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【#imas_この曲語らせて】トキメキの音符になって――巧妙に仕組まれた「隠れ転調」

2018/12/20 12:16 投稿

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  • アイドルマスター
  • トキメキの音符になって
  • 箱崎星梨花

 この記事は、稲本海による、ブログリレー企画「#imas_この曲語らせて Advent Calendar 2018」の20日目の記事です。

 前日の記事は、kureyaPさんによる、「Trust Me」の紹介でした。Trust Meは現地参戦したSS3Aの2日目で初めて聴いたわけですが、まず後ろの画面にタイトルが表示された瞬間の「新曲だ!!!」っていう高まり、そしてその後ぶっ放されたラップを含む激熱の曲調に高まり、さらに終わった後「これを茄子・日菜子・光が歌ったということは、これを安部菜々が歌うってことだよな!?やばくね!?」っていう高まり、と3段構えの高まりを得られた曲でした。

 さて、今回私が取り上げる曲は、アイドルマスターミリオンライブ!より、「トキメキの音符になって」です。

トキメキの音符になって
 歌:箱崎星梨花(CV:麻倉もも)
 作詞:rino
 作曲・編曲:岡本健介
 収録CD:THE IDOLM@STER LIVE THE@TER PERFORMANCE 02

 このブログリレー企画では、主に歌詞に注目して、歌っているアイドルのキャラクターとの関連性について語ったものが多いかと思いますが、私はあえて、この曲の音楽的な構造についてお話してみたいと思います。

 テーマは、「巧妙に仕組まれた『隠れ転調』」です。


1.1.そもそも「調」とは何なんですか?(Please Please help me)

 はじめにおことわりをしますと、ここからの説明はたぶん音楽的には正確ではないと思います。あくまで、この記事を読むために都合よく解釈した説明だということを念頭に置いてください。
 音楽の素養がすでにある方、もしくは、説明は読むのが面倒なので、結論見てなんかすげーこと言ってる!っていう雰囲気だけ感じたい方は本題に飛んでもらって結構ですw

 実は、ほとんどの音楽において、曲中で使う音は原則7種類しかありません。
 7種類とは何か?そう、ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シです。

(図1)

 ここで鍵盤を見てみましょう。黒い鍵盤を含めて、ドからシ(そして次のド)までを1鍵盤ずつたどってみると赤い矢印の通りになります。
 一方、音名の通り白い鍵盤だけをたどると、青い矢印の通り、2鍵盤ずつ進むことになりますが、ミとファの間、シとドの間には黒い鍵盤が無いので、1鍵盤だけ進むことになります。
 つまり、ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ(そして次のド)と奏でるとき、ドを基準位置として、そこから進む鍵盤の数が「2→2→1→2→2→2→1」の順で並んでいるのです。

 ここでようやく「調」の話をします。「調」というのは、「鍵盤上での基準位置を決めて、あとは2→2→1→2→2→2→1で鍵盤が進むように7つの音を選択したパッケージ」です。

 もう一度鍵盤を見てみます。ここから、ラをAとして、そこからアルファベット順に進む呼び方で説明します。

(図2)

 「ド=Cを基準位置として2→2→1→2→2→2→1で進むパッケージ」に該当するのは黄色で示した鍵盤です。この場合、基準位置になっている音をパッケージ名=調の名前として、「C」と呼びます。

 じゃあ、Dを基準位置とした調「D」はどうなるでしょう?

(図3)

 2→2→1→2→2→2→1と進む中で、黒い鍵盤を起用することになります。

 続いて、黒い鍵盤に基準位置を設定してみましょう。Bの半音下に当たる鍵盤、B♭を基準位置とした調「B♭」がこちらです。

(図4)

 このように、基準位置をCではないところに変えると、どこかで黒い鍵盤を使うことになりますね。

 ここまで鍵盤上での音の進み方を見て感じていただけたかと思いますが、ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シが持つ「2→2→1→2→2→2→1」の並びをそのままに、上や下に平行移動してるだけなんですよね。

 というわけで、簡単にしようと思ったけどやっぱり若干くどくなってしまった「調」の説明でした。

1.2.転調って何なんですか?(ry

 先ほど、「調」を「鍵盤上での基準位置を決めて、あとは2→2→1→2→2→2→1で鍵盤が進むように7つの音を選択したパッケージ」と定義しました。
 「転調」というのは、曲の中で調、つまり、それまで使っていた7つの音入りパッケージから、別のパッケージに変えることを言います。

 多くの方が「転調」でイメージするのは、「最後の大サビでメロディラインがそれまでよりちょっと高くなる」パターンだと思います。ミリオンライブ!の曲ですと、「虹色letters」が思い浮かびますね。

 この曲は、「E」の調で始まりますが、クライマックスの「君といた… 君といた」のところで、2回目の「君といた」から「F」の調に変わります。鍵盤1個分、半音だけ上に平行移動しています。

2.トキメキの音符になってに仕組まれた「隠れ転調」

 さて、ようやく本題の「トキメキの音符になって」の話に入ります。「虹色letters」のようなパターンを転調だと思っていた方にとっては、え?この曲転調してるの?と疑問に思うかもしれません。しかし、この曲にも転調が隠れています。しかも、何度も。

 始まりの調は「D♭」。結構黒い鍵盤を多く使う調です。

(図5)

 これが、サビから「E」に転調しています。鍵盤上では基準位置が3つ分も上がっているんです。

(図6)

 そして、1番サビの終盤、「運命だったらどうしよう」のところから、調が「D♭」に戻ります。
 次の転調は2番サビ。1番と同じくサビから「E」に転調します。
 サビが終わったあと間奏に入りますが、ここからしばらくは「E」のまま。間奏の途中でギターが入ってきますが、ここからまた「D♭」に戻ります。
 ラスサビは再び「E」、そして1番サビと同様「見つめ合えたら嬉しいの?」からは「D♭」となり、曲が終わります。
 ということで、この曲は「D♭」と「E」を何度も何度も行き来する構造になっているんです。

 でも、転調したことには気づきにくいですね。それはメロディラインの作り方がうまいからなんです。

 1番のBメロからサビにかけてのメロディラインです。

(図7)

 Bメロの最後の音「の」は、A♭。サビの最初の音「ぜん」は、G♯。お気づきでしょうか。書き方が違うんですが、これ一緒の音なんですよ。メロディラインは同じ音を2つ続けてるのに、裏でちゃっかり転調しているんです。

 1番のサビ終わりのメロディラインです。

(図8)

 ここは転調前後のメロディの音が異なりますが、転調後の最初の「うん」、A♭になっています。転調後の「D♭」のパッケージの中にはA♭が入っています。転調前のパッケージは「E」、この中にはG♯が含まれています。はい、これもさっきと同じ。一緒の音です。転調前のパッケージと転調後のパッケージ、両方に共通して含まれている音を持ってくることで、大きく調が変わった!という感じを出さずに、こっそりと転調しているんですね。

 というわけで、ごちゃごちゃと書き連ねてまいりましたが、「トキメキの音符になって」は、「巧妙に仕組まれた『隠れ転調』」が存在しているのでした。

3.転調が意味するもの

 最後に、なぜ隠れ転調を仕組んだのか?ということについて私なりの考えを述べて終わりたいと思います。

 全体を総括すると、この歌は、他のところは「D♭」でサビだけが「E」です。サビだけに違う調を使っているということは、歌詞にもきっとサビだけ何かが違うのかも、そう思って改めて歌詞を見てみました。サビの歌詞に含まれているフレーズをいくつか抜粋してみます。

「恋もする?」「笑っていたい」「どうしてなんでしょう?」
「言ってみたい」「特別(ふたり)とか?想像しちゃうよ」
「君のせいかな?」

 こう見ると、疑問形、ないしは願望の内容が多く、今においては不確定な要素について語られているような感じです。
 一方、AメロやBメロでは「ノートに書いておこう」「ルールは守ります」「頑張るって楽しい」など、明確に行動について表現しているフレーズが含まれているため、不確定要素が多いサビの歌詞とは趣が違いますね。
 この違いを、曲でも転調という形で表現したのではないかと考えています。D♭よりEの方が相対的に高い調になりますので、不確定要素だからこその浮遊感というものも表現されているのではないでしょうか。

4.おわりに

 ということで、合唱暦約10年、一端の音楽畑の人間として、詞だけでなく曲の観点からもアイマス楽曲を分析してみるということをやってみました。詞の一つ一つの言葉に意味があるように、曲も一つ一つの音符、それらが集まって出来上がるメロディ、使われている調、それぞれに意味があります。そういったことを感じ取りながら楽曲を聞くと、今までよりももっと楽しめるのではないでしょうか?

 明日は、伊藤伸恵さんの「羽ばたきのMy Soul / 秋月涼の歩んだ道について。」です!


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