における「正しからざる引用と批判の「形」」(原文ママ2010年 井上了 民明書房)というタイトルの図書を見つけ、その出版社を見た瞬間愕然とした。そう、その出版社が民明書房だったのである。4) そもそも国立国会図書館とは日本に存在する出版社から献本制度により納本され、それが閉架書庫に収蔵される仕組みになっている。基本的には日本で出版される図書であればすべて収集対象になっており、献本されれば確実にそれは実在することになる。恐ろしいことに民明書房が少なくとも2010年より存在しているのである。
さて、ここで私はいくつかの疑問をもった。そもそも平勢隆郎とはどんな人物なのか、著者の井上了とはどんな人物なのか、平勢隆郎『正しからざる引用と批判の「形」』における「正しからざる引用と批判の「形」」とはどんな図書なのかそれについて解き明かしていきたいと思う。




3. 平勢隆郎とは
さてここで私は平勢隆郎について調べてみた。平勢隆郎は東京大学東洋文化研究所の教授であり、古代中国春秋戦国時代を研究している学者である。5)どうやらこの人の著作物が『正しからざる引用と批判の「形」』というわけである。ちなみにこの方のホームページ(実際にはサイトだろう)なるものが存在するわけだが、一目見た瞬間すでに閉鎖済みであるが愛生会病院を思い出すほど迫力のあるデザインである。もし興味のある方がいらっしゃるのなら閲覧して見ることをおすすめする。6)

4. 井上了とは
次は井上了について調べてみたいと思ったのだが、井上了という名前が一般的すぎる点、また、中国史や思想史に関する学者の井上了7)が『正しからざる引用と批判の「形」』における「正しからざる引用と批判の「形」」を著作に挙げていない点から、井上了という人物がいったい何者であるのか調べようがなかった。平勢隆郎の分野から考えるに中国史や思想史に関する学者の井上了がこの井上了であるという可能性が高いということしか言えない。本人に連絡をして取材したいが検証可能性を満たさないため今回は取りやめることにした。現状、おそらく中国史や思想史に関する学者の井上了だろうとしか言えないのである。





5. 平勢隆郎『正しからざる引用と批判の「形」』における「正しからざる引用と批判の「形」」
最後に著作について幾つか調べてみた。CiNii Books 8)で著書を調べてみると法政大学図書館に置かれているだけであった。また、Amazonや紀伊国屋書店のデータベースを検索してみても販売された形跡が見当たらなく、一般に流通していないこともわかった。つまり公式的には法政大学と国立国会図書館の2冊しか存在しない事になる。さて、その内容であるが、法政大学図書館の分類記号を見るに289.1と記されておりこれが個人伝記に属する内容のものであることがわかる。9)  中身を見てみないことには判然としないが、タイトルからして平勢隆郎の著作を批判し、その人生について書いた図書なのだろう。しかも流通・販売をしていないことから数冊刷られた同人誌のようなものであった可能性も想像できる。まったくもって謎の書物である。

6.結局、民明書房は存在するのか?
では、民明書房という出版社が現実世界に存在するかというと、上記で調べてみた結果から類推するしかないが、流通・販売を前提としていない以上、出版社は必要ないので、井上了個人が創りだした一種の冗談ということなのではないだろうか?そもそも民明書房は怪しげな中国拳法や暗殺拳を扱った出版社である。同じ中国の歴史や思想を取り扱うにあたり、これほどジョークの効いた出版社はなかなか無いだろう。また、国立国会図書館にわざわざ献本しているのも実に面白い。井上了という人物がいかに面白い人物であるか思い知らされる。

民明書房は出版社として実態が証明できないが
公式的なデータベースにはちゃんと存在する!!押忍!!

1) 民明書房が実在すると信じた奴 http://retro85.blog33.fc2.com/blog-entry-150.html (2013.7.8)
2) 民明書房大全 2004年 集英社 宮下あきら ISBN-13: 978-4088594699
3) 民明書房(個人サイトとしての一例) http://g-tavern.com/mimmei/ (2013.7.8)
4) NDL-OPAC https://ndlopac.ndl.go.jp/F/JBQAUD1FKITLBPESQA6HIQ9JLVIGCTKLIA939YA1AQP743CMK7-53549?func=full-set-set&set_number=235641&set_entry=000001&format=999
5) 東京大学東洋文化研究所 http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/faculty/prof/hirase.html (2013.7.8)
6) 平勢隆郎のホームページ http://edo.ioc.u-tokyo.ac.jp/edo2/edo.cgi/hirase (2013.7.8)
7)J-GLOBAL http://jglobal.jst.go.jp/detail.php?JGLOBAL_ID=200901019120446089&e=BKNAM (2013.7.8)
8)CiNii Books http://ci.nii.ac.jp/books/?l=ja (2013.7.8)
9) 日本十進分類法新訂9版 2002年 日本図書館協会
サムネ 魁!!男塾 宮下あきらより


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