ヘイヨーさんの人生

「怪人ユメゴン」(「夢見市物語」 ~第11話~)

2014/07/09 20:21 投稿

  • タグ:
  • ヘイヨーさん
  • 人生
  • 創作
  • 小説
  • 夢見市物語
  • ユメゴン
  • ブーム
  • UMA

 この頃、夢見市の北の果てでは、奇妙な怪人の出没情報が寄せられるようになっていた。
 それは、全身筋骨隆々でケムクジャラの生き物。人の形をしているのだが、人にあらず。ある者は、ギリシャ神話の彫刻のようであったといい、その膝蹴りは、近くを歩いていた酔っぱらいを数メートルも吹っ飛ばすほどだったという。



 怪人は“ユメゴン”と名づけられ、ユメゴン探索隊が結成されて、全国から観光客が殺到した。ユメゴンは、全身が毛で覆われた男性なのだが、意外と美形だという噂が立ち、それを目当てにした女性客も大勢訪れた。そんな女性客の中には「あわよくば、自分の結婚相手に」などと考えていた者もいたようだ。
 地元のみやげ物屋では、「ユメゴンの石像」「ユメゴンまんじゅう」「ユメゴンせんべい」などが販売され、結構な利益になったらしい。それ以外にも、手ぬぐいやらハンカチやら扇子やらポスターにポストカードセットと、この期に便乗して儲けようと様々な商品が開発され、発売された。

 さらには、「ユメゴンとプロレスラーを対決させよう!」といった企画をテレビ局が立ち上げ、大きなテレビカメラを背負ったスタッフの一団が訪れたり。自称UMA研究家がインターネットの生放送を使って、ユメゴンが潜んでいると噂される森へ入っていき中継したり。この頃の夢見市は、何かと盛り上がっていた。

 そんなブームも、やがて下火になっていき、日本中の人達はユメゴンなどという怪人が存在したコトすら忘れてしまう。流行などというものは、そんなものだ。たとえ、一時、どんなにもてはやされたとしても、それはその場限りのもの。長く語り継がれるなどというコトには、なかなかならない。
 せいぜい、「そういえば、子供の頃にそんな噂が流れたな。懐かしい」などと、大人になってから飲み屋で酒の肴となる程度のものだ。真に価値あるもの、歴史に名を残し語り継がれるような存在というのは、そうそうは誕生しない。

 ところが、夢見市においては、事情が少し違っていた。
 ブームが去ってしまった後でも、毎年、“ユメゴン祭り”などという催し物が行われ、“ユメゴン音頭”なるものまで作曲され、みんが曲に合わせて荒々しく野性的なダンスを踊るのだった。
 さらには、夢見市内の幼稚園・保育園児・小中学生から高校生に渡って、広くユメゴンイラストを募集し、優秀作に選ばれた作品には賞状と記念品まで贈呈される。

 絵のどこかにユメゴンさえ存在していれば、それがどのような姿であっても構わない。圧倒的なリアリティで描いてもいいし、ゆるキャラのようなものでも構わなかった。だが、何といっても人気だったのは「ユメゴンが酔っぱらいに膝蹴りを食らわせるシーン」であり、これは第1回のユメゴンイラストコンテストの募集時から変わらぬ人気っぷりであった。
 そうして、最初は全身ケムクジャラだったユメゴンは、年々体毛が薄くなっていき、筋肉モリモリの美形キャラとして描かれるコトが増えてきた。
 ちなみに、今年の最優秀賞受賞作は、この作品である。


 こんな風にして、夢見市は今年も平和である。


コメント

コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事