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【東方SS】冬の忘れ物

2014/01/17 22:59 投稿

コメント:8

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 私は雪女。

 白の季節に目が覚めて、雪の中道を失った人間を誘う。

 その誘われた人間が翌朝目を覚ますことはなかった。

 私は雪女。

 人間と同じ時を過ごすことも、同じ土地で生きることも出来ない。

 それを望んだとき、どちらかが必ず命を落とす。

 それを理解していても、私は同じことを繰り返す。

 それは雪女の性(さが)か。

 それとも私の性か。

 その答えが見つかる前に、私は姿を消した。

 人々の記憶から消えた私は、存在を維持することができなくなった。

 薄れる意識の中で、それも良いかと思った。

 

 気付いたとき、そこは白の季節だった。

 似ているが、今までいた場所ではないとすぐに分かった。

 自分が何故こんな場所にいるのかはわからないが、足は自然と動いていた。

 何かを求めているのだろうか。

「あんただれ?」

 突然頭の上から声がした。

 少し驚きながらもそちらを見ると、小さな女の子が大きな瞳でこちらを見下ろしていた。

「あたいはチルノ」

 女の子は短い袖の服と長いスカートに裸足だった。

この白の季節には不釣り合いの格好をしているなとぼんやりと思った。

「ねえ、あんただれ?」

「私は……」

 そこまで言って初めて、女の子の背中に不思議なものが浮かんでいるのに気が付いた。

 氷の結晶のように透き通った綺麗な羽、太陽の光をきらきらと反射するそれをじっと眺めた。

「まぁいいや。ねぇ、あそぼうよ」

 女の子はそう言って私の前にふわりと降りると、小さな両手で私の手を握った。

『温かい……』

 見た目とその差にまず驚いて、自分の口元が自然と緩んでいることにまた驚いた。

 女の子、チルノは自分を妖精だと言った。

 それを驚いた私に気を良くしたのか、自分の身の回りのことを自慢げに、そして楽しそうに話してくれた。

 友達の妖精のこと。

 自分はこの世界で一番強い妖精だということ。

 そして、この世界のこと。

「ここは『げんそーきょー』だよ」

 チルノの話は要領を得ず、詳しいことはまるで分からなかったが、ここが今まで私がいたところとは別の世界だということは理解できた。

 そして、それ以上にその時間はとても楽しかった。

 それから毎日、チルノは私に会いに来てくれた。

 この世界の話をしたり、私が元板世界の話をしたり、何もしないでただぼうっと過ごした日もあった。

 それでも毎日が楽しかった。

 しかし楽しい日々が続けば続くほど、私の心は曇っていった。

 もうすぐ、白の季節が終わる。

 また私は消える。

 存在そのものは残るだろうけれど、また次の白の季節までは姿を現せない。

 私はそのことを、別れのその日までチルノに告げることはできなかった。

 その日も変わらず、チルノは私のもとへやって来た。

 チルノはいつものように元気で、太陽のような眩しい笑顔を見せてくれた。

「あははー、なんだそれー」

 それを本人に伝えると、チルノはまた笑い、つられて私も笑った。

 そこで気が付いた。

 私が人間を無意識のうちに誘ったのは、ただ寂しかったからなのだと。

「チルノ」

「なんだ?」

 私は雪女。

「私はレティ。レティ・ホワイトロック」

 太陽に憧れて、それを望むことを許されない存在。

「冬の……忘れ物」

 チルノはただこちらをじっと見つめていた。

「もし私が望むことを許されるなら……チルノ」

 突然風が舞い、白い雪がチルノの視界を奪う。

「また……会いましょう」

 視界が晴れるまで、チルノはじっと見つめていた。

 しばらくぼうっとその場に佇んだ後、チルノは両手を口元に当てた。

「またな! レティ‼」

 私は雪女。

 白の季節の忘れ物。



コメント

みのやん
No.7 (2014/01/18 13:37)
とてもいい話でした!今度はEx三人娘の真面目な話もよんでみたいです。星蓮船ハードも頑張ってください!
龍夜 蓮
No.8 (2014/01/18 16:15)
とてもいい話でした!!もしよければフランとぬえのssが読んでみたいです!!
葱侍 (著者)
No.9 (2014/01/18 20:19)
>>みのやんさん
ありがとうございます。三人娘の真面目な話ですか…茶番のイメージがかなり固まってしまってますから、なかなか難しいそうですね…
星蓮船も頑張りますよー!応援よろしくお願いします!

>>龍夜 蓮さん
ありがとうございます。うむむ…三人娘はやっぱり人気なんですね…
一人一人の真面目な話は書けると思うのですが、三人揃うともう茶番になりそうで……ちょっと考えてみます
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