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デレステのユニットSSRに関する情報整理といくつかの論考

2019/11/24 15:52 投稿

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【2019/11/24深夜 追記と訂正を追加】




○序論

 デレステには今や300種を越えるほどのSSRが実装されているが、その中にいくらかの物議をかもすSSR群が存在する。ユニット名を冠し、ある程度共通した衣装がデザインされている、通称ユニットSSRだ。


 このユニットSSRが紛議を招く理由はいくつかある――アイドルごとのSSR実装枚数格差が広がるとか、ユニット内で衣装の大部分が使い回されているから手抜きだとか。新規SSRの実装は概ね讃辞や歓喜の声が方々で聞かれるものだが、ユニットSSRに関しては、少しばかり穏当ではない空気になることもある。

 好悪や評価は人それぞれあるかとは思うが、ツイッターでの論議を横から眺めていると、どうにも首を傾げたくなるような言説を唱えている人が目に付く。少し調べれば分かる程度の基本的な情報も把握していないばかりか、ひどい場合は否定の結論ありきで語りたいがために情報の取捨選択が恣意的に過ぎることさえある。
 繰り返しになるが、ユニットSSRの好き嫌いは各々の自由だ。だが、嫌いが高じるあまり「ユニットSSRは運営の雑差配の最たるもの」と宣っている当人が、自分の論考の粗雑さに気づかないでいるというのは、ひどく滑稽だ。
 そこで本稿では、私情や私見による認知の歪みを可能な限り排除してユニットSSRについて論考できるよう、いくらかの数字や情報を整理する。そしてれらのデータを元に、筆者なりの論考や推測を書き添えていくとする。

 なお、最初に断っておくが、本稿は「ユニットSSRが実装されても怒るべきじゃない、歓迎しろ」と強いる意図は一切ない。また、一部ユーザー層の心情なども意図的に考慮から外しているが、だからといって感情的な面をまったく無価値で考慮に値しないだと判断しているわけでもない揺るがしようのない事実を整理し、後に続く論考の助けとするのが本稿の最大の目的だ。
 誰が泣こうと喚こうと、物理定数は変わらないし円周率が3.14から4.28に変わったりもしない。前提条件に誤りや思い違いがあったなら、導かれる結論も誤りになるのが必定である。あなたがユニットSSRをどう捉えようと、私は関与しないし興味関心もない。ただ、ちょっと真面目に論考してみたい人、自分の認識を見直すきっかけがほしい人がいたなら、本稿はいくらかの助けにはなるはずだ。


○事実整理と仮説

 まずは現状のユニットSSR実装状況を整理してみよう。本稿執筆時点で11枚あるユニットSSRの実装日は、それぞれ以下の通りである。

2016/09/17[P.C.S.]小日向美穂
――
2017/04/17[ポジティブパッション]日野茜
――
2018/07/19[P.C.S.]五十嵐響子
2018/09/11[P.C.S.]島村卯月
2018/11/12[individuals]星輝子
2018/11/19[羽衣小町]小早川紗枝
2018/11/22[individuals]森久保乃々
2018/12/10[individuals]早坂美玲
――
2019/01/18[羽衣小町]塩見周子
2019/01/25[ポジティブパッション]本田未央
2019/03/18[トライアドプリムス]渋谷凛


 人によってはこの表の時点で驚くかもしれない。ユニットSSRが話題に頻繁に上がるようになったのは、少なくとも私のTwitterのタイムラインでは2018年の夏から冬にかけてだった。その一方でユニットSSRの実装それ自体は2016年秋に始まっている


 つまり、

事実①:Twitterで話題になり始めるより遙か前から、ユニットSSRの展開は始まっていた

 という事実が見出せる。加えて、[P.C.S.]小日向美穂から[ポジティブパッション]日野茜まで7ヶ月、さらにそこから[P.C.S.]五十嵐響子まで15ヶ月も間隔が空いていることから、

事実②:ユニットSSRの展開は、一年以上間隔が開くことがある

 もまた導ける。
 本稿執筆時点で最後のユニットSSRである[トライアドプリムス]渋谷凛の実装から約8ヶ月が経過している。「あれ以来まったく出ていないが、ユニットSSRはもう実装されないのか」「中途半端なところで頓挫したのか」というような声が時たま見られるが、事実②を踏まえるとその判断はあまりにも性急だ。最低でも今からあと7ヶ月、つまり2020年6月までは判断を保留するべきだろう。


 ただ、何ヶ月も空くことがある一方で、続けざまにユニットSSRが実装されることがあったのも事実である。特に2018年11月は新規恒常SSRがすべてユニットSSRという偏りっぷりだ。

事実③:ユニットSSRの展開は、ごく短期間に集中することがある

 事実②と事実③がどちらも成り立つというところに、ユニットSSRの展開の不可解さが如実に表れている。しばらく音沙汰がなかったかと思えば急に連発し、しかしまたすぐに沈黙……。そこにどういう意図があるのか、実のところ私も不思議でならない。ただ、不可解であっても、いや不可解だからこそ立てられる仮説もある。例えば、

仮説:ユニットSSRはそれぞれ異なる意図で実装されている

 と、いった風にだ。以下、この仮説に沿っていくつかの推測を書き記す。



○推測

推測①:ゲーム内楽曲イベントと連動したユニットSSRがある

 一番最初のユニットSSRである[P.C.S.]小日向美穂の実装日でティンときた方、あなたはとても勘が鋭い。2016年9月17日、これはピンクチェックスクールのユニット曲『ラブレター』のイベント予告が発表された日でもある。


 しかも、このイベントにおける報酬カードは島村卯月と五十嵐響子だった。単なる偶然で片付けるにはあまりにもあからさまに過ぎる。少なくとも[P.C.S.]小日向美穂は、ゲーム内イベントと連動していると考えるべきだ。

 ただ、他のユニットSSRを眺めていると、[P.C.S.]小日向美穂が例外だと考えるのが自然だろう。2枚目である[ポジティブパッション]日野茜の実装は『情熱ファンファンファーレ』イベントからおおよそ2ヶ月後、いささか時期外れである。同イベントでの報酬は本田未央と高森藍子だったので、人選の面からはいくらかの配慮が見られる。判断の分かれるところだが、いくらかの贔屓目で見れば連動していると言えなくもないか。あるいは、当初は[P.C.S.]小日向美穂と同様に完全な連動を考えていたが、諸般の事情によりそれが叶わなくなったという可能性もある。




 イベント連動といえば、少し視点を変えてみよう。連動しているのは、もしかしたらゲーム内イベントだけではないかもしれない。

推測②:リアルイベントと連動したユニットSSRがある

 ここで言うリアルイベントとは、アイマス恒例のライブのことではない。2019年秋に開催されたバンダイナムコエンターテインメントフェスティバル、通称バンナムフェスのことだ。


 バンナムフェスに参加したシンデレラガールズのユニットは「ニュージェネレーションズ」「レイジー・レイジー」「羽衣小町」「LiPPS」「individuals」「HappyHappyTwin」「*(Asterisk)」の7つ(U149からの4人は、公式サイトの表記から、ユニットとしては数えないものとする)。注目するべきは羽衣小町individualsの2ユニットだ、これらはいずれもバンナムフェスの開催が発表された時点でユニットSSRが出揃っていたからである。これらはバンナムフェス参加ユニットに選ばれたからユニットSSRが実装されたのではないか、という推測だ。バンナムフェス当日に会場周辺を彩った幟に羽衣小町の、終演後にデレステで開催された打ち上げガシャの告知画像にindividualsの、それぞれのユニットSSRの絵柄もしくは3Dモデルが採用されている。連動しているという可能性も、あながちこじつけだとは言い切れまい。


 とはいえ、この推測にもいくらか穴がある。ドレスショップで衣装が販売されているLiPPSと、アニメ最終話でも用いられた[ステージオブマジック]シリーズを実質的なユニット衣装として見做すこともできるニュージェネレーションズを除いたとしても、レイジー・レイジー、HappyHappyTwin、*(Asterisk)の3ユニットにはユニットSSRがひとつも実装されていないし、実装時期もバンナムフェス開催日から半年以上離れている。綿密な計画を立てて連動している、と考えるにはちょっと根拠が弱い。

 一応、これらの穴への解答もいくつか考え出すことはできる。デレステのSSR実装スケジュール的に2018年末から2019年初頭の時節に5つ程度しかユニットSSR用の枠を確保できなかった、ユニットSSRの実装で羽衣小町およびindividualsの存在を今一度話題に上げておくだけでも儲けものだった、などなど。
 総じて、バンナムフェスとユニットSSRの連動は、あるともないとも言い切れない曖昧な推測と言える。ない、の方がやや優勢か。ただ、次項で詳しく論考する「橋頭堡ユニット説」を踏まえると、ピンクチェックスクールでもトライアドプリムスでもポジティブパッションでもない2ユニット(羽衣小町とindividuals)にユニットSSRが与えられるに足る特別な理由がどこかにあるはずだ。そういう観点から、私はバンナムフェスとの連動を推測した次第である。


推測③:橋頭堡ユニットの役割として実装されたユニットSSRがある

 ここで言う橋頭堡ユニットとは、ピンクチェックスクール・トライアドプリムス・ポジティブパッションの3ユニットを指す。本稿独自に決めた呼び方なので注意されたし。
 これらは他のユニットと比べ、少しばかり特別な共通点を持っている。

(A)各ユニットのメンバーの1人がニュージェネレーションズの一員でもある
(B)タイプが統一された3人ユニットである
(C)アニメ版シンデレラガールズで各々が何かしら関わりを持っている
(D)ユニット曲それぞれ2曲ずつ持っている
(E)東京ミステリーサーカスとのコラボイベント第1弾揃って抜擢されている
(F)デレステの『Stage Bye Stage』イベントで共演している

 (C)はやや解説を要するが、詳しくは後述するので今は保留としておいてほしい。
 列挙してみると共通点は存外に多く、しかも結果として3ユニットはいずれもかなり目立つ立ち位置にいることが分かるだろう。(D)の複数の持ち歌を持っていたり、(E)のコラボ案件の先鋒を務めていたりと、これら3ユニットが内外ともに大きく推していく意図があるのは明らかだ。優遇、不遇という語はなるべく使いたくないのだが、現況を見るに、優遇されていると評するのはまったく妥当である



 さて、では何故そのような処遇になっているのか? 私が思うに、この3ユニットにはシンデレラガールズをより深く知ろうとした初心者向けの、第二の足掛かりとしての役割が課せられているのではなかろうか。

 シンデレラガールズに長く触れているヘビーユーザーはもう感覚が麻痺しているかもしれないが、キャラクターが190人もいるというのはまったく尋常なことではない。しかも、一部がメインキャラで残りは脇役やモブという風に扱われ方が根本的に異なるのならまだしも、少なくとも建前の上ではこの190人全員が主役になりうるだけのポテンシャルがある。そんな環境下で道しるべの類いが何もなかったなら、シンデレラガールズに触れ始めたばかりの初心者は、どこから手を着けたらいいのか分からなくなることも多かろう。


 島村卯月・渋谷凛・本田未央のニュージェネレーションズが、シンデレラガールズ全体の代表格・広告塔としてあらゆる場面で表に立ってはいる。アイマスもシンデレラガールズもろくに知らないけどこの3人の顔や名前はなんかどっかで見たことあるかも、という人も少なくはあるまい。
 しかし、この3人だけでは手の回らない部分も多々ある。キュート・クール・パッションの3タイプがあるのはニュージェネレーションズで分かるかもしれないが、各タイプには他にどんなアイドルがいるのだろう? ニュージェネレーションズ以外の交友関係は?
 そういった状況に対応するために、ピンクチェックスクール・トライアドプリムス・ポジティブパッションという3ユニットがプッシュされているのではあるまいか。初心者が、最初に触れる第一歩としてのニュージェネレーションズから、もう一歩だけシンデレラガールズに踏み込もうと思った。そんな時のために、顔なじみがいてタイプも統一されているなど比較的踏み出しやすい第二歩の足場進軍するにあたっての拠点つまりは橋頭堡としての役割が、件の3ユニットは与えられている、と。

 だからこそ、曲数やゲーム内イベント、コラボ案件、各種グッズなどで目立たせる必要があった。ピンクチェックスクール・トライアドプリムス・ポジティブパッションは、広く人気があるから多くの仕事が与えられた、のではない。因果がまったくの逆で、これら3ユニットを、ニュージェネレーションズに次ぐくらい広く世間に知らしめる意図があったがために、いくつもの案件がこれらのユニットに回されたのだ。
 そんな案件のひとつに、ユニットSSRも入っていた。単なる依怙贔屓と考えるよりも、いくらか妥当性のある推測ではないだろうか?

 本稿執筆中、モバマスにデレステユニットSSRの内のひとつ、それも一番最初に実装された[P.C.S.]小日向美穂が逆輸入されたのも、同様の理由によるのかもしれない。
 モバマスにデレステのSSRが逆輸入されること自体は以前から行われていた。少なくとも筆者の把握している範囲では、いずれも一枚目のSSRが選ばれていたはずだ。そんな中、小日向美穂だけが二枚目のSSRである[P.C.S.]版だったことには、何かしら意図があるのではあるまいか?
 まぁ、蓋を開けてみれば、一枚目である[ユースフルロマンス]版は限定SSRだったから避けたというオチなのかもしれない。だが少なくとも現時点ではどっちとも断言しがたいところがある。この件についてはもうしばらく経過観察が必要だろう。


【2019/11/24深夜 追記】
 モバマスへの逆輸入SSR対象について検証不足でした。実際は十時愛梨や三村かな子など、デレステSSRの1枚目が限定SSRだった場合は恒常SSRの方が逆輸入されている前例がありました。
 この件が検証不足になった理由はいくつか思い当たります。第一に、本稿の発表をいくらか急いでいたこと。2019年12月以降の恒常SSRにユニットSSRの続きが実装されるかもしれないという予想を立てていた以上、なるべく今月中に発表しておきたかったのです。そして来週以降は私的な時間がとりにくくなる可能性があったので、完成させる日は今日を置いて他にはありませんでした。そして第二に、モバマスへの逆輸入SSRに関する話題を入れたのが脱稿間際だったこと。[P.C.S.]五十嵐響子のモバマスへの逆輸入から間がほぼなく、逆輸入SSRに関する正確な情報や検証がほぼゼロだったこともあり、本稿に盛り込むかどうかを完成直前まで迷っていました。最終的に「タイムリーな話題にも一応触れておくべきか、しかし検証が足りていないから『自分が知る範囲では』と予防線を張っておこう」と決めたのですが、今にして思えば不誠実、もっと言うと雑な判断でしかありませんでした。話題に触れるにしても「最近モバマスにユニットSSRが逆輸入されたが、モバマスのガシャはノーマークだった上に詳しく論考できていないので一時保留とする」と正直に述べるのが最善だったと、今は猛省しているところです。



 広告塔や橋頭堡といった仕組みがなくても、自分のイチオシアイドルを見つけることができる人もそれなりにいるだろう。身近な人の推薦だったり、ガチャでたまたま引いたとかだったり。だが、そんな幸運な人間ばかりでもあるまい。広告塔や橋頭堡は、そういう人でもシンデレラガールズに入門しやすくするための、言わばセーフティネットなのだ


 やや余談だが、この広告塔の役割が始まった時期について、少しだけ追加で論考してみたい。
 筆者自身、シンデレラガールズと本格的に関わり始めたのがアニメ以降なのでそれ以前(2015年より前)は詳しくは知らない。ただ、広告塔3ユニット9人全員のCVが出揃ったのが2016年初頭なので、本格的に始まったのはこれ以降と考えるのが順当だろう。『ラブレター』イベントが同年9月に開催されたのもこの説を補強している。が、その仕込みはもしかしたらデレマスアニメの時点で始まっていたのかもしれない。

 橋頭堡ユニットの共通点で保留していたもの、すなわち(C)の「アニメ版シンデレラガールズで各々が何かしら関わりを持っている」について詳述しよう。アニメ本編、Season2ではトライアドプリムスが大々的に取り上げられた。最初のユニット曲『Trinity Field』が披露されたのもこのタイミングである。一方でピンクチェックスクールは最終話にユニット結成が発表された。最終回の後にも物語は続いていく、という予感を直接的に描いていた。さて、ではポジティブパッションは?


【2019/11/24深夜 訂正】
 曲名を間違えていました。『Trinity Field』は2つ目のユニット曲なので、ここは『Trancing Pulse』が正解です。
 致命的な誤りとしか言いようがなく、自分でもどうしてこんなあからさまな間違いをしてしまったのか、不可思議でなりません。頭の中では間違いなく『Trancing Pulse』のことを思い浮かべて書いていたつもりでいて、しかし実際に書いた文字列は『Trinity Field』で、だというのに見直しの時は「これでよし」と判断してしまいました。いわゆる心理的盲点というものでしょうか。第三者による校正か、あるいはせめて日を改めて読み直すくらいのことは必要だったと反省している次第です。






 ユニット名こそついぞ出なかったが、本田未央・日野茜・高森藍子の3人は演劇の仕事で共演していて、最終的にもしかしたら彼女らもユニットを組むかもしれないと予感させる描写がなされた。状況的に、ここで共演するのは他のアイドルでも良かったはずだ。Season1時点ではアイドルの先輩・後輩という関係だった相手と、今度は対等な仲間として並び立つ……という構図だけでいいなら、佐久間まゆや川島瑞樹などでも問題はなかったろう。にも拘わらず、ポジティブパッションの面子を揃えた。後に殊更に目立つ役割が与えられたことを思うと、特別な意図があったと考えるのはそう突飛な発想ではないだろう。



 つまり、行く行くは橋頭堡となる3ユニットのプロローグが、デレマスアニメの後半からエピローグにかけて密かに始まっていたのだ。以前筆者が書いた、総選挙実績とCV実装の因果関係に関する記事でも、デレマスアニメにおけるサプライズCV実装の一部は後のデレステ展開を前提としていたとする考察を述べた。それと同様の仕込みが、ピンクチェックスクール・トライアドプリムス・ポジティブパッションの3ユニットについても行われていたのではあるまいか。作話上の都合からか、スポットライトを当てられたのは専らトライアドプリムスだったが、他の2ユニットの基礎も築かれ始めていたのだ、後に立てる橋頭堡のために。



推測④:初級者向け、もしくは特定層向けの施策として実装されたユニットSSRがある

 これは推測③の補足あるいは発展でもある。ユニットSSRは、ヘビーユーザーにとって退屈なものだと分かっていて、それでもなおライトユーザーを含む特定の客層のために実装された可能性を考えてみる。

 いきなり話が変わって恐縮だが、トレーディングカードゲーム(TCG)を思い浮かべてほしい。遊戯王でもデュエルマスターズでもポケモンカードゲームでも何でもいいが、ここは筆者にとって馴染みあるマジック:ザ・ギャザリング(以下、マジック)を下敷きにする。
 マジックだけでなく、ほとんどのカードゲームでは初心者向けのスターター商品が制作・販売されている。とりあえずゲームができる構築済みデッキと、ルールブック等がセットとなったものだ。カードの大半はあまり強くはなく、そのまま大会に持ち込んでも好成績はあまり期待できない。マジック経験者、特に世界大会で活躍するようなトッププレイヤーにとっては無用の長物に他ならない。



 さて、ここで「いやそれ初心者向けなんだから経験者にとって無価値なのは当然だろう」と思ったあなた、それはまったく当然の発想である。マジックプレイヤーには、それこそ世界大会の賞金で生計を立てるようなプロフェッショナルもいれば、昨日今日マジックを触り始めたばっかりのニュービーもいる。数で言えばむしろ後者の方が圧倒的に多く、そしてスターター商品はまさにそんな人間のために用意されている、先述した広告塔と橋頭堡のように

 これは初心者と熟練者という対比での例だが、今度は熟練者同士でも成り立つ例を挙げよう。
 マジックのとあるカードセットに《霊気貯蔵器/Aetherflux Reservoir》というカードが収録されている。

 このカード最大の特徴は、一定の手順を踏むと50点のダメージを叩き出す能力にある。ちなみにマジックのゲームでは、一部の特殊ルールを除いてライフポイントは20点で始める。繰り返すが、そんな環境下で《霊気貯蔵器》は50点ダメージを与えるのだ。控えめに言ってオーバーキルに過ぎる。その手順を踏むのに必要な手間を考えると、専用のデッキでも組まない限りなかなか割に合わない。より堅実で戦いやすいカードを求めるプレイヤーは見向きもしない一枚だ。
 だが一方で、50点ダメージというド派手さにロマンを感じたり目を輝かせたりするプレイヤーがいるのも事実である。こんな極大ダメージを一発で与えるカードは、25年を越えるマジックの歴史全体を見渡してもそう多くはない。そういったプレイヤー達の工夫や奮闘もあってか、《霊気貯蔵器》はその大雑把さとは裏腹に、大会等でも一定の成果を挙げるに至っている。
 ある一部のプレイヤー層からは猛烈に好かれるカードが、しかし別のプレイヤー層には激しく嫌われるか、そもそも一顧だにされない。そういった事例はマジックでは珍しくもなく、しかも製作側もそのことを正確に把握してすらいる。マジックの開発部では、プレイヤー達を

・派手でパワフルなゲームプレイを好む者、ティミー
・独創的なコンボや奇抜なデッキを扱う者、ジョニー
・記録達成や何かしらの挑戦に力を注ぐ者、スパイク

 などのように一定の基準で分類した上で、それら各分類のプレイヤーがそれぞれ満足できるようなカードを一通り制作・収録している。先に挙げた《霊気貯蔵器》は典型的なティミー向けカードだが、他にもジョニー向けカード、スパイク向けカードが各カードセットに存在している。そうやって、多種多様なプレイヤーの需要・要望を満たしているのだ。

 要するに、ある層のユーザーにとっては不要だったり不満だったりするカードや商品であっても、別の層のユーザーには確かな需要があるのかもしれない。いや、需要があるからこそ制作されていると考えるのが順当だろう。「このカード、自分のデッキとはまるで噛み合わないけど、友人のにはバッチリ合うかも」という風に。
 デレステのユニットSSRは、より多くのアイドルにSSRが行き渡って欲しいユーザー達にはいい顔をされない傾向がある。その一方で、そのユニットを特別に推しているユーザー、多少なりとも馴染みあるアイドルやユニットから少しずつ触れていきたいマイペースな初心者ユーザーなどにとってはとてもありがたい代物だ。そしてそのどちらも、デレステの商売相手であることに変わりはないのである。
 あなたが寵愛するものに、まったく興味関心を示さない人もいる。あなたが蛇蝎のごとくに嫌うものを、目に入れても痛くないほど可愛がる人もいる。デレステは、そういった多種多様な客層すべてを相手に商売しているのだ。だから自分の琴線に触れないようなものが出てきた時も「このゲームは自分を客だと見做さないようになった」と徒に反発するより、「今は自分以外の客に応対しているのだな」と鷹揚に構えるのが、順当な反応というものだ。このゲームのユーザーは、あなたやあなたと同じ意見を持つ人たちばかりではないのだから



推測⑤:SSR実装スケジュール調整のために実装されたユニットSSRがある

 2018年の第7回シンデレラガール総選挙で、南条光はCV獲得が決まった。そして同年の8月、彼女のSSRがデレステで実装され、CVもそこで初披露となった。デレステのSSRでCVが発表されたのはこれが初だった。翌年の第8回総選挙でCV獲得が決まった夢見りあむと佐城雪美も同様に、デレステSSRの実装に合わせてCVが実装・告知された。


 つまり、2018年以降、総選挙の結果がデレステのSSR実装スケジュールに直接的な影響を与えるようになったと推察できる。第6回総選挙まではCV発表はすべてモバマス側で行われていたので、デレステは総選挙結果に関係なくSSRを実装していくことができた。だが2018年以降、モバマス側とも連携をとる必要が出てきた。誰のCVを、モバマスとデレステのどちらで、どのタイミングで発表するのか。お互いのイベントやカード実装スケジュールを擦り合わせていかなければならなくなったのだ。

 たとえば、総選挙直前にあるCV未実装アイドルのSSRが実装されたとしよう。その後、総選挙でそのアイドルのCV獲得が決まったなら、CV発表の場はモバマスに回さざるを得なくなる。もし、モバマスでもそのアイドルを特定の時期に大々的に取り上げる予定を組んでいたとしたら、それなりに大きな軌道修正が求められるだろう。
 かといって、デレステのSSR実装ペースを落とすことはできない。このような状況下で、ある程度は時期を問わずに実装できるSSRがあったなら、スケジュール調整が多少なりともやりやすくなるはずだ。そしてそんな便利な存在がユニットSSR、というのがこの推測の肝である。
 この説なら、ユニットSSRの実装頻度にムラがあるのにも少しは説明がつく。最初期はともかくとして、ユニットSSRの集中実装が目立つようになったのは2018年の夏から2019年の初頭、それも第8回総選挙の約一ヶ月前あたりの時節だ。そうやってSSR実装枠をいくらか稼いだことで、総選挙後のスケジュールを組みやすくした。少し悪い言い方をすれば場の繋ぎのような存在、だがそのおかげで総選挙CV実装にまつわるモバマスとデレステの連携が取りやすくなった、という可能性は考えられないだろうか。

 もしこの推察が正しいなら、2019年12月から翌2020年3月の4ヶ月間で、まだ揃っていないユニットのSSRが実装されるだろう。今のところ残り枚数は3枚([ポジティブパッション]高森藍子と、[トライアドプリムス]北条加蓮と神谷奈緒)、だが再来年以降も同様の施策を取るとしたら、まったく別のユニットSSRの実装が始まる……かもしれない。



推測⑥:一定以上の情報量のために実装されたユニットSSRがある

 最後に、ユニットSSRがドレスショップでの実装ではなかった理由について少し考えてみる。
 定義の通り、ユニットSSRの衣装は共通性が高い。そのために「なぜドレスショップで実装しなかったのか」という声も根強い。筆者個人としてもデレステのドレスショップの使い方にはどうにも首を傾げることが少なくないのだが、その疑問はいったん脇に置いて、衣装実装がドレスショップだった場合とSSRだった場合の違いを比較していきたい。

ユニットSSR比較項目ドレスショップ
しんげきWIDE
ホーム画面台詞×
ルーム台詞×
親愛度達成台詞×
特訓台詞&特訓コミュ×
ポスターテキスト×


 見ての通り、開示できる情報量はSSRの方が圧倒的に多い。従って、ドレスショップでは構造上盛り込めない情報のために、一部のユニット衣装はSSRという形で実装されたのかもしれない。
 ……書いておいてなんだが、実のところ、この推測は筆者自身もあまり信じていない。特訓コミュやルーム等での台詞があるとはいえ、それら断片的な情報のために限られたSSR実装枠を使うのは割に合っているだろうか。ただ、もしかしたら上記の表が何らかの論考に役立つ日が来るかもしれないので、情報整理の一環として書き加えておくものとする。



○総括
 まとめとして、本稿で記した事実、仮説、推測を改めて列挙する。

事実①:Twitterで話題になり始めるより遙か前から、ユニットSSRの展開は始まっていた
事実②:ユニットSSRの展開は、一年以上間隔が開くことがある
事実③:ユニットSSRの展開は、ごく短期間に集中することがある

仮説:ユニットSSRはそれぞれ異なる意図で実装されている

推測①:ゲーム内楽曲イベントと連動したユニットSSRがある
推測②:リアルイベントと連動したユニットSSRがある
推測③:橋頭堡ユニットの役割として実装されたユニットSSRがある
推測④:初級者向け、もしくは特定層向けの施策として実装されたユニットSSRがある
推測⑤:SSR実装スケジュール調整のために実装されたユニットSSRがある
推測⑥:一定以上の情報量のために実装されたユニットSSRがある

 筆者が現時点で出せる推測は以上となる。素人の調査と論考ではこれぐらいが精一杯、だが逆に言えば専門家でなくてもとりあえずこれくらいは調べられたり考察したりできる。いくつかは当たっているかもしれないし、すべてまったくの的外れかもしれない。いずれにせよ、消費者側が得られる情報は、運営側・制作側は比べようもないほど少ない。
 今回はユニットSSRに焦点を当てたが、実際にデレステを運営するにあたっては他の恒常SSRや月末限定、フェス限定、ゲーム内外のイベントなどあらゆる要素を勘案しなければならない。しかも予定を組んだとしても、総選挙結果や来期以降のリアルイベント、CV実装済みアイドルなら担当声優の都合など様々な要因で修正が迫られることもあるだろう。190人ものキャラクターを平行運用するのは、市井のユーザーが想像できるよりも遙かに難しいに違いない

 その難しさの一端に、ユーザー層の幅広さがある。ヘビーユーザーがいればライトユーザーもいる。ただひとりのアイドルに拘る人もいれば様々なアイドルを愛でる人もいる。その全員を等しく満足させることは現実的にできないとしても、それでも可能な限り多くのユーザーが満足できるよう手を尽くしているものだと、少なくとも私は思いたい

 ユニットSSRは確かに、何かと揶揄されがちな代物である。だが、あなたが嫌っているものを、他の誰かは好いているかもしれない。同様に、あなたが好むものを、他の誰かは嫌っているかもしれない。多様性とはそういうものであり、そしてシンデレラガールズ最大の武器は190人のアイドルが織りなす色とりどりの多様性と、その中から自分好みの色を好きなだけ選び出せる自由さにこそある。
 この強みを徒に損なわないためにも、そして何より品性を失わないためにも、ユニットSSRに限らず自分が好まないものに反射的に唾を吐く前にちょっと思案を巡らせられるようになりたいものである。……と、なんだかまた説教臭くなってきたところでいったん筆を置くこととしよう。

考えなさい。
それは人間に与えられた最高の娯楽なんだよ。

鬼頭莫広『ぼくらの⑨』(小学館、2008)p.85

コメント

Taro-
No.1 (2020/01/25 09:06)
興味深く拝読いたしました。
短絡的に優遇だ不遇だと吠えず、一旦落ち着くように心がけたいものです。
ところで素人質問で恐縮なのですが、最近のイチオシのへそがございますればご教授賜りたく存じます。
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