日本シーレーン問題研究会

「日本の生命線」シーレーン(海上交通路/SLOCs)講座 第19回

2013/10/14 20:42 投稿

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ロンボック海峡の入口を守るオーストラリア海軍
インドネシアの海軍力が脆弱であり、とても中国の潜水艦隊に対応可能なそれではない事はすでに述べた通りであるが、そのインドネシアの背後には、オーストラリアという「大国」が控えている。

オーストラリアとインドネシアは、互いをして密かに「仮想敵」と見なしてはいるが、日本にしてみれば、この両国にはあまりケンカをしてもらっては困る。インドネシアは非常に親日的な国だし、オーストラリアは太平洋の安全保障を考える上でも、日本の強力なパートナーになり得るからだ。

事実、日本の商船隊は、インド洋の南東海域からインドネシア周辺海域に入って行くが、その際にオーストラリアの近くを通過して行く。かつて第二次大戦中は、この海域において日本帝国海軍の潜水艦隊が「通商破壊作戦」を実施し、英領インドやスエズ運河を越えてオーストラリアに戦略物資を運んで来る英豪商船に対する攻撃を加えていた事を考えると不思議な感じがするが、今日この海域において、日本はかつて攻撃を加えていたオーストラリアの海軍力に頼らねばならない。

事実、オーストラリアはインドネシア経由でやって来る大量の中東・南アジア系の難民に悩まされており、そんなオンボロ船でやって来る彼らを早期発見して阻止するため、時刻の海軍をしてこの周辺海域に多くの艦艇や航空機を配置しているが、この事はすなわち、この周辺海域の安定に結果として大きく寄与していると言っても良いだろう。

日本の潜水艦を欲しがるオーストラリア
オーストラリア国防省は近年、中国のアジアにおける軍拡を念頭に置きつつ、東西は太平洋からインド洋まで、そして南北は赤道以南から南極方面に至るオーストラリア周辺の広大な海域を防衛するためにも、今後オーストラリア海軍の潜水艦保有数を現在の6隻から12隻体制に倍増する方針を示しており、またその艦のサイズは4000トン以上のものを導入するとしている。そして、ロワン・モフィット海軍少将をプロジェクト・リーダーとして、新型潜水艦導入計画を実際に動かして来た。

そこで出て来たのが、日本から「そうりゅう」型潜水艦を導入出来ないか、という考え方である。なぜなら、日本は世界で唯一、オーストラリアが将来必要とする「野心的な」、つまり高度に充実し、かつバランスの採れた4000トン級の通常動力型潜水艦を建造している世界唯一の国であり、そんな「そうりゅう」型であれば、増強する中国海軍の水上艦艇や潜水艦部隊に対して、かなり優位な戦いを展開する事が出来るからである。実際、オーストラリア側からのラブコールにはかなり熱いものがあるし、すでに一年以上、日豪海軍関係者の間では実務的な話し合いが行われて来た。

日本は今のところ、潜水艦の完成品を外国に売るつもりはないと指摘されているが、そこで関係してくるのが、昨年末からにわかに話題になり始めた「武器輸出三原則」の見直し論議である。もちろん、過去の全く事例がないわけではない。例えば、かつて航空自衛隊で使用されていたF104戦闘機は、35機がアメリカ経由で台湾に売却され 中華民国空軍第3大隊に配備されている(阿里山計画)。だから、決して不可能というわけではない。

一方で、武器を製造し、海外に向けて販売することには「死の商人」的なイメージがあるし、非常に気をつけなければならない事が多いのも確かである。例えば、以前に朝日新聞が指摘していたように、もしイスラエルに日本製の武器が売却された場合、これまで非常に厚い友好信頼関係を築いて来た中東諸国との関係に亀裂が入るかもしれない、などという問題もある。だから、運用にもいちいちの政治判断が必要なのは当然の事であろう。その辺りは日本も十分に気をつけなければならない。

日豪、日イの「二国間海軍協力」も必要
インドネシアとオーストラリアの関係がイマイチしっくり来ない最大の理由の一つは、やはり「東ティモール問題」だろう。1990年代後半から急に激化した「東ティモール問題」は、2002年まで混乱を極めた、オーストラリア軍が主導する多国籍軍が現地に入り、インドネシア軍の息のかかった独立阻止派を押さえ込むことで独立は実現したが、これはインドネシアの対豪感情を著しく悪化させた。

当時、私の友人の何人かはオーストラリア軍人としてこの掃討作戦に参加しており、彼らは自らの任務が崇高で人道的な者と信じていた。一方で、その頃、オーストラリアの大学院で同じ寮にいたインドネシア人留学生は、オーストラリアの強引な「内政干渉」に対して怒りをあらわにしており、「絶対に許せない」と型をふるわせていたのである。

インドネシアにしてみれば、東ティモールはオーストラリアに「盗まれた」という感覚を持っている。遠くない過去にこんな問題があれば、その両国がすぐに仲良くなる事は難しい。しかし、日本はそんな両国の「仲直り」を待っているわけにはいかない。かといって、必要ともされていないのに、わざわざ面倒くさい仲裁に入っている時間もない。すると、日本はこれら利害を異にする国々とは、個別に良好な関係を維持して行くしかないだろう。

その中で、当面考えるべきことは、やはり海軍同士の相互協力である。海上自衛隊がインドネシア海軍と交流し、またオーストラリア海軍とも個別に交流訓練する。さすれば、日本はこのロンボック海峡のみならず、インド洋南東部からインドネシア周辺(かつては濠北と呼ばれた地域)の知見をもっと多く得る事が出来であろう。

(続く)

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