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【デレマス小説】灰色の空で笑うあなたへ 第3話「心を縛る鎖のように」

2020/06/16 18:00 投稿

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ひょんな事から都内のデザイン会社でバイトをする事となった。

と言っても、下請け会社の広報担当として雑誌の表紙なんかを描く仕事なので、
自分の望んでいた仕事とは少し違うが、引き受けた手前で贅沢は言えないし、
このご時世で自分から仕事を選べるなんて到底出来ず、社会人の下積みと考えれば、
案外易い仕事とも思えた。

毎朝6時に起床し、電車で1時間半ほど掛けて出社して、デスクの前にあるPCからIllustratorやPhotoshop、時にはペンタブなんかを使って表紙の下書きを何枚も描き下ろし、
それを編集長に提出して許可を得られた絵だけが採用され、雑誌の一面広告となる。

読者が興味を惹かれる絵、雑誌の部数が飛ぶように売れるような絵。
自分の描きたかった絵ではなく、「お金に変われる絵」を描き続けている事にようやく私は気付いたのだが、その頃にはとっくに手遅れで、売れる絵を描かなければ生活が出来ない。
そんな窮地に追い込まれながら、睡眠時間を最低3時間まで削って摂るようになり、
ただひたすらに、窮屈で閉鎖されたような空間の中で、私は絵を描き続けていた。

そんな日々が続いたある日、あまりの貧血に私は自宅で倒れ込んでしまった。

視界がぼやけ、頭の中が真っ白になる。
色褪せていた綺麗な世界が、途端に薄汚れていき、そのまま目の前が真っ暗になった。
描きたかった世界、私が見たかった世界。
そんな世界など本当にあるのだろうか。

気が付いた私は、都内の総合病院のベッドで横たわっていた。
しばらく点滴を打てば治るそうだが、体調管理を考慮して2~3日ほど入院するらしい。
机の上に置いてあるスマホからLINEの着信音が鳴り響く。
会社からの上司で、退院出来たらすぐにでも新刊のイラストを描いて欲しいとの事だ。

こんな状態になっても、まだ私は「お金に変われる絵」を描かなければならないのか。
そもそも私の描きたかったものとは何なのか。

病院から眺める窓の景色は、ずっと曇天のままだった。

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