日本シーレーン問題研究会

中国の進出によって日本の安全が南太平洋から静かに、しかし大きく損なわれつつある

2013/11/13 10:14 投稿

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丸谷元人著「日本の南洋戦略」(ハート出版)より

遅れてやってきた飛行機に乗り込み、急上昇した期待の窓から外を眺めると、かつて我々の祖父達が、病魔と敵が襲い来る飢餓地獄の中で、ある者は母を思い、あるいは愛する妻子の面影を目に浮かべながら死んでいったに違いない海岸線が見えた。

日本兵は、あの湾曲する海岸線に沿って日本の方向に向けて脱出していったが、ほとんどがその途中で人知れず消えてしまったのだった。

あの密林の土の下に、そしてあの海の水底に、今でもまだ何千ものご遺骨が眠っていると思った時、涙がボロボロ流れた。

そして、「自分は必ずまた帰ってきます」と心の中で誓った。

帰国後、内定していた商社に電話をし、入社を辞退する旨を伝えた。

身勝手きわまりないこの心境の「変化」によって、大変な迷惑をかけてしまうことに対し、本当に申し訳ないという気持ちもあったが、しかし日本には私の代わり以上に、もっと優秀な人間はいっぱいいる。

一方で、パプアニューギニアでのこんな現実を知ってしまった人間は、そんなにはいないはずだ。

だったら、祖父の世代が何十万と命を落とし、また何百何千もの現地人が、日本人を助けようとして死んだこの国と日本を再び繋ぐため、何かをしようと思った。

その孫の世代として、一人くらい自分のような「大馬鹿者」がいても良かろう。

「賢い」者は他にもたくさんいる。だったら自分はあえて「大馬鹿者」になろうと思った。

そしてそのためには、日本での地位や安定を自らの安心のために求めることは、いっさいやめようと心に誓ったのであった。

以来10年、パプアニューギニアでいろいろなことをやろうとし、多くの人々に会った。

失敗も多く、立ち直れないかと思ったこともあったが、しかし根本的な部分は全く変わらずにいられたことは幸いであった。

それは全て、日本の兵隊さんが向こうの人達と築いてくれた「信頼」のおかげであった。それで何度救われたか判らない。

その間、パプアニューギニアが、実は知られざる「巨大な資源埋蔵国」であり、地政学的にも日本の「生命線」であるということに気付くと共に、当の日本では官民ともにそのことに全く気付かずにいて、しかも近年の急激な進出によって、日本の安全が南太平洋から静かに、しかし大きく損なわれつつある現状を知るにつれ、大きな危機感を覚えもした。

今から書くことは、過去10年間パプアニューギニアに関わった30代の若者が、上は首相や大臣クラスの閣僚から、下は奥地の村に住む老若男女に至るまで、様々な階層の人々と出会って寝食を共にし、またいくつかの「周辺国」の軍幹部や情報関係者らとも接触し、自身も危ない目に遭い、また何度も苦しい風土病に冒されながら得たわずかな経験と、そこから導くに至ったいくつかの確信についてである。

この本を読んでくださる皆さんが、少しでもパプアニューギニアを含む南太平洋のことを知り、私達戦後日本人が無意識のうちにどれだけの「忘恩」を重ねてきたか、そして現地の人々が、今日でもなお、どれだけ私達日本の「力」に期待してくれているかを知ると同時に、この地域が我が国の「生命線」であり、その安全保障環境の維持が、私達一人ひとりにとってどれだけ重要な意味を持つのかを理解していただけるのであれば、これに勝る喜びはない。


応援宜しくお願いします!


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